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作家の室井佑月が19日、東京・六本木のTSUTAYA TOKYO ROPPONGIで開催された映画『あの日の声を探して』(4月24日公開)のミシェル・アザナヴィシウス監督とのトークイベントに登場し、テレビのニュース番組について「戦争やさまざまな事件などがきちんと伝わっていない」とジレンマを語った。

1999年のチェチェン紛争下、両親を殺された失意で声を失った少年が再生していく姿を描く同作。イスラム国による日本人人質事件や、チュニジアで起こった襲撃事件など、テロとの戦いが報道で伝えられているものの、テレビ番組でコメンテーターを務める室井は「チュニジアのテロも30秒しか映像は流れない。テレビのニュースの中では、戦争やさまざまな事件などがきちんと伝わっていないと思うし、そういったことに対して、真に想像力を働かせるのは難しいと思う」と、ジレンマを抱えていることを明かした。

それだけに、惨状だけでなく、人間の強さも含めて戦争下をリアルに描いた作品である同作を、室井は「若い人は特に見ることが大事なのではないか」と絶賛。「うちの中2になる息子にもみせます!」と高らかに宣言した。

これを受けて、ミシェル監督も「ニュース番組で映る悲惨な状況に陥っている人たちの姿は虚像のようで無力さを感じる。だから映画でそれに実像を与えたかった」と作品の意図を説明。その上で「無関心でいることはいくらでもできる。しかし、戦争を引き起こす引き金は無関心でもあると思う。だからまずは関心をもつことが世の中と意識を変える第一歩なのではないか」と、呼びかけた。

主人公の9歳の少年・ハジを演じたのは、実際にチェチェンに暮らす素人の男の子。ミシェル監督は「彼自身も父親を亡くし、ハジと同じ悲しい経験し、同様に心に暗闇を抱えている。しかし一方で、ハジと同様に成長していっている」と、撮影の裏話を明かした。これに対して室井は、自身の息子に対して「きちんと想像力のある人間に育ってほしい」と思いを吐露し、「今は一人の世界を楽しむ人が増えてきていますが、みんなで意見を交換し、考えることが想像力を身につけられる方法なんだと思います」と、希望を語った。

同作は、2011年に現代の白黒無声映画『アーティスト』でアカデミー賞作品賞、監督賞など全5部門を受賞したミシェル監督が、ナチスによって母親と生き別れとなり、恐怖のあまり失語症になった少年を描いたフレッド・ジンネマン監督の『山河遥かなり』(1947年)から着想を得て製作。全編手持ちカメラで撮影し、徹底したリアリティを追求した映像が、戦争が遠い国だけで起こっている出来事とは思わせない緊迫感を与える。

(C) La Petite Reine / La Classe Americaine / Roger Arpajou