ミシェル・アザナビシウス監督と室井佑月

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映画「あの日の声を探して」のプロモーションで来日中のミシェル・アザナビシウス監督が3月19日、都内書店で作家の室井佑月とトークショーを行った。室井がアザナビシウス監督の印象を「すごく知的な感じがします。知的なオタク(笑)」というと、アザナビシウス監督が「知的なイメージを壊してしまうけど、明日中野ブロードウェイに行きます(笑)」と意外な返答で会場を笑わせていた。

映画は、1999年ロシアに侵攻されたチェチェンで両親を殺され、姉と生き別れ、失意で声を失った9歳の少年ハジが、難民キャンプで懸命に生きる姿を描く。「アーティスト」で第84回アカデミー賞作品賞ほか5部門を受賞したアザナビシウス監督が、グルジアで全編手持ちカメラで撮影を行うなど、徹底したリアリティ追求した。

今作をひと足先に鑑賞した室井は、「こういう映画を見たかった」といい、「戦争って最も嫌なこと。でも身近で起こっていることでないと、今日みたいにチュニジアでテロがあっても30秒しか日本のテレビ局で流れない。戦争ってどんなものかって想像するのは難しいんだと思う」と持論を述べる。「(今作は)ただ悲惨なだけじゃなく、人間の強さも描かれている。私は戦争映画で、戦争賛美とか、悲劇のヒーローやヒロインに『ん?』と首を傾げるところがあるので、(今作は)自分で考えさせる映画だと思いました」と絶賛した。

室井の発言にアザナビシウス監督も同意し、「そこが戦争を描くときの罠だと思います。戦争映画に現れるヒーローがあまりに格好いいので、観客がファシネイションを感じるリスクがある」と、映画が悪であるはずの戦争に魅力を与えてしまう可能性を指摘。「私が語りたかったのは戦争ではなく人間。戦時中に人間がどう生きていくか、彼らの苦しみを描きたかった」と、今作の意図を語った。

さらに、「我々は無力かもしれないが、無関心であることをやめることは自分の意思でできる。戦争の最も強大な共犯者は無関心であることじゃないかと思うんです」と今世界で実際に起こっている惨事に目を向けなければならないと語り、「平和がいかにはかないものか、自分たちの身に降りかからないと想像できない。それが戦争です」と訴えた。

主人公の少年ハジを演じるのは、オーディションで選ばれた演技未経験のアブドゥル・カリム・ママツイエフ。ベレニス・ベジョ、アネット・ベニングら実力派女優が共演する。

「あの日の声を探して」は、4月24日からTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。

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