「子供をダシにして……」とネット上で集中砲火(写真はイメージです)

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 近年、よく耳にするようになった「クラウドファンディング」。実現したいアイデアやプロジェクトを公表し、ネットを通じて不特定多数の支援者から資金を募る手法だ。数万〜数十万円が集まるケースは珍しくなく、大きなプロジェクトになると数千万円から億単位のお金が動くこともある。

 だが、ときには批判の的になることも。先日も女子大生が自分の夢のためにクラウドファンディングで資金を集めようとしたが、大炎上の末に失敗に終わってしまった。

他人のお金で世界一周したいだけ!?

 2月19日、京都府内の大学で児童教育を学んでいるという女子大生が、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」である企画を公開した。

 その内容は、3万円以上の支援をした人にスケッチブックを送って最初のページに自分の夢と途上国の子供たちへのメッセージを書いてもらい、それを女子大生が翻訳。そのスケッチブックを持って女子大生が世界一周しながら、続きのページに訪問先で出会った子供たちに自分の夢を描いてもらい「夢バトン」をつないでいくというもの。最終的にスケッチブックのコピーが支援者に渡され、さらに写真展を開くという予定だった。

 活動期間は10ヶ月で費用は160万円ほどかかるというが、女子大生は「バイトで稼げるお金は80万円くらい」とし、不足分を募ることにしたという。

 ところが、この企画に批判が集中。女子大生は予算の内訳書を公開していたが、その内容が「カメラ代:15万円」「生活費:93万円」「航空券:約18万円」など、大半が子供の夢と関係ない旅行費用。これに「途上国の子供をダシにして世界一周したいだけでは?」との疑問が噴出したのだ。

 プロジェクトのページはFacebookで寄せられたコメントが表示される仕様になっているが、そこには以下のような手厳しい意見ばかりが並んだ。

「自己満足の企画で全く支援になってない」
「他人のカネで旅行したいだけだろ」
「せめて生活費くらい自分で出さなきゃ」
「貧困国の子供に何も還元されてない」
「この女子大生にしかメリットがない企画」

「一生遊んで暮らしたい」書き込み発掘で大炎上

 この企画は本名で登録されていたため、疑問を抱いたネットユーザーたちが女子大生のFacebookを確認。すると「将来に悩んでいます。旅が楽しすぎて一生旅をしていたい」「一生遊んで暮らしたいと日々切実に願う」などといった文章が発掘され、疑問はさらに強まることに。また、過去に海外に行った際の写真もあったが「ただ遊んでいるだけ」と思われるようなものばかりだった。

 また、女子大生のTwitterアカウントにも批判コメントが殺到。これに彼女が「意識高い系女子です笑笑笑笑笑笑」などと挑発的なツイートをしたことで炎上はさらに加速した。

 あとは転げ落ちるようにして次から次に問題が発覚。

 企画募集ページには少女の写真が掲載されていたが、全く関係ない写真展に出品されていた他人の作品を転載したものだったことが判明。また、現在大学の3年生だという女子大生は募集ページに「卒業後は関西にて小学校教諭になります」と明言していたが、小学校教諭の内定がこの時期に決まっているとは考えにくく(教員採用試験は基本的に大学4年生の夏から)、これもウソではないかと疑われた。これらの要素から「悪質な詐欺」との見方まで湧き出し、もはや収拾不可能な騒動になってしまった。

 最終的に女子大生は「企画を続けることで皆様にご迷惑をおかけする可能性があると判断し、取り下げることにしました」とプロジェクトの中止を発表した。その後も炎上の余波は続いているらしく、大学側がこの騒動を認識して対処を進めているとの報道もあり、ただの“若気のいたり”では済まない状況に追い込まれている。

ネットユーザーに「偽善」を見透かされ…

 炎上した最も大きな理由は「資金の使い道」だったのは明白だろう。見ず知らずの人々の善意のお金を集めながら、その大半を自分の旅行費用に当てるという甘い考えが批判を招いた。もし途上国の子供たちに分かりやすい形で還元するアイデアがあれば、また違った反応になっていただろう。

 だが、クラウドファンディングの企画には「CDを出したい」「ライブをしたい」「写真集を出したい」などといったものが少なくない。そういった企画は特に問題視されることはないが、集めた資金を自分のために使うという意味では大きな差異はないように思える。

 では何が決定的な違いだったのかといえば、女子大生が「途上国の子供のため」というお題目を使ったことだろう。控えめに「世界の子供たちの現状を見て回るために旅行費用を集めたい」などといった言い回しにしておけば、多少の反発はあったかもしれないが今回ほど炎上することはなかったと思われる。まるで貧困国の子供にメリットがあるかのような書き方で資金を募りながら「スケッチブックでバトンを回す」という実益のないものだったため、子供をダシに支援者を騙しているかのようなイメージになってしまった。

 また、予算内訳に「カメラ代」と書くなど自分のエゴを隠しきれていなかったことも炎上の大きな理由といえるだろう。クラウドファンディングでは同じく「社会貢献」をうたった“意識高い系”の怪しげなプロジェクトが散見されるが、エゴを包み隠すことで上手に批判をかわしている。

 さらに、今回問題となった女子大生は、Twitterで批判的なユーザーを挑発するなど炎上後の対応も子供じみていた。いわば頭から尻尾まで「稚拙」の一言であらわせるような騒動だったといえる。

 ネット上では「偽善」に対するアレルギーが非常に強い。募金や難病支援などの慈善活動ですら疑われ、たびたび炎上しているほどだ。ましてや自己実現のために他人からお金を集めるという趣旨であれば、より厳しい目にさらされる。今回の女子大生のような稚拙な考えで甘い汁を吸おうとすれば、しっぺ返しを食らうのも仕方なかったといえるだろう。

(文/佐藤勇馬)