牛の管理ツール?育ちの「見える化」が牛肉の流通を変える
食べものがどこでどう作られているのか、気になる人もいるだろう。たとえばステーキ用の牛肉を買うとき、肉そのものだけ見て買う人もいれば、売り手に「この牛は何を食べて育ったの?」と聞く人も少なくないと思う。
こうした問いに答えるには、生産側も育て方を記録して示す必要がある。今回紹介するのは、作り手と買い手の間で牛の育ち方を共有できるようになる管理ツール『BovControl』だ。
世界最大の牛肉輸出国で生まれたサービス
『BovControl』が誕生したのは、世界最大の牛肉輸出国ブラジル。ブラジルでは2億頭の牛が生産され、人間より牛の方が多く、牛の生産による森林破壊も懸念されているという。
飲食店や小売店向けに準備している管理ツール『BovControl』に注目しているのは、たとえばマクドナルドやウォルマートだ。こうした企業は自社の顧客に対し、取扱商品がエコでエシカルだというようなことを宣言したいと考えているようだ。
森林破壊につながらない方法や、不当労働ではない職場で育てられた牛肉を取り扱っているのだと。また、オーガニック・ビーフであることや、グラスフェッド・ビーフ(牧草飼育の牛肉)であることも宣言できるのだ。
牛肉販売者向けのこのツールは、今年末頃にリリース予定。現在はまず生産者向けのツールを提供し、牛の生産記録を集めることにフォーカスしている。
世界中で3,000牧場が利用
生産者向けのツールはすでに世界中で3,000牧場が利用しているという。なかでもスマートフォンが普及している地域での利用が多く、たとえばアメリカではブラジルの10倍の牧場が利用している。
牧場経営者がわざわざデータ入力する動機は、買い手に育ちを証明できるからだけではない。経営上の意思決定に役立つ情報も得られるためだ。たとえばベストな出荷タイミングや、出産予測時期などを知ることができるという。
『BovControl』は現在創業3年目。Silicon Valley’s Redpoint e.Venturesから投資を受けて拡大中だ。世界最大の牛肉輸出国で生まれたこのツールが、これからの牛肉の買い方を変えていくかもしれない。
日本での動き
日本でもこんなツールがほしいという方もいるだろう。実は畜産業界向けのITベンチャーは日本にもある。創業2年目の株式会社ファームノートだ。
北海道帯広市に本社があるこの会社は、牧場に関わる全ての情報を“手書きのノートのように簡単に”扱えるようにするためのツール『Farmnote』を提供している。導入牧場数は350、管理する牛の数は40,000頭を超えたという。
3月4日に同社が開催する北海道最大級の農業ITカンファレンス『ファームノートサミット2015』では、新機能を発表するといわれている。ブラジル発のツールと合わせて、日本初のこのツールも今後の動向がますます注目されるだろう。
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【参考】
※ Cow farmers get high-tech tracking app - CNN Money
※ A Google Analytics For Livestock Helps Farmers Prove Their Meat Isn’t Destroying The Amazon -Fast Company
※ Farmnote