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NTTドコモグループのABCクッキングスタジオが、一風変わった研修を展開している。"チーム内で活躍する人材の育成"を目指した「クッキング de チームビルディング研修」である。この取り組みでは、料理教室を通じて企業人の成長を促すことができるという。静岡ガスのショールームで2月13日に開催された研修の模様を取材する機会を得たので、本稿で紹介していこう。

○クッキング de チームビルディング研修とは?

「クッキング de チームビルディング研修」は、企業の人材を育成するための法人向けの研修。NTTドコモが全体の企画・主導を担当し、ABCクッキングスタジオとキャプランが共同でプログラムを開発する。今回は、静岡ガスが会場の提供と運営のサポートを担当した。この4社が共同で研修を開催するのは初めてとのこと。当日は静岡県内の企業13社から選ばれた22名の一般社員が参加。キャプランから招かれた土屋圭子氏が講師を務めた。

チームビルディング研修は、自己紹介からスタートした。「人の第一印象は、どのくらいで決まると思いますか? 」と土屋氏。同氏によれば、若い人ほど早い段階で第一印象が決まるという。「高校生はパッと見た瞬間に決める。年齢が進むにつれ、経験を積むので決定までの時間が長くなる。全体の平均は3〜7秒くらい。したがって最初の挨拶が大事になる。目が合っていたか、望ましいものだったか、初対面時の印象を振り返ってみましょう」と参加者にうながした。

土屋氏は、チームとグループの違いに言及。「例えばグループ旅行、グループ交際など人の集まりはグループ。一方、サッカーなどの団体競技ではチームと言う。チームとは目標に向かって一致団結する集団。構成員それぞれが役割・責任を担っている」と説明した。その上で「良いチームの条件」について議論させた。参加者からは「全員が信頼関係で結ばれている」「役割の相互理解」「規律を守る」「長所・短所を補う」などの意見が出ていた。

土屋氏は「これを踏まえてピザを作ってもらいます。全員が帰属意識をもって、お互いの短所を補いながら作業してください」と話した。

○料理教室はABCクッキングスタジオが主導

料理の進め方はABCクッキングスタジオが主導。調理器具の使い方については、静岡ガスから事前説明があった。初めは緊張し、お互いに遠慮があった参加者たち。しかし親しくなり会話が活発になるにつれて、作業効率も向上したようだった。

生地をこねた後、オーブンに入れて発酵させる。ここで小休止。参加者は机に戻り、どのようなトッピングにするか議論した。与えられたテーマは「静岡県」。富士山、お茶、サッカーなど、静岡県にまつわるキーワードをいかにピザに落としこんでいくか、活発な意見が飛び交った。話がまとまる頃にはプレゼンを実施。自分のチームのピザがいかに優れているか、4チームの代表者が主張し合った。

ピザのテーマが決まると、再び作業台へ。この頃にはチーム内に連携する姿が見られるようになった。タイムマネージメントをする人、トッピングの具材を切り分ける人、ピザの生地を伸ばす人、使い終わった食器を洗う人。お互いが役割を分担しながら作業を進めていく。やがて教室のあちらこちらで、美味しそうな匂いとともにこんがりとしたピザが焼きあがった。

○目的を忘れてしまうくらい楽しい!

何人かの参加者に話を聞いた。ある参加者は「研修の本来の目的を、良い意味で忘れてしまうくらい楽しい」「初対面の方が多いはずなのに、打ち解けるのが早かった」と驚いていた。「話し合いをしながら、個人の意見を重ねて良いものが出来上がるのが嬉しい」といった意見もあった。運営のサポート体制の良さや、短時間でチームが形成されるプログラムを評価する声が多かった。

NTTドコモの担当者にも話を聞いた。料理教室の題材をピザにした理由については「工夫次第で様々なトッピングができるので、チームの特色を出しやすい」ためと回答。研修に料理教室を絡めると、どのような特長が出せるのだろうか。その意義については「一般的に、企業研修は額に皺を寄せて行うものというイメージがある。しかしクッキング de チームビルディング研修では、参加者の笑顔がとても多くなる」「女性が多いのも、この研修の特色」と回答した。

○良いチームの条件とは?

研修の最後に、講師の土屋氏から総評が行われた。同氏は「仲間の労をねぎらう言葉が、普段から職場に飛び交っているか。仲間を配慮する気持ちを言葉や行動にして、惜しむことなく表現しあう職場環境があるだろうか」と参加者に問いかける。そして「職場環境を作っていくのは新入社員ではない。リーダーになる立場の方たちが積極的に発信しなければ、職場は変わっていかない」と話した。

ワクワクしながら作業を進めれば、良い仕事が行える。では、そのためにはどうしたら良いのだろうか。土屋氏は「ストローク」という心理学の言葉を用いて説明する。ストロークとは、人が人に触れ合うための働きかけのこと。「目を見て、アイコンタクトをとる。挨拶をする。丁寧なお辞儀をする。相手の意見に頷く。笑って目を見る。褒めていく。良いチームをつくるために、これらのプラスのストロークを積極的に出していくことが大事になる」と説いた。そして「歳をとればとるほど、誰からも褒められなくなる。そんなときは自分で自分を褒める。寝る前に、今日はよくがんばった、と自分に対してストロークを出す。このように、プラスのストロークを出し続けていくことをオススメします」と結んだ。

ABCクッキングスタジオが提供する料理教室をベースに「協調性」「時間管理能力」「調整能力」といった能力を引き出すプログラムが組み込まれていた、今回の「クッキング de チームビルディング研修」。講師の話を聞き(学習)、デスクで議論し(相互理解)、キッチンで料理する(実践)という作業を繰り返しながら進められる、とても濃密な4時間だった。

(執筆:大石はるか)