今年は2月からクラシック戦線が熱い! 8日のGIIIきさらぎ賞(京都・芝1800m)、来週15日のGIII共同通信杯(東京・芝1800m)と、3歳クラシック戦線を占うにあたって重要なレースが続く。特に今年は例年以上に、実力馬・有力馬が揃い、見逃せないレースとなりそうだ。今回はこの2レースを、将来性も見据えながら、血統的視点から展望してみたい。

◆きさらぎ賞
 まずはきさらぎ賞。このレースは2011年トーセンラー、2012年ワールドエース、2014年トーセンスターダムと、過去4年で3頭のディープインパクト産駒が勝っているが、勝ち馬の春のクラシック成績はワールドエースの皐月賞2着が最高と、あまり本番にはつながっていない。今回はディープインパクト産駒を中心視するが、負けた馬の中から、GI皐月賞やGIダービー向きの馬を探す、という見方も大切だ。

 ポルトドートウィユ(牡3、栗東・高野友和厩舎)は父がディープインパクト、母がオープン特別・エルフィンSを勝ったポルトフィーノ、祖母がオークス馬エアグルーヴという血統。今回と同じ舞台のオープン特別・萩Sでは2着に入り、GIIIシンザン記念を勝ったグァンチャーレに先着。前走のシクラメン賞(阪神・芝1800m)を上がり3ハロン33秒5の末脚で差し切ったように、4戦すべてでメンバー中最速の上がり3ハロンタイムを計時しており、瞬発力が最大の武器だ。

 馬体重がデビュー戦から14kg増えているように、クラシックを見据えて早いうちから無理をさせず、成長を促しながら力をつけていることが見受けられる。4戦2勝2着2回と実に安定しており、中心視すべき存在だ。

 レガッタ(牡3、栗東・昆貢厩舎)は母が宝塚記念などGI3勝のスイープトウショウという良血馬。今回と同じ京都芝1800mで上がり3ハロン33秒2の瞬発力を見せて、新馬勝ちを収めている。父ディープインパクトと母の父エンドスウィープの配合は、昨年の勝ち馬トーセンスターダムと同じ。皐月賞やダービーではやや不安の配合でもあり、狙うならここだろう。

 ネオスターダム(牡3、栗東・石坂正厩舎)は前述のトーセンスターダムの半弟。父ネオユニヴァースは2003年の勝ち馬で、その産駒ネオヴァンドームも2010年の勝ち馬。この馬もこのレース向きの血統馬だ。未勝利を勝った直後だが軽視は禁物。

 アッシュゴールド(牡3、栗東・池江泰寿厩舎)は三冠馬オルフェーヴルの全弟。兄は2011年の3着馬で、シンザン記念2着を経ての出走だった。兄同様、京都芝1600mの重賞・デイリー杯2歳Sで2着しており、距離延長もプラスになるはず。

 そして、最大の注目株は牝馬ルージュバック(牝3、美浦・大竹正博厩舎)。百日草特別(東京・芝2000m)では、後にGIII京成杯を勝つベルーフに2馬身半差をつけるレコード勝ちで、強烈なインパクトを残した馬だ。父は菊花賞などを勝ったステイヤー、マンハッタンカフェで、母ジンジャーパンチはブリーダーズカップ・ディスタフ(3歳以上牝馬限定・ダート9ハロン)など、米GI6勝の名牝。ダート向きの血統構成ながら芝で非凡な瞬発力を見せており、血統の常識を覆(くつがえ)すとてつもない大物という雰囲気を醸し出している。きさらぎ賞が芝で行なわれるようになった1970年以降、牝馬の勝ち馬は出ていないが、ここを勝つようなら、昨年引退したジェンティルドンナに続く"女傑"に育つかもしれない。

 出走馬は8頭と少ないながら、好メンバーが揃ったきさらぎ賞。新たなスターホースの誕生が見られるか注目したい。

◆共同通信杯
 好相性のきさらぎ賞に対し、共同通信杯は未勝利と、ディープインパクト産駒にとってこのレースは得意な条件ではない。産駒がデビューしてからの4年間で14頭が出走して、2着2回、3着4回と毎年のように上位争いしてくるが、2011年ダノンバラード(9着)、2012年ディープブリランテ(2着)、2013年ラウンドワールド(4着)と、3頭の1番人気馬が期待を裏切っているのだ。

 ならば、どの産駒が強いかというと、2011、2012年はステイゴールド産駒が、ここ2年はフジキセキ産駒が2連覇中。その他ではミスタープロスペクター系が3頭と、全体的にスピードタイプの馬の台頭が目立っている。

 その意味でおもしろそうなのが、ダノンメジャー(牡3、栗東・橋口弘次郎厩舎)。父ダイワメジャーはGI高松宮記念(中京・芝1200m)を勝ったコパノリチャードなどを出しているリーディング上位種牡馬だ。1800mは2戦2勝だし、GIII京都2歳S2着と重賞実績も残している。前走のGIIホープフルSは1番人気で9着と敗れたが、今回のほうが条件は向くだろう。

 ドゥラメンテ(牡3、美浦・堀宣行厩舎)は父キングカメハメハ、母がGIエリザベス女王杯2連覇のアドマイヤグルーヴという良血で、きさらぎ賞に出走するポルトドートウィユとはいとこ関係になる。中1週の出走となるが、今回と同条件だった前走セントポーリア賞は、5馬身差をつける圧勝劇。すでに"世代最強か"という声も聞かれており、ここでも圧巻の走りを見せる可能性は十分だ。

 このレース不振のディープインパクト産駒も軽視は禁物だろう。アヴニールマルシェ(牡3、美浦・藤沢和雄厩舎)はGIII新潟2歳S(新潟・芝1600m)、GIII東京スポーツ杯2歳S(東京・芝1800m)と重賞で連続2着の実力馬。祖母キョウエイマーチは桜花賞馬と、血統背景も優秀だ。

 1戦1勝のリアルスティール(牡3、栗東・矢作芳人厩舎)も注目の存在。ダービー馬キズナやGIエリザベス女王杯のラキシスと同じく父ディープインパクト、母の父ストームキャットという配合だ。いとこに昨年の英GIヨークシャーオークスの勝ち馬タペストリーがいて、3代母が米GIブリーダーズカップ・マイル連覇のミエスクという世界的良血馬。現役で4勝を挙げている全兄ラングレーを超える逸材と見られている。

 デビュー2連勝後のGIII京成杯では9着に敗れたタケルラムセス(牡3、美浦・田村康仁厩舎)。キングカメハメハ産駒はこのレースに良績がないが、母がGIIローズS勝ち馬のヒシピナクルで、GI2勝のヒシアマゾンや、GI3勝で9年前の勝ち馬でもあるアドマイヤムーンなどと同じ名牝系出身という魅力の血統である。

 ミュゼエイリアン(牡3、美浦・黒岩陽一厩舎)は父スクリーンヒーローも母の父エルコンドルパサーもGIジャパンCの勝ち馬で、叔母エリンコートはオークス馬。遡(さかのぼ)るとダービー馬フサイチコンコルドとも同牝系で、ダービーの舞台である東京芝2400mを思い起こさずにはいられない血統馬である。勝ち負けだけではなく、"距離が延びたらどのように走りが変わるか"というテーマでもその走りを注目したい。

 その他にも、ディープインパクト産駒ティルナノーグ(牡3、栗東・松永幹夫厩舎)、アンビシャス(牡3、栗東・音無秀孝厩舎)、ハービンジャー産駒ショウボート(牡3、栗東・石坂正厩舎)、スワーヴジョージ(牡3、栗東・庄野靖志厩舎)など注目馬が目白押し。きさらぎ賞とこの共同通信杯で、今年のクラシック戦線の"推し馬"を見つけ出して欲しい。

平出貴昭(サラブレッド血統センター)●文 text by Hiraide Takaaki