この時期はGIレースこそないものの、春のクラシック戦線を占う上で見逃せない注目の3歳戦が目白押し。そういったレースをより楽しむべく、今回は"血統"をキーに、注目の3歳馬を挙げてみたい。

 "血統"と聞くと、まず父馬が注目されがちだが、サラブレッドの世界では同じ父でも「兄弟・姉妹」とされず、そう定義されるのは同じ母の仔だけであるということからも、母、祖母など母系の血はとても重要だ。

  近年は特に"名牝の仔・孫"が走る傾向が目立つ。昨年のGI戦線でも、オークス馬シーザリオの仔エピファネイアがジャパンCを、2冠牝馬ベガの孫ハープスターが桜花賞を勝利した。好きだった牝馬の仔や孫を応援するのは、競馬の大きな楽しみの一つである。

 今年の3歳馬で既に勝ち上がった馬の中にも、現役時代にGIを勝った牝馬の仔を多く見つけることができる。既に重賞で実績を残している馬には、札幌2歳S(GIII・札幌芝1800m)を勝ったブライトエンブレム(牡/父ネオユニヴァース、母ブラックエンブレム=秋華賞)、いちょうS(重賞・東京芝1600m)2着のネオルミエール(牡/父ネオユニヴァース、母シルクプリマドンナ=オークス)、京都2歳S(GIII・京都芝2000m)4着のフローレスダンサー(牝、父ハービンジャー、母ダンスインザムード=桜花賞)などがおり、その他にも今後に期待を抱かせる勝ちっぷりを見せている馬が多い。

 母馬だけでなく、祖母まで注目するとさらに対象馬が増え、シクラメン賞(500万下・阪神芝1800m)を勝ったポルトドートウィユ(牡/父ディープインパクト、祖母エアグルーヴ=オークスなどGI2勝)、新潟2歳S(GIII・新潟芝1600m)2着のアヴニールマルシェ(牡/父ディープインパクト、祖母キョウエイマーチ=桜花賞)、2歳王者決定戦・朝日杯フューチュリティS(GI・阪神芝1600m)2着のアルマワイオリ(牡/父マツリダゴッホ、祖母スエヒロジョウオー=阪神3歳牝馬S)などが注目を集めている。

 アルマワイオリは祖母が大駆け(9番人気1着)した同じ時期、同じコースで、祖母同様に波乱(14番人気2着)を演出。"血は争えない"とはよく言ったもので、おいしい思いをした祖母のファンもいたのではないだろうか。

 1993年のマイルチャンピオンシップ(京都芝1600m)を勝ったシンコウラブリイは3頭の孫が勝ち上がっている。ジャズファンク(牡/父ハービンジャー)が出走した1月5日の寒竹賞(500万下・中山芝2000m)には、同期のライバル・ニシノフラワー(桜花賞などGI2勝)の孫ニシノオタケビ(牡/父アドマイヤオーラ)も出走し、孫同士の対決が実現。ジャズファンクが2着、ニシノオタケビが6着という結果だった。

 こういった、現役時代のライバルの子孫同士の対決も、長年のファンにとっては興味深いもの。1997年の3歳牝馬3冠戦線を分け合ったキョウエイマーチとメジロドーベル(オークスなどGI5勝)も、孫が勝ち上がっている。前述のアヴニールマルシェとマッサビエル(牡/父ハービンジャー)がその馬で、この2頭は奇しくも同じ馬主(キャロットファーム)でいずれも牡馬。こちらも対決が実現して欲しい組み合わせである。

 血統的共通点がある馬同士の比較もおもしろい。トニービンの代表産駒であるエアグルーヴ、ノースフライト(安田記念)の孫となるポルトドートウィユとキロハナ(牡)は、いずれも3冠馬ディープインパクト産駒。父と祖母の父が同じという関係だ。いずれもディープインパクト産駒らしい瞬発力を持つ素質馬である。

 変わり種では、ファレノプシス(桜花賞などGI3勝)の孫ブルームーン(牡)を挙げておきたい。ダートが得意のパイロを父に持つ同馬はダート1200mで勝ち上がり。目の覚めるような強烈な末脚は相当な能力を感じさせるものであり、今後は他馬とは別の路線で頭角を現してくるかもしれない。

 また、直仔や祖母にとどまらず、曽祖母が1987年牝馬2冠(オークス、桜花賞)のマックスビューティというココロノアイ(牝、父ステイゴールド)は既にアルテミスS(GIII・東京芝1600m)で重賞勝ちを収め、阪神JFでも3着に入っている。オールドファンにはうれしい存在だ。

 現役時代を知るファンの方は、"母譲りの瞬発力"とか"馬体や気性が似ている"など、産駒と母・祖母を重ね合わせて懐かしむもよし。そこに馬券のヒントも転がっているかもしれない。そうでない方はこれを機に、過去の名牝の成績を調べたり、映像でその走りを確認してみてはいかがだろう。その馬のルーツを知ることで思い入れも深くなり、新たな発見があるかもしれない。こういった血統の知識が、今年のクラシック戦線のみならず、競馬をより楽しむための手助けになれば幸いである。

平出貴昭(サラブレッド血統センター)●文 text by Hiraide Takaaki