初登場首位に立った「アメリカン・スナイパー」(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

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マーティン・ルーサー・キング・ジュニア・デイ(祝日)の連休となった先週末の全米ボックスオフィス。連休合わせで3本の新作が公開されたが、クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー主演の「アメリカン・スナイパー」がすべてを撃ち倒し、R指定作品では歴代2位、1月公開作では新記録となる約9000万ドルという驚異的な興収をあげ、首位に立った。

昨年12月25日からニューヨーク、ロサンゼルス、ダラスで限定公開され、先週木曜夜より3555サイトでの拡大公開となった同作は、米軍史上最多160人を射殺した最強の狙撃手クリス・カイルの半生を描いた戦争ドラマ。映画界の生ける伝説であるイーストウッドが、米軍の伝説的狙撃手の人生を描くということで公開前から話題を集めていたが、限定公開後にさらに口コミが広がり、1月に入ってから米チケット販売サイトでは爆発的な売れ行きを見せていた。業界内では先週末は4000万ドル前後の興収になると予想されていたが、木曜夜に約53万ドル、金曜に約3050万ドル、土曜に約3470万ドル、日曜に約2500万ドルの興収をあげる衝撃的なサプライズヒットとなった。この約9000万ドルという3日間のオープニング興収(拡大公開時)はイーストウッドの長いキャリアでも最高の成績。これまでの記録は約2948万ドル(こちらも拡大公開時)を稼いだ2008年の監督・主演作「グラン・トリノ」だった。

成功の要因は、拡大公開の前日15日に発表されたアカデミー賞ノミネート(作品賞、主演男優賞を含む6部門)はもちろんだが、今回は主演がクーパーだったことが大きい。通常のイーストウッド作品では観客の年齢層が非常に高く、男性客が多いが、今回の客層データは25歳以上が63%、男性客が57%となっており、若年層と女性も多く劇場に足を運んでいる(それでもまだ成人男性の割合が高いが)。さらに、テネシー、テキサス、オクラホマ、ニューメキシコといった中西部の州で圧倒的な集客を見せており、都市部だけでなく、地方の観客にアピールしたことも非常に大きな要因となっている。

映画は、一貫してアメリカ人男性の生き方を描いてきたイーストウッドのキャリアの集大成ともいえる内容で、星条旗、十字架、聖痕、銃といった記号的な演出はもちろん、好敵手のスナイパーを登場させてストーリーを盛り上げる娯楽映画作家としての巧者ぶりも見せつける安心のイーストウッド作品となっている。このビッグヒットを受け、賞レースでの存在感が確実に大きくなっている同作。アカデミー賞ではイーストウッドが監督賞にノミネートされなかったため、その同情票が作品賞のほうに動けば、現在圧倒的優位に立つ非メジャー作品「6才のボクが、大人になるまで。」を逆転で破る可能性も出てきた。

初登場で2位となったのはケビン・ハート主演のコメディ「The Wedding Ringer」。こちらは2000万ドルのオープニング興収。3位デビューは熊が主役のファミリー向けコメディ「パディントン」で約1800万ドルのオープニング興収だった。タイトルロールの熊のボイスキャストに「007 スカイフォール」のベン・ウィショー。出演にジム・ブロードベント、ニコール・キッドマン、サリー・ホーキンス。

そして、「アメリカン・スナイパー」の特大ヒットで割を食ったのが、「ヒート」「インサイダー」「コラテラル」の巨匠マイケル・マンのアクションスリラー「ブラックハット(原題)」。なんとオープニング興収約400万ドルで10位デビューという大惨敗。国際的なサイバー犯罪の世界で暗躍するハッキング組織と、米中の捜査員と犯罪者のハッカーチームとの死闘を描く内容で、「The Interview」のハッキング騒動直後のタイムリーな公開にもかかわらず、まったく振るわなかった。レビューは賛否が分かれており、男性客の大半は「スナイパー」に奪われてしまったと思われる。主演は「マイティ・ソー」のクリス・へムズワース。共演にワン・リーホン、ビオラ・デイビス、「ラスト、コーション」のタン・ウェイ。

今週末はジョージ・ルーカス製作・脚本のアニメ「Strange Magic」に、ジョニー・デップ主演のアクションコメディ「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」、ジェニファー・ロペス主演のサスペンス「The Boy Next Door」が公開となる。

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