(写真)「ない品物は次もってくるよ」。高齢者と話す本間さん(右端)=長野市の大岡地区

写真拡大 (全2枚)


 安倍晋三内閣は、農業協同組合(JA農協)を“岩盤規制”の一つだとして、「競争力強化」を口実に、事実上の解体方針を持ち出しています。しかし総合農協では、農家組合員、地域住民の生活を考え、採算があわない事業もしています。車が運転できず、買い物が難しい高齢者を対象にした「移動購買車」も、その一つです。(中沢睦夫)

 長野県長野市にあるJAグリーン長野では、移動購買車「ひまわり号」を運営します。“ひまわりのように温かく見守りたい”との思いが込められています。中山間地に点在する集落へ毎週1度、日用品や食品を農協の店舗から積んで訪問します。価格は店舗と同じです。

 2013年8月に導入しました。ひまわり号の購入費用の3分の2は、国・長野市と連携し、中山間地域の活性化支援事業を活用しました。

 雪が積もる狭い山道にも入れる1・5トン車です。同市の周辺部となる旧大岡村地区。予定時間に集落に入ると音楽を鳴らします。「移動購買車がきました」。アナウンスをするのは移動購買員の男性(60)です。

 音を聞いた集落の人が三々五々やってきました。86歳と80歳の夫婦は「外へ行くにはタクシーしかない。年寄りだけなのでありがたい」と、野菜やリンゴを買いました。1人暮らしという女性(91)は「時々、別の町に住む若い者が買ってくるが、購買車は自分で好きなものを買えるからいい」といいます。

 目が悪くなり自動車の免許を返上したという男性(70)は「昔は、養蚕や葉タバコ、酪農をやり、みなが生活できた。バスも少なくバス停も遠くなり、購買車は必要だ」と語ります。

 「元気でいたかね」と応対した本間さんは、移動購買車の意義について、「食材配達システムもあるが、自宅で“引きこもり”になりがち。ここは、週1度集まって世間話もする。コミュニケーションの場になり、集落の活性化になっている」と話しています。

129市町村 民間金融機関は農協だけ

 農協の店舗は、株式会社では採算がとれない山村や離島にもあります。「農協以外にガソリンスタンドがない」(北海道)ことは珍しくありません。

 農水省のまとめでは、ゆうちょ銀行を除き、金融店舗のうち半分以上を農協が占める市町村は35%にあたる606あります。このうち、農協以外に民間金融機関がない市町村は129もあります。

 農協の運営では、農産物の販売・農業資材の購買をする「経済部門」は赤字です。直接利益を生まない営農指導もあるからです。信用(金融)部門と共済部門などが黒字となり、全体として黒字となっています。