22万人組織は社会の縮図だ(写真はイメージです)

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 高視聴率を誇ったドラマ、日曜劇場『ごめんね青春!』(TBS、宮藤官九郎脚本)では、性同一性障害の男子高校生が女子の制服を着用するというストーリーも含まれていた。いまやこの性同一性障害は私たちにとってもごく身近な話題として認識されつつある。

 全国に隊員数約22万人を擁する防衛省・自衛隊でも話は同じだ。隊員数が多い自衛隊だからこそ性同一性障害に悩む者がいてもさほど不思議なことではない。だがそれを打ち明け、周囲に理解されるだけの職場環境、業界風土が自衛隊ではまだ整っていないという。

女性用の制服・制帽、下着を身に着けて勤務したい

「男性の制服を着て、男性用の下着を身に着けて日々の勤務をこなすのは精神的にもよくない。自分は医学的な性は男性だが、心は女性と自覚している。自衛官の制服は官給だが、自費購入も可能。官給品は男性でもいい。自費購入で女性用の制服・制帽、下着を身に着けられるようにしてほしいですね。そうすれば落ち着いて勤務できます」

 関西の海自後方支援部隊に勤務する2尉(28歳)はこう苦悩を明かす。

「自分は女だと自覚したのは高校生の頃からです。大学入学で親元を離れ、一人暮らしをするようになってから大学院を出るまで、下着は女性用のものを身に着けていました。大学院卒業後、自衛隊に入隊すると、男性用の下着を身に着けなければならないので入隊すべきかどうか悩みました」(2尉)

 この2尉は外部の一般病院に受診し、「性同一性障害」の診断書を得るのに約半年の期間を要した。現在、自衛隊では性同一性障害だと職場に申告しても、「勤務配置を変えるなど特別な措置が取られることはない」(防衛省関係者)ものの、実際に性同一性障害を隊内での手続きに従って申告すると、「恐らく人と接する機会が少ない配置への転勤などの措置が取られる」(2尉)という。

「自衛隊の仕事に不満はありません。ただ医学的な性ではなく心理的な性である女性と自分のことを認めてくれればそれでいいんです。今は自分同様に性同一性障害に悩む者が打ち明け、そしてそれを理解してくれる職場環境になるよう上層部にはお願いしたいです」(同)

セクハラ宴会芸がフラッシュバック

 自衛隊という職場と仕事に不満はないと話すこの2尉だが、前任の部隊勤務時、宴会芸のひとつとしてやらされた「人間ウォシュレット」だけは不快感だけが残ったと話す。

「他愛もない宴会芸かもしれない。でも大勢の隊員が見ているなか、若手幹部である自分が舞台上に横たわり、自分に跨った先輩幹部の尻が自分の顔面に迫ってきた瞬間、ものすごく気持ち悪かった。あらかじめ口に含んでおいた水をその尻に噴きかけ、水しぶきが跳ね返ってきた感触はいまでもフラッシュバックになって思い出します」(同)

女性自衛官「男女平等なら女を男同様に扱って」

 性同一性障害に悩む自衛官は男性だけではない。関東のある空自部隊に勤務する女性の3等空尉(24歳)は、防衛大学校出身。防大時代は、女性でも男性と同じ型の制服を着せられていたが、幹部自衛官任命後は女性用の制服を着せられるのが不満だと語る。

「私は男女平等なら制服も風呂もすべて男女同じにすればいいと考えます。戦闘集団である自衛隊では危険を共にする家族同様の仲間。だから男性も女性も、入浴時、『前を隠すな』と指導されます。でも男性と女性という性の違いで浴室などは別というのはおかしいですよね? 平等とはいえません」(3尉)

 女性になりたいので女性用の制服を着せろという男性幹部自衛官、男女平等な職場なら率先して男・女の性差を取っ払えと叫ぶ女性幹部自衛官……。

 どちらも組織の中では極端な少数派かもしれない。数ある職種、数多い隊員数を擁する自衛隊とは、いわば「社会の縮図」だ。そんな社会の縮図である自衛隊で起こることは、これから先、社会でも十分起こる得る話ではないだろうか。自衛隊の対応が、先々、民間企業での対応のヒントとなる。

(取材・文・写真/秋山謙一郎)