ジェンティルドンナが有馬記念で有終の美を飾って、幕を閉じた2014年の中央競馬。それからほぼ休むまもなく、1月4日には2015年の戦いの火ぶたが切って落とされた。やはり注目は、今春のクラシック(※)に向けた争いである。
※牝馬=桜花賞(4月12日/阪神・芝1600m)、オークス(5月24日/東京・芝2400m)
牡馬=皐月賞(4月19日/中山・芝2000m)、ダービー(5月31日/東京・芝2400m)

 これまでの傾向では、牝馬戦線は2歳女王を決する阪神ジュベナイルフィリーズ(以下、阪神JF。阪神・芝1600m)の、牡馬戦線は11月の東京スポーツ杯2歳S(以下、東スポ杯。東京・芝1800m)か、12月の最終週に行なわれるラジオNIKKEI杯2歳S(阪神・芝2000m)の好走馬が、翌春のクラシックの主役になることが多かった。

 例えば昨年の桜花賞では、阪神JFの1着(レッドリヴェール)、2着(ハープスター)馬が、順位が入れ替わっただけでワンツーフィニッシュ(1着ハープスター、2着レッドリヴェール)。オークスでもハープスターが断然の一番人気に推された(結果は2着)。牡馬も、皐月賞は東スポ杯覇者のイスラボニータが制し、ダービーはラジオNIKKEI杯2歳Sを勝ったワンアンドオンリーが頂点に立った。まさに例年の傾向どおりの典型的な結果になったと言える。

 今年も、牝馬戦線はその傾向どおり、阪神JFの上位陣(※)が中心になると見られているが、牡馬戦線は例年どおり、とは限らない。というのも、昨年から牡馬向けの2歳重賞スケジュールが大幅に変更されたからだ。
※1着ショウナンアデラ(牝3歳。父ディープインパクト)、2着レッツゴードンキ(牝3歳。父キングカメハメハ)

 まず、一昨年まで中山・芝1600mで行なわれていたGI朝日杯フューチュリティS(以下、朝日杯FS)が、舞台を阪神(芝1600m)に移した。それと入れ替わるようにして、年末に阪神で行なわれていたラジオNIKKEI杯2歳Sは中山・芝2000mを舞台とし、名称もホープフルSと改められた。加えて、通常東スポ杯の翌週に行なわれていたオープン競走の京都2歳S(京都・芝2000m)が重賞(GIII)に格上げ。翌年のクラシックにつながっていきそうな2歳重賞がさらに増えた。

 とりわけ、朝日杯FSの舞台変更が、これまでの傾向を大きく変えそうだ。なにしろ、トリッキーなコース設定で枠順などによる有利不利が出やすかった中山に比べて、コースが広く、スタート後と最後の直線も長い阪神のほうが、各馬の実力がそのまま反映されやすくなる。おかげで、2歳チャンピオン決定戦としてふさわしい舞台となり、今まで翌年のクラシックを見据えて朝日杯FSを避けていた有力馬たちの参戦が一層見込めるようになった。

 結果、近年は2012年のロゴタイプ(皐月賞1着)と、2009年のローズキングダム(ダービー2着)くらいしかクラシックに結びつかなかった朝日杯FSの好走馬も、今年はよりクローズアップせざるを得ないだろう。加えて、皐月賞と同じ舞台で行なわれるホープフルSについても、重賞になったことでよりレース価値が増し、従来のラジオNIKKEI杯2歳Sと同等に考える必要が出てきた。

 実際、朝日杯FSとホープフルSは、ハイレベルなメンバー構成となり、クラシックに直結しそうなレースとなった。ならば当然、それらの勝ち馬こそ、今年のクラシックの"主役"候補と見るべきだろう。

 筆頭は、朝日杯FSを1番人気で制したダノンプラチナ(牡3歳。父ディープインパクト)。1600mまでのレースしか使われていないため、距離延長の課題はあるものの、昨年の芝レースにおける2歳の重賞戦で、1番人気で勝ったのはこの馬のみ。人気馬が立て続けに凡走を繰り返している状況にあって、人気を背負いながら勝利を重ねているのは強調材料であり、一歩抜け出した感がある。

 ホープフルSを勝ったシャイニングレイ(牡3歳。父ディープインパクト)も軽くは扱えない。実は、中山競馬場改装後(2014年12月〜)の芝レースで、ディープインパクト産駒(以下、ディープ産駒)が勝利したのはこの馬が初めて。その後も、有馬記念のジェンティルドンナしか勝っていないことを考えると、その価値は極めて高く、2戦目で重賞を制したことも含めて器の大きさを感じる。

 他では、新潟2歳Sと東スポ杯で、2着と好走しているアヴニールマルシェ(牡3歳。父ディープインパクト)。牡馬では、重賞で2度連対しているのはこの馬のみで、上位にランクされてしかるべき存在だ。また、祖母が「女傑」エアグルーヴという、ポルトドートウィユ(牡3歳。父ディープインパクト)に対する期待が大きい。本格化途上の中でも安定した結果を残しており、奥行きのある血統からもクラシック向きと見られている。

 こうした面々がクラシックの主役候補に名乗りを挙げる中、一方で「今年の"本当の主役"はまだ重賞戦線に出てきていない」という声もある。

 なかでも、今年の3歳世代の「ディープ産駒の真打ち」とも言われているリアルスティール(牡3歳)の評判が高い。母の父がストームキャットという配合は、一昨年のダービー馬キズナ(牡5歳)や、昨年のエリザベス女王杯を制したラキシス(牝5歳)と同じ。満を持して挑んだ年末のデビュー戦(12月27日/阪神・芝1800m)では、最後の直線で軽く仕掛けただけで後続に3馬身差をつけて快勝し、注目度がますます増している。

 こうしてみると、今年のクラシック戦線も主役を張るのは、やはりディープ産駒と言えそうで、牝馬戦線も、ディープ産駒のショウナンアデラが阪神JFを制し、同馬がクラシックでも中心になる、というのが大方の見方だ。

 ただし昨春のクラシックも、下馬評では「ディープ産駒の独壇場」と言われながら、結果を出したのは桜花賞のハープスターだけだった。リーディングサイヤーとしての座は揺るがないにしても、ことクラシックに限れば、決してディープ産駒の「天下」とは言えない。むしろ、戦国模様と言っても過言ではない。

 ディープ産駒を脅かすのは、昨年のオークス(ヌーヴォレコルト)とダービー(ワンアンドオンリー)を制したハーツクライ産駒に、2014年リーディングサイヤー2位のキングカメハメハ産駒。そして、一気にブレイクの気配を感じさせているのが、新種牡馬ハービンジャー産駒たちだ。初年度産駒がデビューした昨年は21勝を挙げて、そのうち16勝が1800m以上のレース。クラシックに対応した距離適性を示し、初年度産駒からクラシックホースの誕生が期待されている。

 ハービンジャー産駒の注目株は、叔父に2011年の天皇賞・秋を勝ったトーセンジョーダン、2012年のダービー3着馬トーセンホマレボシが、いとこに重賞2勝のトーセンスターダムがいるトーセンバジル(牡3歳)。4戦2勝2着2回という堅実な成績を収めているうえ、年末の葉牡丹賞(12月6日/中山・芝2000m)では、ホープフルSの勝ちタイム(2分01秒9)よりも1秒も速いタイム(2分00秒8)で快勝。改装後の中山・芝2000m戦では、レコード決着となった中山金杯(1月4日/1分57秒8)に次ぐ、好タイムを記録した。

 他にも、500万下のエリカ賞(12月27日/阪神・芝2000m)で2勝目を上げたベルーフ(牡3歳)や、牝馬でも重賞で度々好走しているフローレスダンサー(牝3歳)、ダイワスカーレットの子で新馬戦を快勝したダイワミランダ(牝3歳)など、期待馬は多い。

 何はともあれ、これまでの2歳重賞戦線ではディープ産駒の活躍が際立っているが、クラシックでは他の産駒の台頭も十分にありえる。まして人気馬が期待を裏切り続けている、この世代。人気先行のディープ産駒を絶対視するのは禁物だ。

土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu