ねつ造を認め、謝罪するファン教授2005年当時

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 世界的な権威を持つネイチャー誌をして「生物学の常識を覆す」と言わしめた世紀の発見は、目立ちたがり屋な理系女子の壮大なねつ造劇だったとして、終焉を迎えつつある。

 STAP細胞の存在を最後まで叫び続けた小保方晴子氏による検証実験は、当初の予想通りあえなく失敗。12月25日には、理化学研究所の調査委員会が報告を発表し、STAP細胞が「存在しない」ことを公式に認めた。さらに、論文に使用された図表2点や不正がみつかったり、ES細胞の故意の混入があったことも発覚している。巷では「再生医療市場の謀略が裏にあるのではないか」など、様々な噂も取り沙汰された。しかし、今回の発表を受け「名誉のために犯された壮大なねつ造劇だった」と結論づけされた。

 一連の騒動の主人公となった小保方氏が、日本国民を騙した“詐欺師”としてさらなる糾弾にさらされることは想像に難くない。国民の信頼を裏切り、血税を無駄にした責任をとるため“腹を切るべし”という世論の流れは一層強まるだろう。おそらく、小保方氏は二度と世間に顔向けできない状況になるまで追い込まれるはずだ。事実、すでに小保方氏の両親は行方知れずとなっていることも報じられている。

韓国ES細胞ねつ造事件の“犯人”の今

 さて、今年日本を揺るがしたSTAP細胞ねつ造劇のような事件だが、10年前の2004年には韓国で似たような事件が起きた。ファン・ウソク教授が起こした“ES細胞ねつ造事件だ”。

 当時、世界で誰も成し遂げられなかった偉業を韓国人博士が達成したとして、韓国では国民的熱狂が巻き起こった。科学者としては異例のファンクラブが設立されたり、人となりを称える関連書籍も数十冊となく発売された。韓国人初の科学分野でのノーベル賞受賞が期待されたのはいうまでもない。

 当時、韓国ではファン教授が箸でES細胞を抽出するシーンが、幾度となく放送されたと。カメラを前にしたファン教授は「韓国人の卓越した箸を使う技術が、ES細胞の抽出を可能にした」と、自信満々に語っていたそうだ。そして、翌年には世紀の発見がまったくのデタラメだったことが発覚。英雄は一転、稀代の詐欺師だったとして韓国国民の糾弾の的になった。

 しかし、韓国を揺るがしたねつ造事件から10年が経過した現在、ファン教授はピンピンしているそうだ。そればかりか、2014年12月には自ら韓国国会庁舎に出向き、細胞研究の規制を緩和するように臆面もなく求めたとも言われている。加えて、今年に入って“NT-1”という幹細胞の特許をアメリカで取得。海外のメディアから頻繁に取り上げられている。その様子は、一国を揺るがした詐欺事件に、まるで時効でも成立したかのようでさえある。

「韓国の学会では論文の盗用やねつ造は珍しくない。最近でも、有名な学者が論文を盗用した事件が相次いでいます。しかし、数年したら何もなかったかのように現場復帰するはずです。よくいえば生命力が強いし、悪く言えば無責任と言いますか……。韓国には権力のある人間がスキャンダルを起こしても、生き残れる社会構造がある。財閥の人間が捕まっても恩赦で許されるのと同じ構造です」(韓国大手紙記者)

 社会に迷惑をかけた人が、腹を切って二度と浮かびあがられない日本社会が正しいのか。はたまた、スキャンダルや失敗をした人間が言い訳することで生き残れる韓国社会が正しいのか。それを一言で結論するのが難しい。ただ、日韓を揺るがしたねつ造劇の当事者たちには、まったく異なる結末が待っていそうである。

(取材・文/中川武司)