ローソン・鈴木嘉之氏
 今やそこらのテパ地下や洋菓子店に負けないクオリティを持つまでになったコンビニスイーツ。そのブームのきっかけを作ったのが、ローソンが’09年に発売した「プレミアムロールケーキ」である。今回はその開発の陣頭指揮を執り、現在はベーカリー・デザート部の部長職を務める鈴木嘉之さんに話を伺った。元々は百貨店勤務だったという鈴木さん、果たしてどのようにヒット企画を生み出し、実現へと導いたのだろうか?

――実は中途入社だとお聞きしましたが?

 そうですね。前は百貨店で勤務していました。途中スーパーへの出向を経験した後、百貨店でイベントや催事の担当をしていました。人気のお店に出店してもらえるよう交渉する仕事です。

―コンビニの仕事に興味があったんですか?

  いや、興味はあったのですが、百貨店の仕事にも満足していたので、まぁ話だけでも聞こうかという感じでした。それで最初の面談で前社長の新浪さんが出てきたんです。そこで、商品開発の仕事を任せたいと言われ、「じゃあ頼むよ」と、ガッチリ握手までしてしまったんです(笑)。あの熱い性格に圧倒されてしまいましたね。

―そこから「プレミアムロールケーキ」の開発に携わるのですか?

 入社2年目にデザート部門に配属され、トップから「デザートを抜本的に変えろ」と拝命され、リーダーに就任したのが5年前です。当時、ローソンはコンビニ業界でスイーツシェアはセブンさん、ファミマさんに次いで第3位でした。ただ、私がかつていた百貨店のデパ地下はお客様のほとんどが女性だったんですが、コンビニのデザートは男性向けが非常に多かった。そのため、女性のお客様を新たに引きつけることができれば、と思っていました。

―なるほど。「プレミアムロールケーキ」は女性がターゲットだと

  そうですね。とにかく女性の声がほしいということで、プロジェクトチームは全体の7割を女性に、開発にいたっては8割を女性で起用しました。当時のコンビニデザートは、たとえばクリームひとつとっても「美味しくない」など色々な不満があった。なので、いくつものクリームをお取引先と交渉し、試行錯誤して、コンビニとしてはやや高価だけど、洋菓子専門店と比較したらお手ごろという最適なクリームを作り上げました。

――なるほど。宣伝にもだいぶ力を入れたようですが

  最初はCMや広告などは出さず、口コミで広めるということを意識しました。いくら美味しい商品でも売れなければダメ。ということで、回転が速いコンビニ商品としては異例の発売前に2か月をかけて原宿のファッションイベントや雑貨店の会議などで試食会を行い、きれいなお皿に盛りつけて商品を提供しました。写メを撮ってブログにアップしてくれた方もいて、おかげさまで、発売当初からこちらの予想以上に好評をいただくことができました。あまりの好評ぶりに品薄になって、ヤフーのトップに載ったときには、さすがに困りましたが……(笑)。

――ちなみに、甘いものはもともと好物なんですか?(笑)

 好きですね。まわりが女性ばかりでも、原宿の人気店に並んだり、スイーツの食べ放題とか行ったりします(笑)。あとは仕事柄、海外の人気店が日本初出店とか、そういうニュースもチェックするようにしてますね。

――そういうところにヒット商品を生み出すヒントみたいなものがあるのでしょうか?

 ネットって便利なんですが、それだけに気を取られてしまっても危険なので、なるべく現場にも出掛けて、リアルとのバランスを取るように気を付けています。そこで、見つけた情報がだんだん繋がって、線になり、立体になっていく。そこからアイデアが出てくることが多いですね。