『バンクーバーの朝日』に出演した池松壮亮を直撃!

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『ぼくたちの家族』(14)に続いて、妻夫木聡と共に、石井裕也監督最新作『バンクーバーの朝日』(12月20日公開)に出演した池松壮亮。今度の石井組で彼が演じたのは、戦前のカナダ・バンクーバーに実在した野球チームの選手役だった。強い信頼関係ができている石井組で、池松がどう役と向き合ったのか。本作に懸けた思いを聞いてみた。

【写真を見る】劇中で爽やかな笑顔を見せる池松壮亮/[c]2014「バンクーバーの朝日」製作委員会

差別や貧困の中にあってもひたむきに野球を続け、日系移民に勇気と誇り、希望を与えた野球チーム“バンクーバー朝日”。池松が演じた、サードのフランク野島は、ホテルのベルボーイをしながら、大好きな野球に打ち込んでいく。池松は「どこかで閉塞感を感じながらも、何かにすがるような気持ちで野球をやっている姿を見せなければいけないと思いました」と言う。

「もちろん、当時とは比べ物にならないかもしれないけど、僕も生きている以上、閉塞感を感じることは多々あります。でも、グラウンドへ行ったらみんなが楽しそうに野球をやっている。そこはリンクさせようと思っていました。僕が良かったなと思えたのは、すでに野球の楽しさを知っていたこと。でも、これまで野球をやっていなかった妻(夫木)さんも、本当に野球を楽しそうにやっていたし、みんながそこに平等に集まって、野球ができるってところが良かったんでしょうね」。

戦前のバンクーバーを再現すべく、栃木県足利市に巨大オープンセットが立てられた。そこには野球場をはじめ、日本人街、白人街、50棟ものビルや家屋が並んだ。「セットに入った時点で、移民というものについて、嫌でもいろんなことを考えさせられました。役者だからって簡単にウソはつけないので、360度見回して、そこに信じられるものがあるってことは、本当に助かりました」。

ショートのレジー笠原役の妻夫木聡は、同じホリプロの先輩である。妻夫木について「やっぱりどこまでも真面目だし、真摯です。時には痛々しいほど突っ走ることもありますが、その姿を見て、みんながついていったのだと思います。今回も見事にキャプテンでした」とリスペクトを口にする。

とにかくチームワークが抜群だったと振り返る。「どんどん良いチームになっていくのが明らかに見てわかるのですよ。まあ、これだけの拘束期間を、常にいっしょにいたわけですから。夜もしょっちゅう、みんなでごはんを食べに行っていましたし。亀梨(和也)さんはずっと投げっぱなし、妻さんもずっと走っていたからきつかったでしょうけど、それでも(ごはんに)来ていたってことは、やっぱりみんなこのチームのことを好きだったんだと思います」。

石井監督にとって本作は、予算も撮影規模も撮影期間も、最大規模の作品となった。「石井さんにとってはとんでもない挑戦だったと思いますが、映画を通して現代に向けて発信しているものは何ら変わりなかったです。石井さんは、人を本気にさせる天才だと思っているので、どれだけ人数が集まっても、みんながそうなっていました」。

その「人を本気にさせる」術というのは、どういうものなのか?「上手く言えませんが、ひとりひとりを信じて、試しているんでしょうね。ひとりひとりが映画を作っていることを石井さんがいちばんよく理解しているんじゃないかなと」。

2014年は数多くの映画に出演し、その名を轟かせてきた池松壮亮。彼にとって映画の現場とは?と尋ねてみると「救いです」という答えが返ってきた。「『バンクーバー〜』の現場に行けば、何だか心が洗われたし、本来こうあるはずだよねと思ったりもしました。そういう意味で、僕にとっての映画は、バンクーバー朝日の人たちにとっての野球みたいなものかもしれない。楽しいことだけじゃなく、苦しいこともあった上で良い場所だなと思います」。

最後に池松は「すごい映画ができました。今の時代に必要な要素が詰まっているし、豊かな映画ができたとも思っています」と本作を力強くアピール。石井監督の下、妻夫木、池松ら豪華キャストを迎えた『バンクーバーの朝日』を、スクリーンの前で応援してほしい。【取材・文/山崎伸子】