バンクーバー滞在時にケイ上西功一さん(中央)と語り合った妻夫木聡と石井裕也監督

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俳優の妻夫木聡と石井裕也監督が2度目のタッグを組んだ「バンクーバーの朝日」が、12月20日に全国で公開される。映画.comでは、9月にカナダで開催された第33回バンクーバー国際映画祭で特別上映された翌日、現地で2人にインタビューを敢行した。

同作は、戦前のカナダ・バンクーバーで差別や貧困の中にあってもフェアプレーの精神でひたむきに戦い抜き、白人社会からも称賛と人気を勝ち得た実在の野球チーム「バンクーバー朝日」の記録をもとに、日系移民たちのドラマを描いている。同映画祭では約1800人のファンが上映に駆けつけ、大喝さいを浴びた。

妻夫木と石井監督、共演の亀梨和也は、「バンクーバー朝日」OBでカナダ・ブリティッシュコロンビア州在住のケイ上西功一さんとともに鑑賞。インタビューが行われたこの日も、朝日軍が実際にプレーしていた旧パウエル球場(現オッペンハイマー公園)界隈を上西さんと歩き、現役時代にメンバーが練習後のひと時を楽しんだホテルのパブでランチをともにした。

主人公・レジー笠原に扮した妻夫木は、上映後に「この作品をやって良かったというのを通り越して、生きていて良かったと思っている」と話したが、半日経過したことで「ホッとしている事の方が大きいかもしれませんね」と明かす。撮影中は葛藤を抱くこともあったそうで、「僕らは日本で生まれ育った日本人ですから、当時のカナダ移民の方々の気持ちを100%理解することはできないですよね。バンクーバーへ渡り、またはバンクーバーで生まれ育った自分はカナダ人なのか、日本人なのかという思いが演じながら芽生えたりもした」という。

ただ、今回のバンクーバー滞在で上西さんと語らい、話に耳を傾けるうちに、ある確信にたどり着いた。「ケイさんからお話をうかがっているなかで、僕らのやってきたことは間違っていなかったんだなあって感じたんです。差別もあったでしょうが、毎日苦しんで生きてきたわけではないと思うんです。日本への思いもあったはず。僕らのそういう気持ちは、役にちゃんと落とし込めた。その思いをケイさんは感じ取ってくれたんでしょうね」と安堵の面持ちを浮かべる。

妻夫木は上映時、上西さんの隣席で鑑賞したといい「どうもケイさんは懐かしんでおられるような感じがしたんです。受け入れてくれているようで、僕は嬉しかった。ひとつの家族になれたような感覚が強いので、本当にホッとしていますよ」と述懐。石井監督は、上映前の会見で「被害者面だけはしないようにと気をつけました。当時の人たちがどれだけ苦しい思いをしたかよりも、どれだけ強い気持ちをもって生きたかを描こうと思った」と語っていただけに、観客の反応を見届けて手ごたえを感じている様子。だからこそ「当時を知る人もいらっしゃいますから、彼らが見ても納得できるものにしたかった。最も重要だったのは朝日軍の姿であり、存在。それをまっすぐに受け取ってもらったという印象を受けています」と力強い眼差(まなざ)しで語った。

また、「ぼくたちの家族」に続き、主演を務めた妻夫木に対して多くを語りこそしないが全幅の信頼を寄せているのが見て取れる。「妻夫木さんには2本続けて主演で出てもらった。それは、僕が思う妻夫木さんの魅力をなんとか見せきりたいという思いがあったんです。ひとつの答えを『ぼくたちの家族』、もうひとつの答えをこの『バンクーバーの朝日』で出せたと思います」。石井監督の言う“答え”は、12月20日に確認することができる。

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