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欧米を中心に近年世界中で広がりを見せ、注目を集めている新金融サービスの“ソーシャルレンディングサービス”。11月19日に日本初の全案件不動産担保型ソーシャルレンディングサービス「LuckyBank」の事業開始の告知をしたラッキーバンク・インベストメントは、この12月11日に第1号案件の募集を開始、”ソーシャルレンディングサービス”事業に本格参入となった。サービス開始にあたり、サービスの概要や事業起ち上げの経緯、ソーシャルレンディング市場の現在と将来性などについて、同社代表取締役社長・越後篤氏と同副社長の田中翔平氏に話を伺った。

――“ソーシャルレンディング”というのは、まだ一般にはなじみのない言葉ですが、どのようなものなのでしょうか?

越後:ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい人と貸したい人の個人間融資をネット上で結びつけるサービスです。具体的には、一般の個人投資家の方と匿名組合契約を締結し出資金をお預かりして、貸付金に回すという流れになります。2005年にイギリスの消費者金融業者Zopaが始めたのが最初で、2006年にアメリカのProsper、2007年にLending clubが参入し、Lending clubで言うと、既に貸付額は2,000億円にものぼり、欧米を中心にかなり広がりを見せています。一方、日本ではmaneo社が2008年にサービスを開始したのが最初で、現在の貸付総額は約220億円あまりとされています。以降、SBIソーシャルレンディング、AQUSH、クラウドバンクの各サービスが続き、弊社は5社目の参入ということになります。いずれも共通するのは、募集から申し込みまでネットで完結するということです。

――欧米に比べてソーシャルレンディングが日本であまり広がっていないのは文化の違いがあるのでしょうか?

越後:文化の違いというよりは、認知がまだあまりされていないのだと思います。どちらかと言うと、まだまだ知っている人だけで行われているサービスで、これから伸びていくと思います。

田中:日本国内で言うと、ソーシャルレンディングよりは先にクラウドファウンディングのほうが主流となっています。メディア等で度々紹介されることもあり、最近ではふるさと納税のクラウドファウンディングがよく知られていますが、ソーシャルレンディングは参入企業も少なく、告知もまだ十分に広がっておらず、まだまだ発展途上のものと言えます。しかし、今後は投資先への寄付、(ふるさと)特典や投資を中心としてきたクラウドファンディングに対して、事業会社への融資を通して事業活動を支援する特徴を持つソーシャルレンディングサービスは、企業活動のインフラのひとつのとして徐々に広がっていくと思います。

――そうしたなかで、御社の事業が他社のソーシャルレンディングサービスとの違いはどのような点にあるのでしょうか?

越後:不動産を担保にした貸付金に特化しているのが特徴です。あくまで実物資産の価値のあるものに投資するということで、投資家の方の保全を第一に考えたサービスです。実際の流れとしては、私どもで扱う不動産融資の案件の中から投資家の方が価値があると思ったものを選んでいただき、募集金額が溜まった段階で募集を打ち切り、契約が成立し、投資先に融資を行います。貸付先からは毎月返済が行われ、当然、投資家の方にも毎月配当を行います。

――ソーシャルレンディング事業を起業しようと思ったきっかけは?

越後:私はもともと銀行畑の出身で、銀行員時代に融資の仕事をやっておりました。その後、日本経済研究センターに2年間出向し、エコノミストとして経済の勉強をした後、ノンバンクに移り、飲食業の経営にも参加したり、融資される側の立場も経験しました。そんな歩みの中で、中小企業にお金が流れるようなサービスを考えたいと思い始め、また投資家の方も少額で参加できるような仕組みづくりを考えたいと模索する中で、ソーシャルレンディングと出会ったわけです。

田中:私は以前、資産コンサルティング会社に所属していて、その後、投資用不動産会社でマーケティングを担当していました。その中でソーシャルレンディングのことを知り、年代的にも既にネットがインフラ化されている世代でしたが、金融ということについては、私の経験の中でまだまだ不足していたこともあり、私が子どもの頃から家族ぐるみでつきあいがあり、知り合いだった越後に話をして、ちょうどお互いのやりたいことが重なって起業に結びつきました。

――ソーシャルレンディングの中でも不動産に特化する理由は?

越後:不動産市場は全産業の国民総生産額の13%を占めており、市場規模としても2,200兆円の貴重な資産を持っているなど、もちろんビジネスの将来性という点もあります。しかし、一番大事なことはやはり投資家の保護です。不動産は実物資産ということで、投資家側からすると非常に安全性が高い投資商品になります。また、経済環境に応じて不動産も確かに上がり下がりがありますが、その上下差というのは非常に手堅いものがあります。そのあたりを重視して不動産に特化しました。

――金融庁からの認可も下り、11月19日に事業開始の告知、そして12月11日に1号案件の募集開始となりましたが、今後、具体的にはどのようなサービスを展開されていく予定でしょうか?

越後:第1号案件は、日本の経済・文化の中心に位置する中央区日本橋の不動産収益物件の修繕・改修プロジェクトを取り上げました。11月19日の事業開始リリース以降、多くの投資家の皆さまからご資金をお預かりし大変お待たせする形となりましたが、記念となる第1号案件ということで、特別に投資利回り年10%を謳った募集を行うなど、準備を重ねてきました。これを機に、一般消費者の方々にもソーシャルレンディングや弊社のことを知っていただきたいという想いで、思い切った設定を考えました。

――不動産特化型のソーシャルレンディングサービスの社会的意義をどのように考えていらっしゃいますか?

越後:日本の企業はほとんどが中小企業ですが、特に新しい会社となると社歴がない、実績がないといった理由で、どうしても銀行と取引ができないケースがあります。当然、私どものサービスでも厳密な審査は行いますが、銀行とは違った立ち位置で融資をしながら、中小企業の活性化につなげていけたらという想いと役割を自身で感じています。銀行員時代から、高いビジョンや志を持ちながらなかなか融資が受けられない中小企業というのを多数見てきましたので、そういう意味でもいい転機になればと思います。

――投資家側から見たメリットというのはどういった点にあるでしょうか?

越後:これまで、一般の投資家の資金を少額ずつ集めて投資する仕組みが身近にはありませんでした。ソーシャルレンディングサービスの仕組みを通して、一般の個人の方が少額から気楽に投資ができるというのはやはりチャンスだと思います。欧米では一般的なのですが、日本ではいろいろな条件等でなかなかできなかったという面でも喜んでいただけるのではないかと思います。少額でもいい案件に投資ができるというビジネスチャンスを我々が作ります。案件にもよりますが、投資額は1万円から可能で個人の方にも気軽に資産を増やしてもらえるチャンスではないかと思います。

――投資を受ける側の条件というのはありますか?

越後:不動産特化型のソーシャルレンディングですから、当然、不動産案件が対象条件となります。我々はご提案いただいた案件の中から、役員を含めた担当者で構成する審査委員会で、案件の整合性を見ながら、より地域活性化につながるプロジェクトを選んでいきたいと考えています。当初は関東圏の案件からですが、いずれは全国で展開していきたいです。

――ネットですべて完結するサービスということで、サイト作りで工夫されたり、苦労された点はありますか?

田中:プロの投資家や専門の投資機関をターゲットしているのではなく、一般消費者が投資家となり、企業に融資するということで、ユーザビリティーや見やすさにはこだわりました。借主の保護というのは当然ありますが、案件の透明性を高め、投資家の方には担保評価を必ず開示するなど、リスクを含めて見やすいように工夫しました。苦労した点は、投資資金の送金・出金のバックグラウンド側のシステムとの関連付けです。投資利益ということで20%の税率が天引きされることになるのですが、その部分の自動化のシステムを組むのに一番苦労しました。

――どのような層にサービスを利用してほしいですか?

越後:ネット取引ということで、投資家は30〜40代が中心になるかと思いますが、できるだけ幅広い世代に利用してもらいたいです。

田中:案件に応じて一定の利回りが決まっているので、REITと比較すると年利の変動性があまりありません。上がり下がりを日々気にせずにできる投資だと思いますので、投資の経験が今までなかった人に試してほしいです。株のような急激な値下がりなども考えにくいので、感覚的には投資というよりも資産運用という感じて捉えて始めてみてほしいです。

――今後の抱負やサービスが普及する上での課題についてお聞かせください。

越後:私どもが提供している不動産担保特化型のソーシャルレンディングというものがいかにきちっと運用されているかを一般の消費者の方にもいち早く経験してもらいたいです。大きな金額の投資でなく少額でも、ある程度の利回りが取れるということが世の中にまだまだ認知されていないので、ぜひ知ってほしいです。一方で、高い志を持っていらっしゃる中小企業の後押しをしていくということをこの事業を通じて達成していきたいと思っています。

田中:ネットサービスということで、どうしても30代前後が中心で、高く見積もっても40代以下が対象になってしまうとは思いますが、年齢層を絞っているわけではありません。資産運用というのはどの世代でも考えているはずですので、インターネットサービスという障壁を打破しながら、いかにして幅広い層に利用していただけるかを考えることが今後の課題のひとつだと思います。

(神野恵美)