吉野家の「牛丼」再値上げで、すき家はどう動く・・・

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牛丼チェーン大手の「吉野家」が牛丼(並盛)の価格を、現行の300円から380円に値上げすることで、「291円」で牛丼を販売している「すき家」の今後の動向が注目されている。

すでに関東1都6県では、「松屋」も「プレミアム牛めし」を380円で販売しており、これで大手2社が380円で並ぶことになる。牛丼「400円時代」に、すき家はどうするのか――。

円安、米国産牛肉の上昇が値上げの理由

牛丼チェーン大手3社の牛丼(並盛)の価格は、2014年3月までは280円で横並びだった。それが4月の消費増税後、吉野家は300円に、松屋は290円に値上げ。すき家だけが270円に値下げした。

ところが、7月に松屋が熟成されたチルド牛肉を使った380円の「プレミアム牛めし」を投入し、実質的な値上げを発表。すき家も8月に、牛丼(並盛)を270円から291円に引き上げた。

4月以降、価格を据え置いてきた吉野家だったが、12月17日15時から牛丼(並盛)が380円に80円値上げされ、牛丼大盛りも460円から550円に90円値上げされる。カルビ丼は490円から590円に100円の値上げとなる。値上げ幅は80〜120円と小さくなく、しかも1年足らずに2度の改定だ。

値上げの理由は、急速に進む円安と米国産牛肉価格の高騰。アベノミクスによる円安は、最近は米国景気の回復で米ドルが強いために拍車がかかっている。さらに米国産牛肉の高騰は、2012年に米国で発生した干ばつの影響で米国産牛肉の出荷量が激減。その一方でアジアの新興国をはじめ、世界的に牛肉の需要が急増したためだ。

吉野家ホールディングスの河村泰貴社長は12月9日の記者会見で、「苦渋の決断だった」と語り、「380円」という価格水準について、「調達コストの増加で年間100億円程度、相場の影響を見込んでいる。来店客数と牛肉の使用量から試算すると、現在の品質を維持するには380円程度の設定が必要」と判断したという。

とはいえ、牛丼チェーン大手3社は4月以降の値上げで、客単価は上がっているものの、客数が減少傾向にあり、それが売り上げの伸び悩みにつながっている。

吉野家の客数は、4月以降7か月連続でマイナスだったが、11月は前年同月比7.6%増とプラスに転じた。しかし、松屋は6月以降11月まで6か月連続で、すき家は8月以降5か月連続でマイナスが続いている(いずれも、既存店ベース)。

ゼンショーHD、「今のところ、値上げは予定していません」

じつは今回の吉野家の値上げについて、こんな見方がある。

吉野家は10月29日に「牛すき鍋膳」を投入。味付けを改良し、価格も米国産牛肉の値上がりを受けて「並盛」の630円に値上げしたが、なにしろ13年12月の発売からの6か月間に1400万食を売った、同社の業績改善の立役者となった大ヒット商品だ。11月の売上高や客数の増加は、わずかな期間ではあるがその効果があったというのだ。

勢い、12月17日からの牛丼の値上げによる客数の落ち込みは、多少であれば、客単価の高い「牛すき鍋」でカバーできるとの判断があったと推測しているようだ。

吉野家と松屋(プレミアム牛めし)が「380円」で並ぶことになる牛丼の価格だが、そうなると気になるのが「すき家」の動向だ。

東京都内の学生街にほど近いJR駅前のすき家を訪れた、ある男子学生は「牛丼はよく食べますよ。おいしさは大事だけど、安さもね。学生は気になります」という。

また、勤め先が近所にあるという30代後半の女性は、「時間がないとき、たまに利用します。やっぱり、安いほうがいいですよね」と話し、「できれば、(値上げは)勘弁してほしい」と漏らす。

すき家を運営するゼンショーホールディングスは「今のところ、値上げは予定していません」と、きっぱり。

円安や牛肉価格の高騰の影響は同社にも重く圧しかかっているが、「すき家はメインが牛丼ではありますが、『炭火豚丼』や『炭火旨だれやきとり丼』『鉄火丼』、『牛すき鍋定食』などの定食類と商品構成を分散しているので、その(牛肉の価格高騰)影響をやわらげることができています」(ゼンショーHD)と説明する。

値上げするにしても、そのタイミングはむずかしいのかもしれない。