キム・ギドク監督

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新作を発表するたびに「衝撃作」「問題作」という言葉が躍るキム・ギドク監督の「最大の問題作」と評される「メビウス」。監督自身が本作の発想から韓国での上映制限についてまで語ってくれた。

一切のセリフが排された本作。一見、平穏な上流家庭で夫の不貞に気づいた妻が怒りの矛先を一人息子に向け、その性器を切り取ってしまうことから、家族の漂流が始まる。

「欲望とは何か?」。脚本を執筆する上で監督の脳裏に最初に浮かんできたのはそんな疑問だった。「私は男として性器を持って生まれてきましたが、これが実に厄介なもので、いろんな葛藤を生みます。性器とは何なのか? 家族を作る道具であると同時に人を破滅に追い込むものにもなり得る。体に付いていながら独立して生きる、私の中の怪物のようなものに思え、そこを突き詰めていきました」。

そこで恋人同士の男女や単なる夫婦ではなく“家族”を物語の土台に置くところがキム・ギドクならではと言えるが「性器とそれを巡る欲望について考える中で辿り着いたのが『性器とは家族だ』という答えでした。家族とは性器から始まるものであり『欲望すなわち家族』と言い換えることもできます。それは離すことが出来ない、まさにメビウスの輪――表裏一体の存在なのです」と彼にとっては当然の帰結だったと明かす。

儒教が根付く韓国において本作はどう受け止められるのだろうか?「上映制限などの措置も含め、最初に書き始める時点で「想像もしていたし、懸念や不安はあった」というが、それでも筆を止めることはなかった。「そんな時は『映画とは何か?』という問いに立ち返ります。単なる娯楽なのか? 人間にとっての難問を解く鍵を提示する価値を持っている存在なのか? 私は後者と信じています。観客が抱えていた謎や秘密を映画を通じて解き明かすことが出来るなら、そこにキム・ギドクの映画の価値はあると思います」。

常に“問題作”“ショッキング”と評されることについては「私は常に自分にとって新しいと思えるものを題材にしています。私の目に映る新しいものは私には全て等しくショッキングなんです。とはいえ、日本は漫画などで常に世界に問題作を発信している国ですよね。あの『オールド・ボーイ』も日本が原作ですしね。そんな“ショッキング”な世界の仲間に私も入れてもらえるかと思うと嬉しいですね(笑)」。

「メビウス」は12月6日より公開。

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