栃木県にある幸福の科学学園・那須本校

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【カルトメシ】

 日本全国の不思議でディープな料理を食べ歩くこの企画。今回紹介するのは、栃木県那須町にある幸福の科学学園の食堂だ。ここは、2014年10月末に文部科学大臣から、幸福の科学大学の設置を「不認可」とされた学校法人・幸福の科学学園が運営する中学・高校。授業内容は教育基本法や教育指導要領的にマズイんじゃない? といった感があるが、食堂のメシは普通にウマかった!



 幸福の科学学園・那須本校は、2010年に開校した幸福の科学の全寮制宗教学校。新幹線2013年には滋賀県大津市に関西校も開校している。最寄りの黒磯駅までは約15kmあり、周囲には民家も少ない。2015年に幸福の科学が公開予定の映画『UFO学園の秘密』は、この学校がモデルなのだとか。

 そしてここでは、歴史の授業中に教師が「坂本龍馬の過去世は劉備玄徳」などと、歴史的な人物について大川隆法総裁の「霊言」に基づいた話をしたり、幸福実現党を賞賛する政治教育を行ったり。教育基本法や教育指導要領的に、かなりアレな授業が行われている。

生徒とともに食堂で「いただきます」



 記者がこの学園を訪れたのは、2010年。教団の広報職員に案内されながら、学園施設を見て回った。廊下には大川総裁のメッセージが書かれたポスターが張られ、教室や講堂には大川総裁を奉る祭壇が。生徒たちが寝泊まりする寮には幸福実現党の声明文が掲示され、教室では教師がホワイトボードに「尖閣」「裁判員制度」などを板書しながら授業をしている。

 この教師、授業後に、記者たちジャーナリスト一行との雑談中に、学校の教育理念について「要は幸福実現党宣言ですよ」などと言い放っていた。政治教育は教育基本法で禁じられているのだが、彼らは悪びれる様子もない。

 ひと通り見学した後、寮に隣接した食堂へ。数百人がラクラク入れる大きなスペースで、やたら天井が高く開放的だ。そんじょそこらの大学の学食より立派。生徒たちはここで、めいめいに食事を摂る。記者たちが訪れた際も、かなりの数の生徒たちが食堂の席についていた。

「私の娘もここに通ってるんですよ」

 案内役の教団広報のWさんが、嬉しそうに語りながら、食券販売機で食券を買ってくれた。記者たちが選んだのは豚のしょうが焼き定食。確か500円くらいだったと思うが、広報職員がおごってくれた。

 みんなで手を合わせて「いただきます」。品揃えは質素で、運動部の生徒などにとっては足りないのでは?とも思える量。しかし味はなかなか。バランスよく野菜も摂れて、健康には良さそうだ。

 幸福の科学では食事に関するタブーは特段ないため、食事はいたって普通。昼食前の見学では、ヤバイ学校だな〜と思える場面が随所にあったが、食堂だけは、そんな不安を忘れさせてくれた。

 気になったのは、定食についていた牛乳くらい。牛乳の名産地・那須にある学校なのに、牛乳の産地は東北産だった。栃木県を東北だと思っている人もいるようだが、ここはれっきとした関東だ。



 この食堂は、幸福の科学大学予定地の長生村の前村長も、記者たちが見学した翌年に訪れている。やはりこの食堂で食事をしたようで、視察の交通費や食費を教団から提供されたとして、村議会から教団との癒着を疑われ糾弾された。前村長は食堂の「領収書」を提示するなどして釈明したが、次の選挙で落選。いわば、政治家をひとり葬り去った、いわくつきの食堂なのだ。

 記者も食事をおごってもらったが、しょうが焼き定食ごときで買収されることもなかった。見学の2年後、記者は学園の実態を週刊誌で記事にして、学園から訴えられた。その判決は、12月12日に東京地裁で言い渡される。

 今でこそ原告・被告として争う者同士だが、いつかまた信者たちと笑いながら、あのしょうが焼き定食を食べたいものだ。

(取材・文/藤倉善郎)