来日したカイルくんとジュネ監督

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「デリカテッセン」「アメリ」など、独特のユーモアにあふれた物語を生み出してきた仏監督ジャン=ピエール・ジュネ。3Dに初挑戦した新作「天才スピヴェット」は、これまでの作品から一変し、天才少年の心の機微と成長をエモーショナルに描き出した。同作で主役に抜てきされたのは、6カ国語を操り、マーシャルアーツもこなす驚異の子役カイル・キャトレットくんだ。第27回東京国際映画祭アジアプレミアのため、来日したジュネ監督とカイルくんに話を聞いた。

10歳の天才科学少年T・S・スピヴェットは、弟の死によってバラバラになった家族のきずなを取り戻すため、生まれ育った田舎の農場から大都会ワシントンD.C.を目指す。「映画をつくる度に自分のパーソナルなストーリーを見つけるのはとても難しい」と話すジュネ監督が、ラルフ・ラーセン氏の冒険小説「T・S・スピヴェット君 傑作集」と出合ったことから、本作は動き出した。

本作は英語での製作、アメリカ風景の撮影、3D、エモーショナルな物語と新たなジュネワールドが広がる。劇中、スケッチとなって挿入されるスピヴェットの想像力が、3Dでスクリーンを飛び出し、観客は興奮に満ちた少年の脳内をのぞくことができる。子どもらしい愛嬌と大人顔負けの知識を持ったスピヴェットは、「自分もプロヴァンスの家でスケッチや物づくりをするのがとても好きだし、時には賞をもらったりもする。こうしてジャーナリストと話さなきゃいけないこともあるけど、早く家に戻って物づくりがしたいと思うところも似ているね(笑)」とジュネ監督そのものだ。

企画当初、スピヴェットは12歳の設定だったが、オーディションで抜てきされたカイルくんの実年齢(当時9歳)にあわせ、10歳に変更された。「自分がイメージする完璧なT・S・スピヴェットをベースに、2000人ぐらいのオーディションをしたんだ。やっと出会ったのがカイルだったんだけど、イメージとはちょっと違っていたんだよね。でも、カイルが素晴らしい才能のある役者で、僕のスピヴェットにつながった。だから、自分がイメージしていたスピヴェットをカイルに寄せていったよ。原作にも脚本にもないロシア語を話す場面や、マーシャルアーツで格闘する場面を取りいれたりね」。そして、弾けるようなパワーと魅力にあふれたオリジナルのスピヴェットが完成した。

長編映画デビュー作にして、主演の大役を務めたカイルくんは「とってもとっても楽しかったよ! T・Sが僕と同じように科学が好きで、(劇中でマーシャルアーツなどを)やれるって知ったときは本当にうれしかったんだ」と満面の笑み。ジュネ監督とともに台本の読みこみやテストを重ねて撮影に臨み、電車に飛び乗るシーンや警官からの逃亡劇などほとんどの場面でスタントも自らこなした。ジュネ監督は「初長編作品ということだけではなく、作品のすべての荷が彼の細い肩にかかっていたんだ。でも、つらそうな顔や疲れた顔を見せることは一切なくて、常に強かったよ」と役者魂に舌を巻く。

語学に長け、格闘技では子どもを対象にした総合格闘技の世界チャンピオンに3年連続で輝くなど、スピヴェット顔負けの天才ぶりを発揮するカイルくん。スピヴェットと同様に「ガジェットが好き!」と目を輝かせ、「この映画が大好きで泣いちゃった。何回見ても新しくて面白い発見があるんだよ。ジュネ監督と仕事をできたことが1番うれしかったな」。ジュネ監督も「スピヴェットと同じで嘘をつくのがうまいね(笑)。でも、スピヴェットより勇気があって、とにかく好奇心旺盛。(劇中で旅に持ち出す)スーツケースの中身にも興味津々で、撮影の寸前まで小道具とかで遊んでいた。そんなこと子どもにしかできないよね」と和気あいあいとした空気の中、強いきずなを見せた。

「天才スピヴェット」は、11月15日から全国で公開。

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