海外移籍も噂される武藤には“現役慶大生”というキャッチフレーズが付いてまわるが、ピッチ内での活躍こそが重要だ。 (C) SOCCER DIGEST

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※週刊サッカーダイジェスト11.18号(11月5日発売号)より
 
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 シーズンも大詰めを迎えるなか、来季に向けた補強の動きも少しずつ出てきたようだね。
 
 報道によれば、FC東京がフロンターレの大久保の獲得に乗り出しているらしい。逆にフロンターレはFC東京の渡邉に興味を示しているというけど、まさに“物々交換”だね。こういったやり取りはチームを強化するうえでプラスになるのか疑問に思うし、両クラブにどんな意図があるのか、今ひとつ見えてこない。
 
 例えば、大久保を出さずに渡邉を補強するといった動きなら分かるけど、同じポジション同士で誰かを加え、誰かを放出するような補強策ではいったいどれだけのプラスがあるのか。フォルランを手に入れて、柿谷を移籍させたセレッソは今、どうなっているのかな。フロンターレにしても、渡邉をリストアップしているのが事実なら、大久保への評価が推察できるし、ふたりとも代表選手でもないだけに、話題性にも乏しい噂だね。リーグで優勝するための戦力アップとはとても思えない。
 
 大久保はたしかにいい選手で、今季もコンスタントにゴールを重ねて、代表に推す声もあるけど、彼は日本でチームのタイトルを勝ち取ったことがない。渡邉も目立った成績を残せてなくて、その点を考えても、狙いが不透明な“トレード”だよ。仮に希望どおりに移籍を成立させたとしても、それだけで終わりにせず、もっと精力的な動きを見せてほしいね。
 
 いずれにせよ、今のところは目を引くようなニュースはない。欧州組の誰かを呼び戻すとか、現代表選手を獲りに行くとか、そういう噂が聞こえてくれば、新シーズンに向けて本気でチーム作りをしているなと感じるんだけど。
 
 その一方で、また新たにJリーグを飛び出す日本人選手がいるかもしれない。FC東京の武藤も将来的には海外でのプレーを目指していると聞く。ただし現時点ではそこまでスーパーな選手ではないと思うから、噂に挙がっているクラブが本当のところはどういう思惑で動いているのか注視すべきだろうね。
 
 話は逸れるけど、ひとつ気になるのが、彼がメディアで取り上げられる時のキャッチフレーズ。“現役慶応大4年生”って、それは一プロ選手に必要ある? こういった風潮を見ても、日本人は学歴が本当に好きなんだなと改めて思うよ。
 
 プロ野球界でも、京大生が初めてドラフトで指名を受けたとかで注目を集めていたけど、プロスポーツの世界で大学がどことか、関係ないでしょ。ネイマールもメッシも大学に行ってないよ。学歴が取り上げられる意味が分からない。
 
 クラブに就職するわけじゃないし、ピッチ上の実力で評価される世界なんだから。有名大学出身とか、学歴で判断されるのであれば、大卒は高卒の選手からは絶対にポジションを取らないとダメだよね。
 
 武藤からしても、迷惑な話かもしれない。実力で評価してあげるべきだ。代表でもクラブでも、そこまでの実績を残しているわけでもないのに、周りは騒ぎ立てる。それを鵜呑みにして海外に行けば、あまり多くを期待できないだろうね。
 
 誰もが認める実力があれば、学歴なんて関係なくなるんだ。でも日本では、両手首に腕時計とか、高価なサングラスとか、そうした“付加価値”を付けてヒーローに仕立てたがるからね。
 
 武藤以外でも、アントラーズの柴崎に関しては、聞くところによれば代理人がイタリアに売り込みをかけているようだけど、この間のブラジル戦を見ても、もう少し世界のレベルに近づいてから海外に行ったほうがいいんじゃないかな。まだ時期尚早な気がするよ。