審査委員長を務めたジェームズ・ガン監督

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米仏合作「神様なんかくそくらえ」が東京グランプリと最優秀監督賞の2冠、「紙の月」が最優秀女優賞(宮沢りえ)と観客賞をダブル受賞して幕を閉じた第27回東京国際映画祭。コンペティション部門の審査委員長を務めた米のジェームズ・ガン監督が、出品作の傾向や審査結果を講評した。

東京ではグランプリと監督賞が同一作品に贈られるのは2年ぶりだが、昨今の映画祭ではより多くの作品に賞を与えようという意図で別々の作品になることも多い。だが、ガン監督はこれに異議を唱える。そして、韓国のイ・ジェハン監督やシンガポールのエリック・クー監督ら今年の審査員の構成も影響したという。

「アカデミー賞で時々、作品賞と監督が別の作品になった時はいら立ってしようがない。とても嫌な気分になるんだ。今回のメンバーは6人中5人が監督だったので、ハナからそういう議論はなかった。本当にいい作品にできるのは、やはり監督の腕。皆同じ気持ちだったよ」

15本のコンペで頂点を極めた「神様なんかくそくらえ」は、ニューヨーク出身の新鋭ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟監督の作品。主演女優でもあるアリエル・ホームズの実体験を基に、ドラッグに依存する若者たちの姿を描いた。選考は満場一致ではなかったそうだが、作品からほとばしる“熱”が審査員たちの心を震わせた。

「人間の葛藤(かっとう)を非常によく見せている。僕と何人かは、この作品が持っている情熱は他の作品とは比べものにならないという意見になった。多数決は取っていないけれど、もしやっていてもこの作品になったはず」

日本人女優として11年ぶり4人目となる女優賞の宮沢についても、称賛を惜しまない。審査員特別賞に輝いたブルガリア・ギリシャ合作「ザ・レッスン 授業の代償」のマルギタ・ゴシェバも有力だったそうで、結果が逆になる可能性もあった。

「宮沢りえさんは素晴らしかったし、映画もとても気に入った。『紙の月』がグランプリでもいいのではという声もあった。りえさんは、映画を支え引っ張っていくことのできる演技力を持っている女優。『レッスン』の彼女と2人がずば抜けていた。結果的には雨降って地固まった感じかな」

ただ、カルト系監督として鳴らしているだけに、個人的にはフィリピン・独合作で浅野忠信主演の「壊れた心」がお気に入りだったと本音も吐露する。

「あそこまでクレイジーなことをするなんて、すごく笑った。クリストファー・ドイルの撮影もすごい。自分のマインドがぶっ飛ぶような映画だった」

審査委員長としては、グランプリの両監督ら製作チームにトロフィを渡した瞬間がハイライトだったと振り返る。それ以上に15本を通して映画監督として刺激を受け、今後の創作活動への大きな糧を得たことも収穫だったと強調した。

「『神様なんかくそくらえ』からは多くのインスピレーションを得たし、『草原の実験』の撮影も素晴らしい。やはり僕は審査員ではなく映画監督。今度の自分の映画に使える、盗み取れるようなものがないかという監督の目線で見ていた。『レッスン』のラストシーンは、今年の中でもっとも心をつかまれたし、『来るべき日々』の葬式のシーンはどこかで使ってみたいね」

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