ピーター・ボグダノビッチ監督

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御年75。だが作品からは“老いの境地”など全く感じられず、むしろ若々しさと笑いがあふれている。名作「ペーパームーン」、オードリー・ヘップバーンの最後の主演映画「ニューヨークの恋人たち」などを手がけたピーター・ボグダノビッチ。最新作「シーズ・ファニー・ザット・ウェイ」を携え第27回東京国際映画祭を訪れた巨匠に話を聞いた。

自身の妻を主役にした舞台を控える演出家が娼婦と一夜を共にするが、実は女優の卵で、その公演のオーディションに合格してしまう。そこから思いも寄らぬ騒動が繰り広げられる。

オーウェン・ウィルソン演じる演出家は、娼婦のイジーに夢を追うことを説き多額の金を渡すが、これはボクダノビッチ監督自身の体験に着想を得たもの。「70年代にシンガポールで、娼館を舞台にした作品を撮ったんだけど、そこで実際に娼婦たちと話をする機会があり、『故郷に帰りたい』と言う娼婦たちにお金を渡して、家に帰したことがあったんです。その経験を元にしていますが、それ以外はほぼフィクション。決して自伝的映画ではないよ」と語る。ちなみに、自らが身を置くショービジネスの世界を舞台にしたのは「ヘミングウェイが『自分がよく知っていることを書きなさい』と言っているから」。

長年、コメディを作り続けてきたが、根幹にあるのは「人を笑わせたい」という思い。「小さい頃から人を笑わせるのが好きでした。両親がいつも悲しそうな顔をしていたので、笑顔になってほしかったんです。実はコメディを作るのはドラマを作るよりも難しいこと。多くの人はそう思っていないけれどね。『玉ねぎは人を泣かせることが出来るけど、人を笑わせる野菜はない』という言葉の通りです」。

一方、現代のハリウッドのコメディ映画については「下品になってしまった」と嘆く。「体液に頼るようなコメディが増えて、安っぽくなってしまいました。ジッパーに物が挟まったり、髪の毛に精液がついたり、私はそういうのを面白いとは思いません。30年代、40年代のアメリカの素晴らしいコメディの伝統が失われつつあると思います」。

年齢を重ねることは「あまり楽しいとは言えないね。経験は増えたかもしれないけど」と吐露する。少し足を悪くしたが、いまでも現場で俳優と直接話をし、自ら実演付きで演技の方向性を伝える。そうしたコミュニケーションが映画作りで最も楽しい瞬間だという。「その通りにやってほしいという意味ではなく、アイデアやニュアンスを示すんだ。今回のオーウェンは自分から『どんな感じでやろうか?』と聞いてきたよ。非常に近い関係の中で芝居を作り上げていくことができたね」。

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