メディアには報じられないが、いま、この国では知られざる赤ちゃんの重大な医療事故が相次いでいる。

「また新たな『完全母乳』と『カンガルーケア』による赤ちゃんの事故が起きてしまった。早くこの国のお産を変えなければ子供たちは大変なことになります」

 そう語るのは久保田史郎・久保田産婦人科麻酔科医院院長(医学博士)だ。これまでに約2万人の赤ちゃんを取り上げ、出生直後の新生児の体温や栄養管理を長年にわたって研究し、国(厚生労働省)が推進する「完全母乳」「カンガルーケア」「母子同室」という出産管理が赤ちゃんを危険にさらしていると強く警鐘を鳴らしてきた。同業の医師たちも認める名医であるが、同時に“業界”の常識を真っ向から否定する風雲児でもある。

 事故は今年4月に東京都内のある総合病院で起きた。元気に生まれた男児の容体が34時間後に急変し呼吸が停止、NICU(新生児特定集中治療室)に搬送されて一命は取り止めたものの、重大な後遺症を負った。

 体重3300グラムの新生児に最低限必要なミルク(母乳)は1日約240ccとされる。この男児が生後34時間に与えられた栄養はわずか「30cc」のみ。10分の1以下だった。男児の父親から相談を受けた久保田医師が語る。

「この男児は栄養不足で深刻な低血糖状態に陥ったと考えられます。低血糖症が進めば無呼吸や心肺停止に陥ってしまいます。

 出産直後、母親の母乳はほとんど出ません。赤ちゃんに必要な量が出るのは平均して3〜5日目から。しかし、完全母乳を推奨する医師や助産師の多くが『赤ちゃんは3日間分の栄養を体の中に持っているので大丈夫』と信じて母乳以外与えようとしないため、深刻な栄養不足に陥るケースがある。しかも出産直後で体力が奪われた母親に管理を任せっきりの母子同室も行なう。母親に赤ちゃんの小さな異変を見逃すなというのも責任転嫁ではないでしょうか。

 これほど危険なのに日本の産婦人科や助産院の多くが赤ちゃんには一滴も人工乳や糖水を与えないという『行きすぎた完全母乳』をいまだに正しいと信じ込んでいる。だから同じような事故が繰り返されてしまうのです」

 生まれたばかりの赤ちゃんを母親の胸に抱かせて管理させる「カンガルーケア」(早期母子接触)と人工乳を一切与えないで育てる「完全母乳」、そして新生児室ではなく出産直後から母親の側で添い寝させる「母子同室」の3点セットが、厚生労働省が国策として推進してきた新生児管理だ。久保田医師が「赤ちゃんを危険にさらしている」と警告するこの3点セットは、いまだに多くの病院や産院で実践されている。男児の父親は語る。

「病院側の説明は『低血糖』など栄養不足を否定し、原因不明の呼吸停止による乳幼児突発性危急状態(ALTE)と主張し原因不明といわれました。しかし、せめて病院側が必要な経過観察を行なっていれば事故は防げたはずです。

 誰よりもつらい思いをしているのは息子です。こんな悲しみは私たちの子供で最後にしてほしい。日本全国のすべての病院やクリニックで改善や対応に取り組んでいただくことを切に願います」

※週刊ポスト2014年11月7日号