イチローは来季、どこのユニフォームを着てプレーするのだろうか【写真:田口有史】

イチローの所属先候補として挙げられた4球団

 大記録に到達するとき、日本が生んだ安打製造機はどのチームのユニホームを着ているのだろうか。ヤンキースのイチロー外野手の去就が、米国内でも注目を集め始めている。メジャー通算3000本安打まで156本、そしてピート・ローズが保持する歴代最多安打(4256本)までは日米通算で残り134本まで迫っており、来季所属するチームによって、達成までのスピードも変わってくるだろう。

 米国内の報道では、早くも4チームの名前が挙がっている。ヤンキース、マリナーズ、パドレス、メッツ。まだレギュラーシーズンが終わってから1週間も経過していない段階だが、本当にその可能性はあるのだろうか。

「もしヤンキースが間違ってイチローと再契約しないなら、メッツが狙うべきだ」。

 こうタイトルを付けて報じているのは、CBSニューヨークだ。記事では、かつて10年連続シーズン200安打を放ち、10年連続ゴールドグラブ賞に輝いたイチローが「野球史上トップ50に入る選手」と言及。その上で「往年の彼でなくなったにせよ、イチローは(今季のヤンキースで)受け取るにふさわしい敬意を受けていなかった」としている。

 イチローは今季、外野手の5番手という厳しい立場で開幕を迎えた。序盤は代走や守備固めでの出場が多く、不規則な出場機会に備えなければいけなかった。先発出場しても、相手が左投手に代わると、代打を出されることもあった。

「ここで多くのことを経験できたし、それらは全て良いものでした。たくさんのポジションをプレーしました。(球場に来るまで)ラインナップにいるかどうか分からなかったから、準備しなければいけませんでした。10-0の試合で守備(固め)で起用されました。若いころに戻ったみたいでした。もう1回訓練を受けているみたいだ、と言ってもいいんじゃないでしょうか」

 球団公式サイトによると、シーズン最終戦の日に、イチローは今季の経験について通訳を介してこう語っている。CBSニューヨークの記事にあるように、その起用法は、確かにイチローほどのキャリアを誇る選手には適当ではなかったと言えるかもしれない。

「イチローは、1年を通して実質的に生産的だったにもかかわらず、トレードの噂と、ラインナップで彼が受けた尊敬の欠如によって、確かに浮足立っただろう。多くの識者が彼を老いた人やトレードされる人として片づけた中、現実では彼は生産的で、フィールド上やベース上では他のヤンキースレギュラーよりも若く見えた」

 記事ではこう表現している。さらに、カルロス・ベルトランやシーズン途中で戦力外となったアルフォンソ・ソリアーノが期待はずれの成績に終わったことを指摘。ジャコビー・エルズベリーは及第点の活躍だったものの、ブレット・ガードナーは後半に失速したことにも触れている。

「ヤンキースが契約しようとしないなら、それはミステイクだ」

 そんな中で、イチローは最終的に打率2割8分4厘をマーク。7月に2割2分4厘とスランプはあったものの、8、9月は3割1分2厘と好成績を締めくくったことを紹介。そして、こう評価している。

「イチローは以前ほどではないにせよ、まだ打てる。以前ほどではないにせよ、走ることができて、18回中15回盗塁を成功させている。彼はかつてのスパイダーマンではないが、良から優をつけられる守備的な外野手だ。いまだにとてもいい肩を持っている」

 その上で「ヤンキースはもう1度、2年契約をイチローと結ぶべきだ」と提言。一方で、この選択肢が実現する可能性は、現時点では不透明であることも事実。「ヤンキースは彼に帰ってきてほしくないようだ。もしかしたら、イチロー自身がヤンキースからアンフェアに扱われたと感じて自ら去るかもしれない」として「ヤンキースが契約しようとしないなら、それはミステイクだ」とまで記している。

 では、ヤンキースと再契約しなかった場合、どんな可能性があるのか。CBSニューヨークは、同じ大都市を拠点とするメッツをイチローの新しい所属先の候補として挙げている。

 メッツのサンディ・アルダーソンはOBP(出塁率)の高い選手を好む傾向にあり、イチローはその条件には当てはまらないとしつつ、若手の多いメッツにおいて、イチローはクラブハウスにおいても重要な存在になるとしている。

 また、仮にイチローと契約することができれば、メジャー3000本安打、そしてピート・ローズ超えという2つの歴史的瞬間を目の当たりにすることができるのは間違いない。それだけでも、球団や選手にとってはプラスになるというのだ。

「ニューヨークの1、2チームが、史上最も偉大な野球選手の一人であるイチローと契約することを願って」

 記事の最後はこんなことばで締めくくられている。

 一方で、球団公式サイトでもイチローの特集記事を掲載。「イチローは3000安打に残り156本と迫りながらメジャー14季目を終えた。本人は来年も選手を続けることを希望しているが、大リーグチームのどこが彼に機会を与えるか定かではない」との書き出しで現状を説明し「イチローに興味を示すチームは少ない」と記している。

 そんな中で、獲得に動く可能性があるチームとして真っ先に挙げられているのが、ナ・リーグ西地区のパドレス。「パドレスのA.J.プレラーGMはイチローに心酔しており、イチローはパドレスにフィットするだろう」としている。プレラーGMは8月にGM補佐から昇格したばかりの人物だ。

古巣のマリナーズ復帰の可能性も

 この記事を執筆したベテラン記者のバリー・M・ブルーム氏は、イチローに対してパドレスが本拠地を置くサンディエゴでプレーしたいかを聞いている。その答えは「サンディエゴを嫌いな人なんてそんなにいないと思うけど」だったという。カリフォルニア南部にあるサンディエゴは温暖な気候で、町並みもきれいだ。日本人が住むには快適な環境と言える。

 また、記事では古巣のマリナーズに復帰する可能性についても言及。「イチローは11年と半年プレーしたマリナーズに戻るかもしれない」としている。

 復帰すればファンが熱狂的に迎えることは間違いない。また、昨オフにヤンキースからマリナーズに移籍し、チームをプレーオフ進出争いに牽引したロビンソン・カノは、イチローと仲がいいことで知られている。素晴らしい環境が整っているともいえるが、どうなるだろうか。

 そして、この記事でもヤンキースとの再契約の可能性について記されている。ただ、仮に残るとしたら、条件は厳しくなることが確実だ。

「2012年に2年契約を1300万ドル(約14億円)で結んだのはヤンキースだ。もし彼がヤンキースともう1度契約するなら、もっと低い額になるだろう」と伝えられているように、当時とは違い、今オフに契約するとなれば、ヤンキースは完全に控え外野手としての額を提示してくるはずだ。となると、1年650万ドルという年俸は確かに高すぎる。

 CBSニューヨークの記事でも指摘しているように、イチロー自身の思いも重要になる。ヤンキースとの再契約については、本人は「今はなんとも言えません」と答えたという。

「果たして彼に機会を与えるチームはあるのだろうか?」

 こちらの記事の最後は、CBSニューヨークと対照的な言葉で締められている。

 大記録達成を目前に控えている偉大なプレーヤーの未来に、日本だけでなく、米国でも注目が集まっている。この先、どのような結果が待っているのだろうか。