韓国で活動する北朝鮮スパイ集団を描く『レッド・ファミリー』/[c]2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

写真拡大

韓国映画界を代表する鬼才、キム・ギドクが製作と脚本を務め、彼の秘蔵っ子であるイ・ジュヒョンが監督した映画『レッド・ファミリー』(10月4日公開)。昨年の第26回東京国際映画祭のプレミア上映で支持を集め、観客賞に輝いた一作だ。韓国で活動する北朝鮮スパイ集団を描く本作だが、彼らは、同系の映画では描かれなった意外な方法で韓国に潜入している!?

【写真を見る】祖国に敬意を表し、「朝鮮民主主義人民共和国、万歳!」と合唱/[c]2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

「007」や「ミッション:インポッシブル」シリーズなど数多くの名作が存在するスパイ映画。“北朝鮮スパイもの”に限定しても、『シュリ』(00)や『二重スパイ』(03)など南北問題を扱った作品から、激しいアクションが展開する『ベルリンファイル』(13)まで、描き方はさまざまだ。そんななか、『レッド・ファミリー』で登場するのは、暗殺もいとわない“仕事人”でありながら、仲睦まじい家族のフリをしている一風変わったスパイたちだ。

「ツツジ班」と呼ばれるこのスパイ集団は、素性を隠すために理想的な家族として韓国に潜入している4人組。なかでも、このニセ家族で妻の役割を演じてるベク(キム・ユミ)が強烈で、他のスパイが不平や不満を口にすると「それでも工作員か!」「我ら朝鮮は決して堕落してはならない!」と檄を飛ばし、ビンタをお見舞いするほど。一見するとおしとやかな美人妻だが、驚くほどの豹変ぶりを見せる。

彼らの主な仕事は、北朝鮮にとって都合の悪い脱北者や政治犯を“始末”すること。同じく韓国に潜伏している北朝鮮スパイに監視されているため、決して失敗は許されない。いざ指令が下ると、テキパキと任務をこなし、あっという間に“始末”が完了。その功績を評価されると、軍服に着替えてささやかな表彰式を行い、「朝鮮民主主義人民共和国、万歳!」と合唱するなど、祖国に敬意を表する。家の外ではほのぼのとした家族を演じているだけに、このギャップは衝撃的だ。

斬新な設定でスパイを描き、“北朝鮮スパイもの”に新機軸をもたらした『レッド・ファミリー』。物語が進行するにつれ、任務遂行を是とする「ツツジ班」に変化が生じ、ニセ家族という設定を乗り越えて本物の家族になる過程は感涙必至だ。この異色スパイ映画をぜひ劇場でチェックしてほしい。【トライワークス】