【米国はこう見ている】黒田博樹はヤンキースで唯一年俸以上の働き!? 現地メディアが算出

「銀行貯金か、金をドブに捨てたか?」
2シーズン連続でプレーオフ進出を逃したヤンキースにおいて、年俸の高い主力の費用対効果を試算する特集を地元メディアが展開し、今季限りで契約満了となる黒田博樹投手がヤンキースで唯一給料以上の働きをしたと分析されている。
ESPNが「銀行貯金か、金をドブに捨てたか?」という見出しで特集。ここでは選手の年俸とWAR(Wins Above Replacement)というセイバーメトリクスによる指標に基づき、適正年俸を独自に算出している。
WARとは打撃、守備、走塁、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標で、そのポジションの代替可能選手と比較し、どれだけ勝利数を上積みしたかを表すもの。
ヤンキースは今季84勝78敗でシーズンを終了。ア・リーグ東地区2位だったが、同地区を制したオリオールズにゲーム差12と圧倒的に離された。総得点は633点でリーグ15チーム中13位。得失点差は−31で、ピッチャー陣を見殺しにする試合展開も多かった。この特集では開幕から所属し、年俸1000万ドル超えの選手が対象となっている模様で、イチロー外野手や、デリン・ベタンセス投手ら若手は登場していない。
1番手に登場しているのはマーク・テシェイラ一塁手。今季開幕前に手術した右手首の痛みから戦線離脱を繰り返し、指名打者に入る試合も多かった。123試合出場で打率2割1分6厘と不調をかこった34歳の今季年俸は2310万ドル(約25億円)でWARは0・7。記事では同選手に関して適正年俸を390万ドル(約4億2000万円)と厳しい評価を下している。テシェイラは2016年シーズンまで契約を残している。
2番手は右膝の手術で開幕後、ほどなくして今季絶望となったCC・サバシア投手。寸評では「過去40試合の先発で257イニングを投げ、防御率は4・87。被安打は282本で38本塁打を浴びている」とエースの近況を説明。衰えの目立つ左腕だが、2017年までの長期契約を結んでいる。今季年俸は2300万ドル(約25億円)、WARは0・1。一方、適正年俸は80万ドル(約8600万円)で給料の3%程度の働きだったと算出されている。
「田中が今季30試合程度先発したなら、年俸を軽く超える働きだった」
3番手には前半戦で12勝を挙げる活躍で、一時はサイ・ヤング賞有力候補と呼ばれた田中将大投手が登場。田中は今季13勝5敗で防御率は2・77と優秀な成績を残したが、7月8日のインディアンス戦後に右肘靭帯部分断裂が判明し、約2か月半の間、リハビリの日々を送った。
寸評では「もし田中が今季30試合程度先発したなら、彼のルーキーシーズンの年俸を軽く超える働きだった。しかし、ケガが……。トミー・ジョン手術が最終的に必要になるのだろうか?」とし、故障離脱の痛手を指摘している。
WARは3・2と優秀な数値だったが、今季年俸2200万ドル(23億7600万ドル)に対し、適正年俸は1750万ドル(約19億円)とマイナス査定となっている。
4番手に掲載されているのは今季、宿敵レッドソックスからFAで移籍してきたジャコビー・エルズベリー外野手。打率2割7分1厘で39盗塁という成績で「エルズベリーのピンストライプの1年目は大まかに成功だった」と評されている。
ここまで故障の多かったエルズベリーだが、今季は離脱が少なかったことも評価されている。打者とはいえ、WARも3・6と田中をしのぐ数値で、今季年俸は2110万ドル(約22億8000万円)だが、適正年俸は2000万ドル(21億6000万円)とほぼ給料通りの働きをしたと評価されている。
続いて分析されているのは、ブレーブスからFAで加入したブライアン・マッキャン捕手。寸評では打者有利とされるヤンキースタジアムでホームラン量産を期待されたマッキャンが23本塁打を放ったものの、打率2割3分2厘に終わった点を厳しく指摘。2019年まで契約を残すために「もっと適応し、2015年に巻き返してくれることを願う」と今後の奮起を切望している。今季年俸は1700万ドル(約18億3000万円)でWARは2・3、一方、適正年俸は1280万ドル(約13億8200円)とマイナス評価となっている。
黒田は唯一給料以上の働き「抜群の安定感」
辛口評価が続く中、今季契約が満了する黒田は絶賛されている。今季11勝9敗で防御率は3・71。
寸評では「彼がこのリストのヤンキーの中で給料以上の働きを見せた唯一の存在。健康を維持し、32試合に先発し、抜群の安定感を誇った。彼は引退してしまうのか?」とし、ヤンキースの先発ローテーションを唯一開幕から最後まで守り抜いた鉄腕を高く評価。去就問題に揺れるベテランの来季現役続行を祈るかのように締めくくっている。
黒田は今季年俸1600万ドル(17億2000万円)で、WARはエルズベリーにわずかに劣る3・5。対して適正年俸は1920万ドル(約20億7000万円)と算出されており、無事これ名馬を地で行く、安定感抜群のベテラン右腕は実際の年俸より3億5000万円以上の価値のある仕事ぶりを見せたとされている。
今季カージナルスからFAで加入したカルロス・ベルトラン外野手は“ヤンキース最大の失望”となった。寸評では「ベルトランは壊滅的なシーズンを送った。ケガに苦しんだ」と酷評。右肘骨棘障害のためにオフに手術を受けることになったスラッガーは勝負強さを誇った昨季から一転、打率2割3分3厘と低迷した。
記事では「彼は健康を取り戻せるか。過去2年間カージナルスで活躍したかつての自分を取り戻せるか。契約は2016年まで」と復調を期待。ベルトランの今季年俸は1500万ドルでWARは−0・5。適正年俸はマイナス270万ドル(マイナス約2億9000万円)と衝撃の算出となっている。チームに多大な損害を与えたということなのか。“給料泥棒”という批判を遥かに超越する低評価を受けてしまった。
今季限りで現役を引退した英雄、デレク・ジーター遊撃手も厳しい批判から逃れることはできなかった。
寸評では「全体的にジーターの2014年シーズンは活躍具合という観点から忘れさられるべきものとなった」と指摘しており、打率2割5分6厘や長打率の低さなどを紹介している。WARは−0・1。今季年俸は1200万ドル(約13億円)だが、適正年俸はベルトランに続き、マイナス30万ドル(マイナス3240万円)と“罰金査定”を受けている。
この高給8選手の合計年俸は1億4820万ドル(約151億2000万円)。一方、適正年俸は7120万ドル(約76億8960万円)と算出され、投資額の半分程度の働きと厳しい分析結果となっている。