ベネチア映画祭に参加したルイ・ガレルとアナ・ムグラリス(C)la Biennale di Venezia

写真拡大

ルネサンスの彫刻を思わせるような整ったマスクで、フランスではとくに年上女性キラーと目される31歳のフランス人俳優ルイ・ガレル。かつてヌーべルバーグの子供と言われたフィリップ・ガレル監督の息子であり、現在はヴァレンティノ初のメンズ用フレグランス「ヴァレンティノ ウオモ」のモデルも務める。そんな彼が父の監督作に主演した新作「ジェラシー」が9月27日日本で公開になる。(取材・文/佐藤久理子)

実は6歳のときに父の長編「Les Baisers de secours」に顔を出したのが、ルイの映画デビュー。その後「恋人たちの失われた革命」(2005)以来、ずっと父の作品に主演してきた彼にとって、映画はいわばファミリー・ビジネスのようなものだったという。

「僕の祖父(モーリス・ガレル)も俳優で、父は彼を通して芝居のことを学んだ。僕自身もコンセルバトワールで教師をしていた父のもとで演技を学び、その映画を見て育ったから、父の作品に出るのは他の監督の作品とはやっぱり異なるものがある。だからといって、特別扱いされたことはないけどね(笑)」

「ジェラシー」のストーリー自体も、フィリップが自分の子供時代を基に作ったという。ルイが演じる主人公は祖父モーリスがモデルであり、彼が自分の子供の母親を捨て他の女性に走ったゆえの悲劇を描く。もっとも、そこには告発めいた感情はなく、あるのはむしろ甘いノスタルジーと詩情に満ちたメランコリーだ。そんな映画のトーンを、父に代わって彼はこう語る。

「フィリップはリアリスティックなものを求めているわけではない。彼にとって大切なのは“人生のひとときに忠実である”こと。それはリアリティを描くということとも異なるんだ」

フィリップはいまもヌーべルバーグの継承者と目され、作家主義映画の代表のように目されているが、ルイの場合はそこに現代っ子らしいインターナショナルな視点が加わる。

「作家主義映画と一口に言っても、誰も見たがらないような退屈な作品もあるだろう。フランスでは商業的な作品は作家主義映画と認められない傾向があるけれど、僕にとってはウェス・アンダーソンもマーティン・スコセッシもウッディ・アレンも作家主義映画の手本だ。僕自身、俳優としてそういうタイプの監督たちのパーソナルなビジョンの一役を担いたいと思うし、自分で映画を撮る場合もそんな作品を作っていきたいと思う」

その次回作は、ベルトラン・ボネロ監督による伝記映画で、デザイナー、イブ・サン・ローラン(ギャスパー・ウリエル)が熱をあげるデカダンな恋人に扮した「サン・ローラン」。さらに10月からは、自身の初長編監督作の撮影に入るという。題材は「パーソナルな物語」というから、その仕上がりが今から楽しみだ。

■関連記事
「ジェラシー」作品情報
ルイ・ガレル人物情報
フィリップ・ガレルの愛の世界を専門家がラカンの視点で語る
青山真治監督、孤高の映画作家フィリップ・ガレル「愛の残像」を語る
濃密な愛を描くフィリップ・ガレル監督「愛の残像」「灼熱の肌」予告編公開