ジャズベーシストとして世界を飛び回るカイル(上・撮影場所:ブルーノート東京 Bar BACKYARD)と「ビュー・フロム・ヒア」(下)撮影場所:ブルーノート東京 Bar BACKYARD

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1960年代、ザ・ビートルズが登場する以前に世界を席巻した伝説的ポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の夢と挫折、そして友情を軽やかに描いた巨匠クリント・イーストウッド監督の最新作「ジャージー・ボーイズ」が9月27日より日本公開となる。それに先駆け、父親のクリントとともに劇中の音楽を担当したジャズミュージシャンのカイル・イーストウッドが自らのライブのために来日。同作での仕事について振り返ってもらった。

「僕自身が音楽をやっているから、父がミュージシャンの起源を描くストーリーを撮ると聞いて、すぐに興味がわいたよ。父の影響で、子どもの頃から自分が生まれる前の音楽が好きだったので、ザ・フォー・シーズンズはよく聞いていたし、いい映画になると思ったね。実際、ボブ・ゴーディオ(ザ・フォー・シーズンズの作曲担当)は本当に優れた作曲家だし、彼の楽曲と高く美しい声で歌うフランキー・バリのコンビネーションが、彼らを最高に素晴らしいグループにしていたんだと思うね」とイーストウッドは言う。

同作はクリントが33本目の監督作にして初めて挑戦した、大ヒットミュージカルを原案とした作品。ザ・フォー・シーズンズの楽曲がすでに存在し、その楽曲を中心に脚本が構成されているため、カイルとクリントの作曲家としての仕事は劇中のスコアのみだった。

カイル・イーストウッドは、「基本的にはボブ(・ゴーディオ)が作曲したザ・フォー・シーズンズの音楽がミュージカル部分の基盤となっているので、僕らが担当したのはドラマ部分の“つなぎ”のための音楽だけ。僕としては自分の役割は、映画の中でつづられる感情を音楽で伝えることなので、そこであまり大袈裟なことをしてはいけないという思いが創作中いつもある」と今回のコンセプトを語る。そして、「特に父の演出方針として、過度なものは必要ないというのがあるので、音楽を使って感情表現を操作してしまうようなことは避けたいと思っているんだ。とはいえ、場面を盛り上げるために中にはザ・フォー・シーズンズのポップソングの要素を自分の曲のモチーフとして使ってアレンジしたものもあったけどね」と、父クリントの演出意図までを踏まえて、創作の意図を振り返った。

03年の「ミスティック・リバー」以降、本格的に父親の監督作に楽曲を提供するようになったが、父の仕事ぶりを「客観的に見ても、彼はいい監督だよ(笑)」と息子は言う。

「父の監督としての強みは、キャストのみならずスタッフも含め、役割に応じて最高のキャスティングをするところかな。無理に人を選んで、その人らしくない部分や仕事を強要してしまうことがまったくない。だから俳優も無理をすることなく自然な演技が出来るし、スタッフもストレスを感じずに心地よく仕事できるんだと思う」と名匠と呼ばれる手腕の秘密を明かし、「僕自身も、父との仕事は創作の自由を感じられる場所なので楽しいよ。そういった環境作りは映画製作のような感情を扱う仕事ではとても重要なことなので、その点で、父は監督として素晴らしいね」と、仕事のパートナーとして受ける刺激について語った。

現在はフランス・パリを拠点に、人気ジャズベーシストとして世界中のライブハウスを飛び回る一方で、「硫黄島からの手紙」「インビクタス 負けざる者たち」のサウンドトラックを手がけ、「グラン・トリノ」でゴールデングローブ賞最優秀主題歌賞のノミネートを受けるなど、作曲家としても着実に地位を固めている。パフォーマーと作曲家それぞれの仕事が、「自分自身にとって欠かせない重要なパート」だと位置付ける。

「ジャズというのは自由気ままに演奏するもので、ライブの中で他のミュージシャンとの交流や即興を楽しむもの。毎晩異なる演奏ができて、その瞬間に生まれるものを楽しむ音楽といえるだろうね。その一方で、映画音楽の作曲は全く別の作業で、ピアノの前に座って、ああでもない、こうでもないといじくりながら書いたものを編集して、最終的にハマるところに持っていくというアプローチ。ジャズが瞬間だとすれば、映画のスコアを作曲することは永遠のように感じられる作業なんだけど、その映画が完成したときの満足感は、それはそれで得難いものなんだよね(笑)」

最新アルバム「ビュー・フロム・ヒア」は発売中。映画「ジャージー・ボーイズ」は、9月27日から全国公開。

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