トロフィーを手に笑顔の呉美保監督

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第38回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門で「そこのみにて光輝く」が最優秀監督賞に輝いた呉美保監督が9月25日、同作の撮影地となった北海道・函館のシネマアイリスで“凱旋”舞台挨拶を行った。

芥川賞に何度も名を連ねながら受賞がかなわず、41歳で自ら命を絶った夭折の作家・佐藤泰志さんの唯一の長編小説を綾野剛主演で映画化した今作。函館は佐藤さんの生誕地でもあり、熊切和嘉監督作「海炭市叙景」に続く佐藤原作の映画化とあって、同所の映画ファンは大きな盛り上がりを見せている。悲痛な過去にとらわれ愛を捨てた男(綾野)が愛を諦めた女(池脇千鶴)と出会い、徐々に再生していく姿を、函館のひと夏を通じて描く。2人のほか菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子らが出演している。

この日、佐藤さんの墓前に受賞の報告をしてから登壇した呉監督は、モントリオール秘話を惜しげもなく披露。同映画祭の創設者であるセルジュ・ロジーク氏と対面した際のことを、「『あなたはモンゴルの美しい馬のようだ』と言ってくださった。『馬? 髪型が?』と聞いたら、『いや、その顔だ』と言うんです」と明かし、場内は大盛り上がりだった。

公式上映後のティーチインでは菅田の人気が高かったといい、「『あの弟役は来ていないのか? あいつは最高だ!』という声がすごく多かったんです。暗くなりがちな世界観を絶妙に成立させたのは彼だ、3人そろってこそ成立したんだという声が多かったですね」と説明。授賞式は途中から受賞を諦めていたそうで、「ダメだと思って、みんなでダラっとしていたんです。そうしたら英題で作品名が呼ばれて、DVD特典映像用にビデオを回す予定だったプロデューサーの星野(秀樹)さんが慌てていた」と笑う。

日本に帰国して反響の大きさに驚いたそうで、「メールやLINEのメッセージなど、めちゃくちゃ来ていて、何が起こっているのかわからなかった」と述懐。そして、「記事などを見せてもらいましたが、(ダブル受賞した「ふしぎな岬の物語」の)吉永小百合さんが私の手を引いて一緒に並んでくださったおかげで、この作品が余計に知られるようになった」とほほ笑んだ。

なお、11月にはエジプトのカイロ映画祭に特別招待作品として上映されることも決定。今作の北海道配給を手がけた同館の支配人で、製作にも名を連ねる菅原和博氏は、「撮影は昨年の6〜7月。まだこの作品はいろんな形で動いていて、大変ありがたい。この映画の旅はもう少し続くのかなと思います」と表情をほころばせた。呉監督は、「今後も作りたいものをマイペースに作っていけたら。そして、もっともっと頑張らなきゃ」と意欲を新たにしていた。

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