査定に追い風! 赤丸急上昇「鉄板&意外な資格」2014秋

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■54社中40社が取得費用を負担している

会社が考える、「使える」資格とはどんなものか。第1回目(http://president.jp/articles/-/13358)では、87%の会社が社員の資格取得を奨励・支援していることをお伝えしました。

では、具体的に、会社は社員にどのように資格取得を支援しているのでしょうか。次のような選択式の質問をしました。

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【Q3−1】 社員が資格を取るための支援は、どのような方法ですか。当てはまる番号をマルで囲んでください。(複数回答可、支援すると回答した会社のみ回答)
〈1〉イントラネットや社内報で資格についての情報(試験日など)を掲載。
〈2〉社員の通信教育の費用、受験費用を会社が負担(一部または全部)。
〈3〉合格時に奨励金を支給。
〈4〉資格給(あるいは資格手当)がつく。
〈5〉その他(   )

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結果は次のようなものでした。

〈1〉と答えたのは、帝人やパナソニック、三菱重工、三井住友海上火災保険など24社ありました。
〈2〉と答えたのは、オリックスや丸紅、双日やキリンなど40社に上りました。
〈3〉と答えたのは、大和ハウス工業、帝人、三菱UFJ銀行、ミツバ、オリックスなど18社でした。
〈4〉は、新栄不動産ビジネスなど3社でした。

このなかで注目したいのはアンケートに回答した全54社中、実に40社(74%)が、〈2〉の社員の資格取得のための費用負担をしているという点。全部ではなく、一部負担というケースも多いですが、社員の立場からすると、会社の支援を受けて安く資格取得に挑戦できるということでしょう。

〈3〉の合格時に奨励金支給する会社も5社に1社の割合であるということですから、もしかして〈4〉の毎月資格給をつけて支援する会社もけっこういるのかと思いきや、さにあらず。3社にとどまりました。資格給を制定すると、会社にとってはどうしても固定費上昇の要因になるので実施企業は少数派にならざるをえないのでしょう。(*〈3〉の合格時に奨励金支給の会社に関しては、次々回の第4回目で詳細を報告予定)

とはいえ、どんな会社がいかなる経緯でそんな太っ腹な待遇をしているのでしょうか。

例えば、新栄不動産ビジネス(オフィスビルなどの不動産管理、不動産取り引き)の場合、「第3種電気主任技術者」「宅地建物取引主任者」などを取得すると、毎月資格給が支払われます。逆に言うと、こうした専門性の高い業務は、資格を持つ者でないと仕事ができないので、資格を持つことはいわば業務の一環といえるのです。

同社の新田隆範社長はこう言います。

「ベースアップや定期昇給に頼らなくとも、自分の能力で資格を取れば、収入を上げられます。会社としても、有資格者は必要ですが、同時に資格を取得しようとするチャレンジ精神の高い人を求めています。ただし、資格取得がすべてではありません。例えば、宅建を取得して、現実の営業活動で成果を上げることが目的です。宅建という資格はあって当たり前なので、給与では成果給をより厚くしています」

なお、〈5〉のその他には「社内研修の実施」などの回答がありました。

■企業が「支援する資格」2位社労士、3位中小企業診断士、1位は

では、会社が支援するのは社員がどんな資格を取得しようとする場合なのか。

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【Q3−2】具体的にどういう資格に対し支援していますか。当てはまる番号にマルをつけてください。(複数回答可、社員が資格を取るための支援をする会社のみ回答)

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20項目以上の資格のなかから選択してもらったところ、支援意欲の高い資格(数値の高い順に並べた)は次の通りでした。

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1位    TOEIC …20社(37.0%)
2位    社会保険労務士 …18社(33.3%)
3位    中小企業診断士 …16社(29.6%)
       衛生管理者 …6社(29.6%)
     日商簿記検定(1級、2級) …16社[うち1級のみ2社](29.6%)
     宅地建物取引主任 …16社(29.6%)
7位  税理士 …15社(27.8%)
8位  MBA(経営修士号) …13社(24.1%)
9位  公認会計士 …12社(22.2%)
     行政書士 …12社(22.2%)
11位  弁理士 …11社(20.4%)
     ファイナンシャル・プランナー …11社(20.4%)
     技術士 …11社(20.4%)
14位  司法書士 …10社(18.5%)
15位  ITパスポート …9社(16.7%)
16位  米国公認会計士(USCPA) …8社(14.8%)
   eco検定 …8社(14.8%)
   司法試験 …7社(13.0%)
   消費生活アドバイザー …7社(13.0%)
   技能士 …7社(13.0%)
21位   MOS …6社(11.1%)
22位   英検(1級、準1級、2級) …5社[うち1級のみ2社](9.3%)
23位   証券アナリスト …4社(7.4%)
        銀行業務検定 …4社(7.4%)
        ビジネスキャリア検定 …4社(7.4%)
26位 TOEFL …3社(5.6%)

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こうしてみると、1位のTOEICを支援する企業が抜きん出て多いのがわかります。つまり英語力がある社員を企業が戦力と判断しているということなのでしょう。このTOEICに関しては、企業はどのレベルを求めているかなど、次回の原稿で詳細をレポートします。

■マイナーだが企業の評価が高い資格

2位以下も、中小企業診断士や社労士など、以前から支持されている難易度の高い資格が目白押しでした。ただし、次のような指摘はあります。

「中小企業診断士も社労士も、会社の中では役に立たない。取っても使いようが少なく、損な資格だ。名前がカッコイイせいか、自己啓発として取得を目指す社員が多く、受験費用の一部を負担するなど支援はしている。だが、本音としては難関資格に挑戦するエネルギーがあるなら、仕事に向けて欲しい。仕事ができない人、中身がない人ほど、この二つの資格を取りたがる」(人事部勤務の経験がある大手企業幹部)

ところで、今回興味深かったのは、「支援する資格」を選択肢以外に記入する企業が多かったことです。

それらの資格は、建設会社の建築士のような「業務独占型」の資格だけではなく、現状はそれほど知名度が高くないけれど、各社が「使える」と判断しているもの。近い将来、その資格を持っていることで自分の評価が高まる可能性もありそうです。

例えば、丸紅の回答はこうです。

「ITストラテジスト、ファイナンシャルプランニング技能士、内部監査士、公認内部監査人、公認情報システム監査人」

大和ハウス工業は、

「建築士(1級、2級)、建築施工管理技士(1級、2級)など」

三井住友海上火災保険は、

「損害保険代理店資格、証券外務員資格など」

同社担当者によれば、「業務と関連性の高い資格であれば、修了報告または事前申請を条件に費用補助をしている」とのことだった。

帝人も「所属長が承認すれば、すべての公的資格人対する支援を認めている」。

キリンも「『自己啓発支援制度』によって、資格取得に向けた学びの費用の一部をサポートしている。資格の種類については、取得後に業務に生かせて、リーダーが認めたものとする」

との回答で、たとえマイナー資格でも支援されるケースが少なくないようです。

ほかにも、このような資格に支援する会社が実在する。

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住宅メーカー:建築士、各種施工管理技士など。
自動車メーカー:電気工事士など。
流通業:中国語検定、インドネシア語技能検定。
電機メーカー:DCプランナー(企業年金総合プランナー)。
銀行:不動産鑑定士、アクチュアリー、米国弁護士、CFA協会認定証券アナリストなど。
電子部品メーカー:QC検定(品質管理検定)。
カードなど金融業:貸金業務取扱主任者。
電機メーカー:電気工事士2種、冷凍機会責任者。
自動車部品メーカー:トータルで307資格に奨励金支給。
銀行:アクチュアリーなど。
生保:アクチュアリー。
自動車メーカー:通関士、販売士。
電機メーカー:米国税理士、PMP(プロジェクト・マネジメント・プロフェッショナル)、ITコーディネータ、博士号、電気主任技術者、PE(プロフェッショナル・エンジニア)、1級建築士など。
ホテル:「ホテル運営に必要な資格」。
不動産:マンション管理士。

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<第2回の結論>
・会社が取得を支援する対象資格で最も多いのは、TOEICである。会社のグローバル展開と相まって、後に登場するが昇格要件にTOEICを使う会社もあるためだろう。
・保険会社のアクチュアリー、金融業界の銀行業務検定など業界資格を支援する傾向は強い。
・建設・不動産業界の建築士、宅建など「業務独占資格」への支援は当たり前。
・社会保険労務士、中小企業診断士、税理士など、いわゆる“士”資格への支援は多い。

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【アンケートにご協力・ご回答いただいた企業(順不同)】丸紅/帝人/大和ハウス工業/三菱東京UFJ銀行/ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン合同会社/ミツバ/三井住友海上火災/キリン/パナソニック/オリックス/双日/富士ゼロックス/三菱重工業/サイバーエージェント/積水ハウス/トヨタ自動車/ブリヂストン/NEC/カルビー/ぐるなび/アサヒグループホールディングス/ユニ・チャーム/ローソン/住友電気工業/新栄不動産ビジネス/三井住友銀行/川崎重工業/キヤノン電子/ニトリホールディングス/クレディセゾン/クラシエホールディングス/ダイキン工業/デンソー/マツダ/サントリーホールディングス/ヤマトホールディングス/京セラ/京王プラザホテル/みずほフィナンシャルグループ/このほか、食品、生保、精密、鉄道、ホテルチェーン、化学、電機、不動産、機械など15社。合計54社。

(経済ジャーナリスト 永井隆=文)