特別講義を行った町山智浩氏

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映画評論家の町山智浩氏が9月15日、名作映画の特集上映企画「新・午前十時の映画祭」の特別企画として、20世紀の名作を劇場で見る意義と面白さを説く特別講義を、都内で行った。

この日の講義はオーソン・ウェルズ主演、キャロル・リード監督の傑作サスペンス「第三の男」(1949)の作品論と、「映画における悪役」がテーマ。町山氏は自己紹介もそこそこに、観客から同作に対する感想や質問を集め「プロデューサーが、監督と作家と3人でウィーンを取材していく中で、初めて知った事実をパズルのようにつなげ合わせて作った映画なんです。ハッピーアクシデントというんですが、最初予定していたものと大分違う仕上がりになって結果的に面白くなった」と説明した。

さらに「戦争が終わったばかりのヨーロッパが舞台で、アメリカ人である主要人物ホリーの設定がめちゃくちゃ。アメリカ文化を広めに来たはずなのに、全く文化的素養を持ち合わせていない。何千年もの歴史を持つヨーロッパが、歴史の短いアメリカに戦争でめちゃくちゃにされているという強烈な皮肉」と語り、観客は納得した様子でうなずいていた。

「映画における悪役」についても、同作の悪役であるハリーを例にとり「ハリーはキリスト教におけるサタンを象徴している。根源的な悪は価値観に揺さぶりをかけてきて、今まで信じてきた正義を覆してくる。悪なのにどこか納得させるような哲学や思想がある。頭脳は明晰なんだが魂が狂っている。映画においてはそれが強い悪の姿。彼は、世の中なんかくだらないと思っている偉大なる“中2病”なんだよ」と持論を展開。さらに、「本作にはニーチェ的思想や戦争の影響がある。純真無垢な青年がひどい戦争を経て極悪非道な人間になる。これは信仰の消滅の話なんですね」と語った。

また「第三の男」は世界中の名だたる監督や俳優から支持を受けているとし、「『乙女の祈り』『ロング・グッドバイ』『ディパーテッド』など、いろんな映画につながっている軸のような作品。単純な犯罪もの、恋愛ものといった表面的な観点ではなく、政治的、思想的な観点でこの作品を理解すれば他の作品で見えるものがある」と熱弁。町山氏らしいユーモアを織り交ぜながら、新たな視点で名作を解説していた。

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