第9回:キングパール

 近年、世界の競馬界において重要なポジションを占めているのは、中東の王族たちだ。古くから競走馬を所有し、「ゴドルフィン」という競走馬の管理団体を持つUAEのシェイク・モハメド殿下や、昨年の凱旋門賞を勝ったトレヴ(牝4歳/フランス)を所有するカタールのシェイク・ジョアン殿下などがその代表である。

 日本にもこの流れは波及しており、今年7月に行なわれた競走馬のセリ市「セレクトセール」では、カタール王族のシェイク・ファハド殿下が2日間で計9頭を購入。落札総額は8億7000万円に上り、最多金額購買者となった。

 ファハド殿下は、海外GIを制したドゥーナデン(牡/フランス。2008年〜2014年に活躍。数多くの国際レースに出走)などを所有。まだ25歳の彼が初めてセレクトセールに参戦したのは昨年のことで、そのとき購入した馬たちとともに今年、日本での馬主デビューを迎えることとなる。

 そんなファハド殿下の所有馬の中で、デビューを前に評判となっている2歳馬がいる。栗東・中内田充正厩舎に所属するキングパール(牡2歳/父キングカメハメハ)だ。

 関西競馬専門紙のトラックマンが、キングパールに対する陣営の「期待度の高さ」を口にする。

「栗東トレセンに入って来たときから、陣営は『クラシックを意識できる』としきりに言っていましたね。7月にゲート試験を合格したあとは、一度放牧に出して、その後トレセンに戻ってからはじっくり乗り込まれています。早いタイムを出すのはまだこれからでしょうが、動きは確実によくなっていますね」

 セレクトセールにおけるキングパールの落札価格は、9000万円。母ピンクパピヨンの産駒は重賞勝ちこそないものの、中・長距離戦でコンスタントに結果を出しており、それがこれほどの高値を生んだと言えるだろう。

 何より、キングパールと父が同じ全兄のカフナ(牡/2010年〜2014年に活躍。2014年のGIII小倉大賞典2着)は、中・長距離の重賞戦線で活躍。一族の出世頭となったことから、配合的な裏付けが十分であることは間違いない。前述のトラックマンもその点を強みに挙げる。

「とにかく確実に走ってくる血統なので、陣営としては焦らずじっくりやっているようです。とはいえ、馬はある程度仕上がってきているので、順調にいけば9月の阪神開催あたりでデビューするのではないでしょうか。距離は兄と同様、2000m以上が合うでしょうね」

 今年から、馬主として日本競馬に参戦するファハド殿下。世界的に脚光を浴びるオーナーは、初年度から存在感を見せることができるのだろうか。デビューの近づくキングパールが、そのカギを握っている。

河合力●文 text by Kawai Chikara