ヤンキースが真剣に"先発6人制"を検討しているという。ヤンキースは現地時間9月9日から、20日間で21連戦の強行スケジュールを消化しなければならず、もし先発を5人で回すことになれば、すべて中4日で投げなければならなくなる。

 今季、ヤンキースは先発右腕のイアン・ノバがトミー・ジョン手術を受け、田中も右ヒジのじん帯を痛めた。だが、チームにとってもこれ以上、ケガ人を出すわけにはいかず、リスクを避けるためにも、先発を6人で回した方がいいのでは、と議論されている。

 もともとヤンキースが先発6人制を検討したのは、田中の復帰にあった。もし田中が順調に回復していれば、9日からの21連戦中に復帰するはずだった。その田中に、中4日の登板を強いるのはリスクが高すぎるというのが、その理由だ。

 ただ、現時点で田中の復帰のめどは立っておらず、何人でローテーションを回すかは決まっていないが、幸い9月に入ってからロースター枠は最大40人まで拡大され、投手陣の駒は足りる。それに、もし6人で回すことになれば、39歳のベテラン・黒田博樹も中5日の恩恵を受けることになる。この件について、ラリー・ロスチャイルド投手コーチは否定しなかった。

「我々は先発投手の起用法だけでなく、いろいろな方法論を検討している。先発6人制は十分に検討する価値があると思っている。ただ、今の時点でどうなるかはまだわからない」

 メジャーリーグでは、1970年代に入り中3日での登板を主流とする先発4人制のローテーションが始まった。それからおよそ20年間、4人制のローテーションは続いたが、90年代に入ると中4日での先発5人制ローテーションへと変わっていった。そこにはどんな理由があったのか。当時の記事を探ると面白い事実を見つけた。

「今(90年代初頭)の選手たちは、トレーニングの近代化、栄養補給の進化により、以前の選手たちよりも強い体を作り出しているのは疑いようのない事実である。球速も格段に上がり、変化球の曲がりも大きくなった。しかし、その一方でヒジにかかる負担は以前よりも大きくなった。70年代に中3日で年間40試合もの先発をしていたゲイロード・ペリー、キャットフィッシュ・ハンターと同じような投球回数を投げようとすれば故障につながるだけだ」

 そして、4人制から5人制への変遷理由について、こう綴ってあった。

「More players spending time on DL」(故障者リスト入り選手の増加)

 今季、トミー・ジョン手術を受ける投手が急増している事実は、すでに誰もが知るところだ。また7月上旬に田中が右ヒジを痛めた際、レンジャーズのダルビッシュ有は「中4日は絶対に短い。1試合に120球、140球を投げても、登板間隔を空ければじん帯の炎症もクリーンにとれる」と、6人制ローテーションを必死に訴えた。

 そのダルビッシュでさえ、8月13日にヒジの炎症を訴え、故障者リスト入りしている。進化し続けるトレーニング。その代償として、投手の体は悲鳴をあげているのだ。

 余談ではあるが、ヤンキースのロスチャイルド投手コーチは、タンパベイ・デビルレイズ(現タンパベイ・レイズ)の初代監督にもなった人物だが、1986年にシンシナティ・レッズの投手巡回コーチに就任して以来、関係者の間で投手コーチとしての手腕が高く評価されている。そのロスチャイルド投手コーチは、ローテーションが4人制から5人制に移り変わっていった90年代にこんな言葉を残している。

「昔と比べて、ストライクゾーンがまったく違う。その時代と今の時代を比べるのは投手にとってストレスが多すぎる。投手の負担は確実に増えている。投手の健康を守らねばならない」

 先述したように、今季ヤンキースはノバが手術、田中もヒジを故障し、戦線離脱を余儀なくされた。そうした経緯もあり、先発6人制をとる可能性は十分に考えられる。そして、それは確実に来季への布石になるに違いない。これまでの先発ローテーションの変遷を知り、6人制ローテーションは近い将来、現実のものとなると感じた。

笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji