ヤンキース・イチロー【写真:田口有史】

今後の去就が注目されるイチロー

 ヤンキースのイチロー外野手について、球団公式サイトが「イチローが14年のヤンクスで自らの居場所を刻む」との見出しで特集している。不透明となっている来季の去就について触れながら、その高いプロ意識について言及。メジャー通算3000安打まで176本に迫っているだけに、今後の行方に注目が高まっている。

 今年の2月19日、ヤンキースとの2年1300万ドル(約13億5000万円)の契約最終年のスタートを前に、イチローは報道陣の質問攻めにあった。5番目の外野手としてチームにどうフィットするのか。憤りはないのか。トレードされることは考えるのか。他(のチーム)でプレーしたくないのか。そんな内容だったという。

 しかし、記事では「6ヶ月後、イチローはこれまでのキャリア通り、自らの居場所を確立していた」と言及している。

 例として挙げられているのが、8月24日のホワイトソックス戦だ。この日、ブレット・ガードナーは足首痛で欠場し、ジャコビー・エルズベリーは休養日だった。ヤンキースはリーグ最強左腕と呼ばれる左腕クリス・セールと対戦したが、ジョー・ジラルディ監督はイチローを今季2度目となるセンターに配置。打線で唯一の左打者として8番に据えた。

 この試合でセールは5回まで順調だったが、6回にエラーと四球で完封ペースが崩れかけていた。1点を追いかける中で迎えた満塁のチャンス。イチローはいつも通りに右腕を伸ばし、少し袖に手をかける所作を見せた後、初球の84マイル(約135キロ)のチェンジアップをライト前に打ち返し、逆転タイムリーとなった。

 セールが左打者に打点を許したのは、実に昨年8月以来のことだった。この記録を知ったイチローは「アメイジング」と一言。さらに「もちろん、簡単な打席なんてないです。彼の打席で」と話し、それまで左打者を完璧に抑え込んできたセールのピッチングを讃えた。

イチローの間近でプレーする選手が感じるレジェンドの凄み

 こういった印象的な活躍もあるが、記事では「2014年のイチローはほとんどの間、脇役的な存在だった」とも記されている。確かに昨季よりも打席数は半減した。ただ、打率は2割8分5厘で、出塁率は2010年以来最高となる3割2分7厘。左打者相手の3割5分8厘という数字は素晴らしいものだ。

「イチローの成績上昇は幸運の産物でしかないという、シニカルな見方もできる。最後の灯火のような輝きに加え、アルフォンソ・ソリアーノとケリー・ジョンソンという最終的に解雇されたベテランやカルロス・ベルトランの負傷という要素もあった」。

 記事の中にはこんな記述もある。だが、その上でジラルディ監督がイチローを貴重な存在であることを認めているコメントも紹介されている。

「試合に出ていない状況でも、彼はとても素晴らしいピンチヒッターだ。我々がベンチにスピードという要素を持っていることにもなる。どんなポジションでも彼を起用することができるのは、我々には非常に大きな助けになっている」

 イチローに対するこういった評価は、今オフにブライアン・キャッシュマンGMが補強リストを作成する上で大きな要素となる。怪我の多い30歳くらいの選手と頑丈な40歳のイチローのどちらと新たに短期契約を結ぶかを、球団は熟慮しているという。

 一方で、間近でプレーしているチームメートは、レジェンドの凄みを肌で感じている。試合前の練習でイチローのキャッチボールのパートナーを務めるブレット・ガードナーもその1人だ。特に、イチローのハイレベルな守備については敬意を抱いており、以下のように話している。

「私は彼のことをパートタイムプレーヤーだとは思っていません。彼は明らかに毎日プレーすることができます。年齢を重ねても、彼の守備は本当に素晴らしい」

 記事では、イチローの守備における評価指数が、マリナーズ時代の全盛期に比べて落ちていることに言及している。さらに、盗塁数や内野安打の数も減少傾向にあり、スピードがやや落ちているという指摘もあるという。ただ、その指摘に釘を刺すかのように、8月17日の敵地でのレイズ戦で守備固めとしてカルロス・ベルトランに代わって出場し、2点リードの9回にジェームズ・ロニーの右中間へのライナーをランニングキャッチした場面を紹介している。今季も印象的なプレーは多い。

 もっとも、来季もヤンキースと契約すれば、出場機会はさらに限定されるかもしれない。となると、打撃成績への影響は大きい。メジャー通算3000安打の達成を遅らせる可能性も高い。現在、2824安打を誇る安打製造機にとっては、ナ・リーグのチームに移籍した方が大台到達が容易になると、記事では指摘されている。

どんな状況に置かれようとイチローが諦めることはない

 昨季までヤンキースに所属し、今季からメッツに移籍したカーティス・グランダーソンは、ナ・リーグでプレーするメリットについて言及している。盟友のイチローが、能力を存分に発揮できる環境でプレーすることを望んでいるようだ。

「もし彼が毎日プレーする機会を得れば、(3000安打は)楽勝だろうね。とにかく彼が毎日プレーできる状況を手にすること。それがキーになるよ。彼がそうすべきでない理由なんてないよ」

 記事では最後にイチローの高いプロフェッショナル精神を以下のように讃えている。

「ア・リーグMVP、10度のオールスター出場、10度のゴールド・グラブ受賞。イチローの輝かしい実績はまだ印象的なままだが、今は全盛期ほどの支配的なプレーは期待できない。ただ、かつて松井秀喜がやっていたように、そしてこれから田中将大がやっていくように、日本を代表してニューヨークで誇りを背負いながらプレーを続けている」

 さらに、もしヤンキースと再契約した場合、来季も同じように高い意識でプレーすることを予想している。

「来年2月、(シーズン終了後に)トレーニングとコンディショニングに励んだ後、彼はレポーターたちから(今年と)同じ質問をされるだろう。それでも、彼は諦めることなく、これまでもやってきたように『自分の居場所を自分で見つけないといけない』と話すだろう」

 ガードナーは「彼が誰よりもしっかりと(試合に向けて)準備してきたところを自分は見てきた」と話しているという。来季の状況は不透明だが、どんな状況に置かれようと、イチローがプロとして努力を怠ることはない。