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第4回:ワールドリースター

 良血の2歳馬たちが続々とデビューする中、異色の血統を持つ、ある一頭の若駒に注目が集まっている。栗東・松田博資厩舎所属のワールドリースター(牡2歳/父アドマイヤドン)だ。

 ワールドリースターの母は、アメリカ産のワールドリープレジャー。現在、アメリカのGIを8勝しているゲームオンデュード(せん7歳/父オーサムアゲイン)を輩出し、世界的な繁殖牝馬としての地位を築いた。

 特筆すべきは、そんなワールドクラスの馬と配合されたのが、アドマイヤドン(父ティンバーカントリー)だったことだ。

 1993年の桜花賞、オークスを制した二冠牝馬ベガの子である同馬は、現役時代(2001年〜2005年)は主にダート路線で活躍。JRA、地方交流レースを合わせてGI通算7勝という輝かしい記録を残した。その血統背景や、競走馬としての実績は申し分なかったが、引退後のアドマイヤドンは種牡馬としてふるわなかった。重賞を勝つような産駒を出すことができず、2011年には競馬後進国の韓国に輸出されてしまったのだ。

 にもかかわらず、世界的な繁殖牝馬との配合が実現したのは、ゲームオンデュードが活躍する前に偶然、ワールドリープレジャーも韓国に輸出されていたからだった。

 そして2011年春、アドマイヤドンがワールドリープレジャーと種付けを行なっていた時期に、古馬となったゲームオンデュードがGIを勝って台頭。その母であるワールドリープレジャーは一躍世界で注目を集める存在となって、同年秋にアドマイヤドンの子をお腹に宿した同馬を社台コーポレーション白老ファームが購入した。

 こうして2012年3月、日本で生まれたのが、ワールドリースターだった。

 同馬の育成を担当したノーザンファーム早来の林宏樹氏は、その姿に「父アドマイヤドンの面影を見た」と語る。

「私は父の育成も担当していたのですが、足元の白い模様などは、父によく似ていますよね。祖母のベガも同じ特徴を持っており、いかにもその血が濃く出ていそうな印象です。ベガの血を持つ馬は少なくなってきましたが、この馬がその血をつなぐ存在になってくれるといいですね」

 ベガは、アドマイヤドンの他に、1999年の日本ダービー馬アドマイヤベガ(父サンデーサイレンス)や、今年の桜花賞を制したハープスターの母ヒストリックスター(父ファルブラヴ)など、5頭の産駒を遺した。しかし、最大の後継者と期待されたアドマイヤベガは、2004年に8歳の若さで急逝。種牡馬として、ベガの血を継承することは満足にできなかった。

 そうした状況にあって、ベガの血をつなぐ新たな後継者として、この特異な血統背景を持つワールドリースターへの期待が高まっている。

 クラシックを占うという意味では、父アドマイヤドンの実績がほとんどダートに集中している点が不安視されているが、アドマイヤドンは2歳時に芝のGI朝日杯フューチュリティS(中山・芝1600m)を快勝。前述のアドマイヤベガをはじめ、他の兄弟たちの芝での活躍を考えれば、それほど心配することはない。林氏も「ダートより、むしろ芝での活躍に期待したい」と言う。

「父アドマイヤドンは、足元の弱いところもあって、ダートで使われてきましたが、私はデビュー前から芝向きの馬だと思っていました。いまだに『どうして、ダートであんなに活躍したんだろう』と不思議に思っているほどです。ワールドリースターも同様で、乗った感触はやはり芝のレースに向いていそう。2000m〜2400mの芝の中距離で活躍できるのではないでしょうか」

 アドマイヤベガの死などによって、少なくなりつつある名牝ベガの血。そんな中、ベガの娘ヒストリックスターはハープスターを輩出し、改めてその血統の偉大さを知らしめた。

 現在、札幌競馬場で調整を重ねているワールドリースター。順調ならば、8月16日(土)の2歳新馬(札幌・芝1800m)でデビュー予定となっている。

 はたして彼は、ベガの血をつなぐ継承者になれるのか。まずは初戦の走りに注目したい。

河合力●文 text by Kawai Chikara