日本競馬界の悲願である凱旋門賞(10月5日、フランス・ロンシャン競馬場)の制覇が現実味を帯びてきた。ジャスタウェイ(牡5、須貝尚介厩舎)とハープスター(牝3、松田博資厩舎)の2頭が、日本だけでなく世界からも熱い視線を送られているのだ。

凱旋門賞が行なわれるフランス在住の競馬ジャーナリスト、沢田康文氏が言う。

「日本馬に対する注目と警戒は、一昨年の凱旋門賞後から急激に上昇したように感じます。ジャスタウェイはなんといっても世界No.1レーティングホースという点が評価されており、ハープスターも桜花賞(GI)を勝つ以前から、凱旋門賞の有力候補と目されています」

沢田氏が指摘するように、英国の大手ブックメーカー各社は、軒並みジャスタウェイを3番手、ハープスターを4番手の評価に推している。また、ゴールドシップも宝塚記念の勝利によって6番手前後まで評価が引き上げられた。

いずれも本番までまだ3ヵ月近くあり、フランスでの適性や、そもそも出走自体が確定していないことからすればかなりの高評価だ。

ジャスタウェイは、今年3月、ドバイ(ドバイデューティーフリー)で見せた鮮烈な勝ちっぷりが、世界を驚愕(がく)させ、「世界No.1レーティング」が与えられた。これはサッカーでいえばFIFAランキング1位に相当するもので、130ポンドという評価は現時点で世界単独トップ。過去にもディープインパクトが中間順位で1位タイ(2006年7月に127ポンド)になったことはあるが、日本調教馬が世界の強豪を抑えて単独1位になったのはこれが初めてだ。

さらに「ドバイで負かしたザフューグ(牝5)がロイヤルアスコット(英国の王室主催競馬)のGIレースで、昨年の凱旋門賞馬トレヴ(牝4)らを破ったことが間接的に評価を上げている」(沢田氏)という。

先月までの段階で、凱旋門賞挑戦については僚馬ゴールドシップともども、「馬の状態を最優先に考えて」(須貝尚介調教師)具体的なゴーサインは出されていないが、参戦が決まればこの馬を中心に話題が推移していくのは間違いない。出否については、近日中にも発表がなされるようだ。一方のハープスターは早くから凱旋門賞参戦を明言。ここまでGIは桜花賞1勝のみで、断然の1番人気に推されたオークスも惜敗したが、そのケタ違いの末脚は、負けてなお強しという印象を与えている。

「今年、『ジュールドギャロ』(以下、JDG)という会員制電子競馬専門誌に日本のオークスの記事が載りました。ハープスターの走りも大きく取り上げられており、鮮烈な競馬の2着、マイル戦からの距離延長にもうまく対応してみせたと評価されていました。このJDGはフランスのほぼすべての競馬関係者が目を通しているので、今やハープスターは当たり前のように知られています。関係者の間では、まるでザルカヴァ(2008年に鋭い末脚を武器に凱旋門賞を制した3歳牝馬)を思わせるという声が多く、それだけ有力視されているということです」(沢田氏)

今年ドバイで海外遠征を成功させているジャスタウェイは、ハープスターと同じディープインパクトを父に持つキズナが昨年、前哨戦を制して本番でも見せ場たっぷりの4着となった。日本が誇る血の底力は、すでに世界レベルにあることに疑いの余地はない。

日本中が注目する一戦まで残り数ヵ月を切り、日本競馬界悲願のカウントダウンはもう始まっている。期待は高まる一方だ。

(取材/土屋真光)