日雇い労働者の街、大阪西成区のあいりん地区を官庁街に--。先ごろ、橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会が「大阪都構想」に絡みブチ上げた仰天プランで、地元が揺れている。
 「大阪都構想による市再編で新設する5特別区のうち、新“中央区”の庁舎に西成区役所を充て、あいりん地区を官庁街にする計画を明らかにしたのです。大阪市が昨年度から取り組んでいる西成区の活性化を目指した『西成特区構想』に沿ったもので、この動きに、労働者や地元関係者が困惑しきりです」(地元記者)

 同地区で活動するボランティアはこう語る。
 「あいりん地区の新今宮などは交通の便がよく、最近は関空からの“大阪市の南玄関”としても注目されています。そのため、ここに行政機能を置けば街が活性化し、労働問題の改善にもつながるという発想なのでしょう。ただ、それにはもっと現地の実態を見てもらいたいものです」

 昨年、大阪市は「課題解決は、地域が主体的に取り組み、それを行政が後押しする形で進める」ことを打ち出しているが、今回の案について「どう考えても地域より行政が主体」との声が多く聞こえてくるのだ。
 同地区『ふるさとの家』で労働者の生活支援に取り組む本田哲郎神父の話。
 「いかにも“あいりんのために”という感じですが、実現するわけがない。笑うしかないですよ。橋下さんは、あいりんをいかに住みやすくするかというより、いかに綺麗に見せるかを優先している。つまり阿倍野の再開発と同じことをやろうとしているわけですが、阿倍野も街自体は綺麗になったが、それが活性化につながったとは言えない。話は地元の声を反映できる仕組みを作ってからです」

 この時期、ことさら同地区の問題を持ちだしたのは、「来春の統一地方選挙がらみ」との見方も少なくない。
 「橋下さんは公明党と大げんかしたでしょ。だから社会的弱者の方を向いて理解のあるとこを見せとかんと選挙で戦えない。それだけの話」(ある大阪市会議員)

 橋下市長の本音はどこにある?