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カメラがスマートフォンに欠かせないように、自動車とっても必須のハードウェアになる

スマートフォンの普及に、電話の機能が果たした役割はあまり大きくない。おそらくモバイル・コンピューティングにおける最大のキラー・アプリケーションはカメラの「写真の撮影・共有機能」だ。自動車が車輪付きのコンピューターとなりつつある昨今、カメラは自動車にとっても必須のハードウェアになりつつある。

カメラの焦点距離や解像度が、馬力やトランスミッションと同様に自動車選びの基準となる日は近いのだろうか?自動運転よりも、車載カメラの方が重要になるだろうか?

ミニ・クーパーが、GoProカメラの写真・動画機能(車載ジョイスティックで操作可能)を搭載するという発表を目にして以来、こんな疑問が頭に浮かんでいる。もちろん、これまでも車内でGoProを使用することはできたが、その大人気の小型アクションカメラを、今度はミニのオペレーティングシステムで操作できるようになったのだ(対応オプションの装備が必要)。ミニ・クーパーを製造するBMWによると、ダッシュボード上の高解像度カラーディスプレイにカメラ機能を直接搭載し、それをジョイスティックによって操作することで、ドライバーがより運転に集中できるようになったという。

ふむ、なるほど。

酷い目にあうことも

ミズーリ州在住の26歳女性が、運転中に自分の写真を撮った直後に事故を起こして死亡した(これが彼女の生涯最後の写真となった)。彼女は独身最後の夜を過ごすパーティーに向かう途中で帰らぬ人となった。更に英国のデイリー・メール紙の5月の報道によると、2人の少女が車内でカラオケ動画の撮影を試み、運転中にハンドルから両手を離して事故を起こしたという。少女らは病院で事故動画をアップロードした。この動画はSNSで話題を呼び、それに応えて少女らは、打撲した顔や体の写真までもアップロードしている。

こういったデジタル世代の異常な若者だけが、車内撮影という無謀な行為をするのかというと、そうではない。ある80代の2人組は、カリフォルニア州のベル・エアで青いホンダ車を横転させた際、写真を撮ってもらっていた。見事な出来栄えの写真には、取り残された車内からポーズをとる夫人の姿が写っていた。この場合写真は事故の原因ではなかったが、自動車とカメラ、安全、自分撮り写真とソーシャルメディアの間の境界線が曖昧になってきている事実は否めない。そして、GoProと自動車メーカーのコラボレーションは今後他社からも発表されるものと思われる。

明るい展望も

そういった危険な楽しみ方だけが、車載カメラの使い道ではない。実際、自動車メーカーは安全性向上を主な目的としてカメラを活用している。数か月前にもお伝えした通り、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は3月31日、2018年5月以降に生産される全ての車へのバックカメラの取り付けを義務付けた。50ドル程度で入手できるバックカメラは高価な品ではない。それによって年間約15,000件にも及ぶ、バックミラーに映らない人々(大半が小さな子ども)の怪我が防止できるのであれば、カメラの値段など安いと言える。

筆者は昨年の夏にドイツのアウトバーンをディーゼルのスポーティーなフォルクスワーゲン・ゴルフGTDで走っていた際、各区間の制限速度を気にすることなく走ることが出来た。それは車載カメラが画像認識ソフトを使って側道の制限速度表示を確認し、法定速度をダッシュボード(ハンドルの前方)に表示してくれたお蔭なのだが、非常に有効な機能だと感じた。将来的には運転手の頭部を写すカメラが搭載され、顔認識機能によって「顔が前を向いているか」、「視線が道路に向けられているか」といったことも判断してくれるだろう。もし頭がぐらつけば警告音が鳴り、自動ブレーキが作動するようになるかもしれない。

道路や交差点には既に多数のカメラが設置されており、信号無視を犯した車には自動で違反切符が発券される。また、自動運転車にとってカメラや画像認識技術は、レーダーやソナー、ライダーといった各種センサーと同様に欠かせない要素となっている。更に筆者はサイドミラーも将来は無くなっていくだろうと考えている。なぜなら、サイドミラーは空力に悪影響を与え、不注意なドライバー(車内撮影をしようとする人に限らない)に当てられて折れることが多いからだ。

ドライブレコーダーとしてのカメラ

車載カメラの将来を覗いてみたければ、ロシアに行くといい。ロシアでは自動車事故が日常茶飯事で、しかも警官の汚職が蔓延している。万が一事故に遭った際に明確な証拠が必要となるため、結果的にほぼ全てのドライバーがドライブレコーダーで走行を録画しながら運転しているそうだ。YouTubeにはドライブレコーダーで記録した事故の動画が山のように溢れ、ロシア以外のものを含め、トラックの横転や路上での揉み合いといった動画を観ることができる。この現象はロシアに限ったものでなく、アメリカの警察官の間でもドライブレコーダーの使用は一般的になっている。

Novatec社製ドライブレコーダー GW1

読者の方々がミニ・クーパーに乗っていなくとも、この時流に乗ることは出来る。3月にWirecutterが発表した人気ドライブレコーダーランキングでは、G1Wが最も多くの審査員の票を集めた。このカメラは秒間30フレーム・1080pの動画を撮影可能で、Amazonでは約40ドルで購入できる。

ミニのGoProカメラを民衆に向けるビッグ・ブラザー(※)が、時の人として脚光を浴びる日が来るとは、さすがのジョージ・オーウェルでさえも予見できなかっただろう。

※「ビッグ・ブラザー」はオーウェルの小説「1984」に絶対君主として登場する人物

トップ画像提供:CameraVan.com

Bradley Berman
[原文]