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鎌倉市が、「生活保護」と書かれた窓口の前に2年以上もついたてを置き、窓口をふさぐ形にしていたことが分かった。市は、申請に来てほしくなかったとの意図はないとしているが、批判を受けてついたてを撤去した。

ついたての問題は、労働相談などに取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」の担当者が2014年6月27日にツイートしたことでクローズアップされた。

50代の男性、ついたてを見て誤解していた

そのツイートやPOSSEのブログによると、50代のある男性は、病気で働けず、鎌倉市役所に生活保護の申請に出向いた。しかし、窓口がついたてでふさがっていたため、ここでは相談を受け付けていないと思い込んで、いったん帰宅した。調べ直すとやはり窓口は市役所にあり、後日に隣の窓口で申請したいと告げた。

ところが、応対した職員は、「何回目?」と窓口に来た回数を聞き、生活保護を受給できるのは65歳以上であり、ハローワークで職を探すべきだという内容を説明したという。

男性は、職を探したものの見つからず、2か月後にPOSSEに相談した。そして、再び市役所を訪れると、別の職員が応対して、弟の援助を頼むのが先であり、申請には病気の証明が必要だと説明した。手書きのは市の申請書ではないと拒否し、電話でアポを取ってから来るようにとも話したという。

POSSEの担当者が27日に男性に同行したときも、この職員は同様の説明をしたが、課長判断で最後は申請を受理した。POSSEでは、職員の説明はいずれも申請の条件とは言えず、「水際作戦」をして申請を拒むことは許されないと市を批判している。

30日になって、ネット上で「窓口封鎖」の解除を求める署名活動を始めると、市は、ついたてを撤去して窓口を開放した。

こうした市の対応について、ネット上では、批判の声が相次いでいる。市が財政難にあえいでいることから、「水際作戦」は苦肉の策なのではないかという指摘もあった。

財政難を指摘する声あるも、「別問題」と否定

実際、鎌倉市は、財政難のため、2013年度に地方交付税の交付団体に転落している。財政課によると、鎌倉では、寺社は多いものの企業は少なく、個人からの税収が多くを占めているが、最近は高額所得者の退職などで税収も落ち込んでいる。さらに、生活保護などの社会保障費がかさんでいることから、財政を圧迫しているというのだ。

市では、由比ガ浜の命名権を売るなど財政再建を進めているが、観光集客につながる世界遺産登録に失敗したため、今後の財政見通しも厳しいようだ。もっとも、職員の給与水準については、日経の調査によると、09年度に全国の市町村でトップの平均年収797万円になり、現在でも高水準が続いている。

財政難などから水際作戦をしたかについて、市の生活福祉課では、「財政難とは別の問題であり、生活保護の申請に来てほしくないという意図もありません」と全面的に否定した。POSSEが申請の条件としていると指摘したことについては、「そんな条件はないです。しかし、正しく理解されない説明があり、申し訳なかったと思っています」と話した。

ついたてについては、12年度に職員を3人増やし、執務スペースが窓口近くにまでなったため、秘密保持のために置いたと説明した。しかし、批判が相次いだため、配慮が足りなかったとして撤去したという。ついたては、現在は倉庫に保管してあり、秘密保持については今後検討すると言っている。