米下院歳出委員会は24日、ワシントン市内にある在米中国大使館の前の通りを「劉暁波プラザ」と改称する法案を可決した。劉暁波氏は民主化運動家で2010年のノーベル平和賞受賞者。同年2月から「犯罪者」として入獄中だ。中国政府・外交部の華春瑩報道官は25日の定例記者会見で米下院の動きを「茶番劇」などと猛反発。外交部公式サイトに掲載した同記者会見の記録では該当部分を割愛した。国外で劉暁波氏を巡る動きがあること自体を国内に広めたくないと考えられる。

 改称は2015年会計年度の国務省関連予算法案に盛り込まれた。下院本会議や上院も通過して法案が成立すれば、ワシントン市内の中国大使館の住所は「劉暁波プラザ1番」になる見通しだ。同大使館にとどくの郵便物にも「Liu Xiaobo(劉暁波)」の名が記されることになる。

 中国政府・外交部の華春瑩報道官は25日の定例記者会見で「米国の一部の者は、いわゆる人権と劉暁波事件を使って、全く意味のないことをする。これは茶番劇だ」、「中国も米国に対して同様の行動をとるべきなのか?」などと猛反発した。

 「劉暁波プラザ」については、外交部の洪磊報道官も「挑発行為だ」、「劉暁波は中国の法律を犯した人物だ。中国の司法機関により有罪が確定した」などと反発した。

 中国外交部は定例記者会見の記録を公式ウェブサイトに掲載している。ただし、場合によっては一部内容を割愛する場合がある。「自国民に見せると都合が悪い」との判断だ。

 25日の定例記者会見では、「訪日したフィリピンのアキノ大統領と安倍首相の共同記者会見について、日本とフィリピンを批判」、「ヨルダンでイスラエル人が行方不明になった件で、イスラエル軍が拉致として報復行動を起こしたことについての中国の見方」、「インド副首相の訪中」などについては掲載したが、「劉暁波プラザ」の話題は掲載しなかった。

 中国が記者会見の公式発表から一部の内容を割愛した例として、最近では6月12日の記者会見で、1979年の中越戦争についての質疑応答を割愛したことがある。

 2012年12月27日の記者会見では、「中国が1950年に『尖閣諸島は琉球(沖縄)に含まれる』とする外交関連文書を作成していた」との報道についての質疑応答を割愛。同記者会見で華春瑩報道官は、「よく分からない」などとして回答を避けていた。

 それ以前では、天安門事件についての質疑応答や、02年の日本総領事館に北朝鮮から脱出した家族(脱北家族)が駆け込んだ事件、08年の「毒ギョーザ事件」でも、質疑応答を掲載しなかったことがある。

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◆解説◆
 劉暁波氏は民主化運動家。1989年春に中国で大規模な民主化運動が発生すると、滞在先の米国から帰国し、運動に参加した。6月4日の天安門事件後に投獄された。1991年に釈放されたが、その後もたびたび投獄されるなどした。

 08年には中国の大幅な民主化を求める「08憲章」の主要な起草者となり逮捕された。2010年2月に「国家政権転覆扇動罪」で懲役11年の有罪判決が確定した。現在も服役中だ。(編集担当:如月隼人)