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米国最高裁はソフトウェア特許に大きな衝撃を与えた。しかし人々はまだ不十分だと考えている。

米国の最高裁によると、自然についての現象や法則、抽象的なアイデアについての特許取得は認められていない。特にその抽象的なアイデアというのがコンピュータで何かをやるための一般的な実装の場合はそうだ。

先日、満場一致で最高裁は「抽象的なコンセプト」とみなされるソフトウェアの特許を無効とする判断を下した。Alice CorporationおよびCLS国際銀行のケースにおいて、「複数の機関での借り入れ決済をAlice Corporationによってコンピュータ処理する」という汎用的な概念についての特許取得が問題になった。

CLS国際銀行は、この特許のコンセプトは金融業界では古くからある事で、新しい点があるとしたら「コンピューターを使って」という点くらいなので無効だと申し立てた。

最高裁はこういった抽象的なアイデアが、プログラムを組み上げるからという理由だけで特許の対象にはなり得ないとした。この事は現存する特許にとっても重要な結果をもたらすことだろう。

どういったケースが影響を受けるのか

このルールが適用されるケースはかなり少ないが、それでも長年特許法の改正を望み続けていた人たちにとっては大きな一歩だ。しかしながら、これがパテント・トロール(特許ゴロ)を止めさせるものだとしても、次に考えなければならないことがある。

最高裁が何をしなかったかを考えたほうが分かりやすいかもしれない。最高裁は「ビジネスモデル」、つまり新しいビジネスの方法に関する「発明」と見なされるような一般的な特許を無効にしたりはしなかった。三人の裁判官は、ビジネスモデル特許は無効とされるべきだと考えており、Aliceの件に影響を与える異議を提出している。2010年のBilski 対 Kapposの事例では、裁判所は5対4でビジネスモデル特許が特許性を有さないとすることを拒絶している。

Aliceの場合、特許は棄却されたが、それでも更に複雑なソフトウェアの場合、事例を単純に「抽象的なコンセプト」と結論づける事が出来ないという可能性は残されている。

Alice対CLS銀行の判決で誰が影響をうけるのか

今回の判決で、すくなくとも高裁がソフトウェア特許について新たな規定を打ち出すまでの間、明確な勝ち組が存在する。

大手テクノロジー企業:IBMやMSといった大手はAliceの特許を支持する趣意書を提出している。彼らがこれまでに投資した膨大なソフトウェア特許を守るためだ。今の規定では、これらの件については触れられていない。

ソフトウェア訴訟の被告:今の規定の副次的な恩恵として、ソフトウェア特許は米国特許法101条に述べられている特許適格性に適合しなければいけないとしている事だ。この事が一般的な特許には根本的な影響を与えないが、既にある訴訟の棄却に利用される可能性がある。

個人の開発者:個人の開発者たちはよくソフトウェア特許に反対だと言う事がある。特許を申請したことのある独立系開発者は限られているという事も関係しているだろう。それでも新しいルールはこういった開発者たちを、特許を侵害したとして起訴したり、ライセンス規約に合意させる事を目的とした特許ゴロ行為から守ることになるだろう。

Aliceの件で残る疑問

最高裁が特許法の改正についてはっきりとした見解を表明していないが、これが今回は特許法の改正についての最後の機会にはならないだろう。

クラレンス・トーマス判事による裁判所の見解では、何を持って「抽象的な特許」とするのかについて明示していない。文章では「今回のケースで抽象的なアイデアとは何かを明確にする必要はない」とある。そういうわけで、「抽象的」の定義については下級裁判所に差し戻された。

特許訴訟の件数は減少するだろう。特許の内容が「抽象的」と見なされるハードルをクリアできない場合は特にそうだ。しかしながらこの事は、もう無茶な特許が中小企業を脅かさないということではない。

トップ画像提供:DonkeyHotey(Flickrより), CC 2.0

Dan Rowinski
[原文]