THE OUTSIDERをプロデュースする前田日明氏

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 総合格闘技イベントのPRIDEが消滅して7年、あれほど脚光を浴びていた格闘技選手や試合を見かけることが少なくなった。代わりになるイベントが何度か試みられたが、現在もPRIDEと同じ規模は実現できていない。とはいえ、いったん広がった格闘技への熱はいまも存続している。規模は小さくなったものの、以前よりもアマチュアが出場できる試合が増え、新たな広がりをみせている。

「アマチュアネットワークを広げて、競技としての性格を強めていた修斗やパンクラスなど、以前と比べると大きな会場ではないですが定期的に興行は続いています。宇野薫も桜井速人もまだ現役ですし、それぞれジムを運営しています。グレイシーで注目を浴びたブラジリアン柔術も全国各地に道場があり、大会やセミナーが盛んに開かれています。格闘技のジムが町のスポーツクラブのようになっていますね。

 その一方で、格闘技のスキルがあまりなくてもリングに上がれるのも最近の特徴です。PRIDEなどを観客として見ていた人たちが、その真似をしたいという欲望がかなえられるようになりました。

 たとえば地下格闘技と呼ばれるジャンルの大会が全国各地で開催されており、そこに出場している人たちは『アマチュア』です。格闘技としては稚拙ですが、いわゆる不良が出場しているので闘志は並み以上。格闘技雑誌からは完全に無視されましたが、チケットを販売する営業力がとても強く、小規模ながらも継続しているところが多いです」(格闘技雑誌編集者)

 格闘技専門誌から無視された地下格闘技は専門外のジャンル、ストリート系ファッション誌でたびたび取り上げられる「イベント」へと成長した。出場者も観客も、最新のストリートファッションに関心が高い若者を中心に構成されていたからだ。

 格闘技関係者からは無視されていた領域だったが、闘志あふれる戦いぶりに目をつけ、旧来の格闘技組織として初めて彼らと正式に接触したのは前田日明氏だった。

 2008年から定期的にイベントを開催している前田がプロデュースするTHE OUTSIDERは、決して地下格闘技とは自称しないが不良たちを集めるとの掛け声で始まった。6月22日のディファ有明大会で第31戦を迎える同大会は、出場資格を「年齢16〜35歳まで、プロでの試合経験が3試合以下の者」としたため、元暴力団員で逮捕歴もあり顔面のタトゥーが特徴的な瓜田純士に代表されるような不良も参戦しているが、地道にトレーニングを積んだアスリートも含まれている。

 THE OUTSIDERで実績を積めば、将来的にはアメリカの総合格闘技イベント「UFC」のような華やかな場所へ出られる可能性が開ける。ブーム消滅で鬱屈としていた業界にとっては立派な「改革」といえた。いかにも不良が好きそうな成り上がりの道が用意されているが、彼らによるトラブルも頻発している。

「コツコツとトレーニングするのが嫌いなタイプが多いので、まじめに格闘技スキルを磨いてきた相手だと勝てないのですが、見栄を張りたいから負けるのは嫌い。だから結果に納得がいかず暴れる。観客も、出場者の仲間が多いからマナーが悪い者が多い。聞くに堪えない野次は普通に聞こえてきます。THE OUTSIDERは客席へ入場させるときに金属探知機を導入したことで話題になりました。それでも、集客やDVDなど関連商品の売り上げが好調ですし、ビジネスとしては成功といえるのでは」(前出・格闘技雑誌編集者)

 1990年代から活動してきたリングスの運営で培った映像化のノウハウを応用し、THE OUTSIDERは発足当初からプロの手による映像を蓄積しソフト化してきた。現在は、過去にPRIDEの映像配信も行っていたDMM.comでも試合映像が配信されている。出場選手が出演するVシネマやドキュメンタリー映画も制作され関連商品が多いのも特徴だ。

 かつてK-1イベントプロデューサーをつとめた谷川貞治氏は、THE OUTSIDERが実績を重ねる様子をみて「前田さんは賢いですね。いいところに目をつけてますね」と羨ましそうに語ったという。これまで、格闘技とビジネスは両立しづらいと言われ続けてきた。前田日明氏が取り組んでいる方法は、新たな道を示しているのかもしれない。