大阪桐蔭vs立命館宇治 次の打者への情報伝達 果たしてどこまでがベンチワークか!?

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次の打者への情報伝達 果たしてどこまでがベンチワークか!? 

18安打9失点に終わった立命館宇治の山上大輔

 18安打で9得点。立命館宇治の好投手・山上 大輔(3年)を攻略し、8回コールドゲームで快勝した大阪桐蔭。

 打たれた山上は8イニングで171球を投げさせられた。「京都大会までは空振りを取れていた球がファウルにされたり、ヒットにされたりした。京都の決勝で対戦した龍谷大平安打線に対して空振りを取れていた球でもです」と振り返った山上。

 卯瀧逸夫監督も、「最近の山上では打たれ過ぎの方。現段階での彼の実力だと思います」と大阪桐蔭打線の強力さに、完敗だった心境を話した。

 ただし、決して18安打を浴びたわけではないとも捉えている。それが記録上はヒットとなった守りの乱れだ。「実際には、普通なら打ち取っている当たりが6本ほどヒットとなった。まだまだ守れないということです」と指揮官。

 セカンドを守る主将の村尾悠斗(3年)も、「これでは夏は命取りになる」と表情を険しくした。

 

先頭打者で二塁打を放った選手からの情報を伝え合う

 さて、このゲームを取材しながら、全国の球児や指導者に考えてみてはどうだろう思うことがあったので、それを取りあげてみたい。

 場面は1回表の大阪桐蔭の攻撃でのことだ。先頭の1番中村 誠(3年)が、立命館宇治の山上からファウルで粘って9球目をライトへと運んだ。俊足を生かして二塁まで進んだ中村は、エルボーガードとフットガードを受け取りに向かった一塁ランナーコーチの青柳昂樹(2年)に一言声をかけた。当然、何と声をかけたのかは聞こえないのだが、何を伝えようとしたのかは、青柳の行動で明らかになる。

 ランナーコーチである青柳のもとに、ベンチから大浦彬(3年)が走る。エルボーガードなどを取りにいくためだ。ただ青柳は大浦に、二塁打の中村から聞いた、相手投手・山上の特徴を伝える素振りを見せた。打席には2番峯本 匠(3年)が立っているため、ネクストバッターズサークルには次の3番香月 一也(3年)がいる。大浦は、すぐにベンチに戻るのではなく、ネクストバッターズサークルの香月に、中村から青柳へと受け継がれた山上の特徴を伝えたのだ。この後、香月は先制タイムリーを放つことになる。

 ポイントなのが、相手投手の特徴の伝達だ。

 普通、先頭打者はアウトとなってベンチに戻る際に、投手の特徴をネクストバッターズサークルにいる選手に伝える。これは良く見る光景。ただ、ヒットなどで塁に出てしまうと、当然ベンチに戻るまでは伝えることができない。他の選手と接触することができないからだ。特に二塁にいた際にはベンチからは一番離れる。だから、ランナーコーチがエルボーガードなどを受け取りにくる時が、唯一接触できる機会と言えるだろう。

 二塁打を放った中村から、ランナーコーチの青柳、そしてベンチから取りに行った大浦への連携は、見事なベンチワークという見方ができるのかもしれない。しかも全選手が全力疾走をしているのだから。

 ただしである。この件で取材を進めてみると、そうとは言い切れないということもわかった。グラウンド内での私語は基本的に禁じられているからである。

 よく見るのが相手チームの選手との会話。これははっきりとアウトである。ただ、死球で出塁した走者に、守備の選手(ファースト)が謝る場合。これはもちろんOKだ。

 それとは違う味方チーム内での言葉のコンタクト。何がいけないのかと言えば、ゲームのスピードに関する部分だ。エルボーガードなどを取りにきた選手に、「ありがとう」という声をかけるのは問題ない。ただ、それ以上の会話をすることは、例え短時間であっても、ゲームのスピードアップの原則に反する行為と捉えられてしまう。

 グレーゾーンに思えるかもしれないが、やはり相手投手の特徴までを伝える時間は許容範囲ではないというのが、取材から受けた感想である。

 全国の球児や指導者の中にも、相手投手の特徴伝達の手段に色々と工夫されている所があるかもしれないが、一度、こういったことを考えてみてはいかがだろうか。そして、相手チームとの勝負である以上、こういったことがグラウンド内で見られれば、それを指摘して弱点として突いてくるかもしれないということを・・

 最後に、このゲームでは実際に審判団から指摘も出なかったし、ゲーム進行上はまったく問題がなかったことだけは強調しておきたい。あくまでもわかりやすい場面だったので、あえてここを取りあげたということをご理解いただければ幸いだ。

(文=松倉 雄太)