ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 古馬牝馬の春の"女王決定戦"ヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)が5月18日に開催されます。

 まず注目すべきは、前哨戦の阪神牝馬S(4月12日/阪神・芝1400m)で鮮やかな差し切り勝ちを収めたスマートレイアー(牝4歳)です。

 デビューしたのは、昨年の4月。そこからわずか半年後には、秋華賞(2013年10月13日/京都・芝2000m)に出走し、2番人気という支持を得るほど出世しました。そして、実際にレースでも2着と好走。デビューから半年でこれほどの結果を残し、素晴らしい内容の競馬を見せられるのは、何より持っているモノが違うからでしょう。

 さらに、年明け2戦も圧巻でした。大阪城S(3月9日/阪神・芝1800m)では、 オープン特別とはいえ、牡馬相手に能力が一枚も二枚も違うといった内容で快勝。続く前走の阪神牝馬Sは、デビュー以来もっとも短い距離のレースでしたが、道中最後方から直線で豪快な追い込みを見せて、短距離、マイル戦を主戦場とするライバルたちを蹴散らしました。

 特に同レースでは、その強さも際立っていましたが、次のマイル戦(ヴィクトリアマイル)を意識したレースができていたこともよかったと思います。というのは、もし最後方に止まらず、無理にでも好位に取りついていったら、速い流れに慣れてしまう可能性があったからです。そうすると、距離の延びるマイル戦で折り合いを欠いてしまうケースも考えられたのですが、その心配はなくなりましたね。

 ただ一方で、気がかりな点もあります。結果はともあれ、阪神牝馬Sで大きく出負けした、という事実です。秋華賞でも、同様に出負けしたことで勝ち切るまでには至りませんでした。この中間はゲート練習もしているようですが、出遅れは馬の性格によるところもあるので、練習したからといってすぐに改善されるかどうかは五分五分だと思います。 今回、しっかりとスタートできれば、次走以降も心配する必要はなくなりますが、はたしてどうでしょうか。

 もうひとつ、気になることがあります。鞍上の武豊騎手です。

 天皇賞・春(5月4日/京都・芝3200m)では1番人気のキズナに騎乗して、レース中に骨折というアクシデントがあったにしろ、結果として4着に敗れました。続けて、5月11日のNHKマイルC(東京・芝1600m)では有力馬の一頭サトノルパンに乗って9着と惨敗。同馬はデビューから小牧太騎手がずっと手綱をとってきた馬で、乗り替わりの重大さは武豊騎手も重々承知していたはずです。にもかかわらず、スタートと同時にかかって、能力を出し切れぬままレースが終わってしまいました。あの内容はとても残念でしたね。

 そうした状況を見る限り、現在の武豊騎手の"リズム"はどうも今ひとつのような気がします。勝負事においては、いいときもあれば、悪いときもあります。騎手という職業も同じで、どうしても悪い"流れ"が来るときがあります。名手ですから、そうした状況から抜け出す対処法を心得ていると思いますが、少し心配ですね。

 一昨年の優勝馬で、昨年も2着と好走したホエールキャプチャ(牝6歳)も有力馬の一頭です。スマートレイアーとの「芦毛対決」といった形でも注目を集めていますね。

 ヴィクトリアマイルでの実績はもちろんのこと、ホエールキャプチャは前走の東京新聞杯(2月17日/東京・芝1600m)でも、エキストラエンド(牡5歳)をはじめ、クラレント(牡5歳)やコディーノ(牡4歳)など、重賞勝ちのある強力牡馬を一蹴。東京のマイル戦は、本当によく走ります。

 とはいえ、東京新聞杯は、一度雪で中止になって翌週に順延されたレース。関西馬は、2度の長距離輸送を強いられたうえ、交通事情が悪くて通常の2倍以上もの輸送時間がかかった経緯があります。そうした事情を考えると、関東馬のホエールキャプチャが勝った結果を、額面どおりに評価していいかどうかは微妙なところです。

 もう一頭、昨年の3歳牝馬戦線で二冠(オークス、秋華賞)を獲得し、エリザベス女王杯も制したメイショウマンボ(牝4歳)も、その実績からして無視できない存在です。

 しかし同馬は、前走・大阪杯(4月6日/阪神・芝2000m)の負け方が引っかかります。

 確かに昨年、同じように大阪杯で6着に敗れたヴィルシーナがヴィクトリアマイルで優勝しましたが、ヴィルシーナが大阪杯で対戦した相手は超一線級でした。勝ったのはオルフェーヴル、2着は好調時のショウナンマイティ、3着はエイシンフラッシュという豪華な顔触れ。片やメイショウマンボが大阪杯で対戦したのは、キズナ(1着)、エピファネイア(3着)というGI級の馬もいましたが、その2頭以外の実力は「?」がつくレベル。それでいて、まったく対抗できずにブービー負け(8頭立てで7着)。勝ち馬からも、2秒以上も離された大敗でした。休み明けは走らないタイプで、さらにフケ(牝馬の発情)気味だったという話もありますが、あまりにも走らな過ぎだったと思いますね。

 おそらく、以上の3頭が上位人気になるでしょうし、勝ち負けを演じると思いますが、決してズバ抜けた存在ではありません。展開次第では、あっさり負けることがあってもおかしくないと思っています。だからこそ、難解なレースであり、言い換えれば、大波乱の可能性も秘めているわけです。

 そこで今回の「ヒモ穴馬」ですが、ウリウリ(牝4歳)を取り上げたいと思います。

 前走の阪神牝馬Sでは2着と、スマートレイアーに屈しましたが、ウリウリ自身、相当厳しい競馬を強いられています。その分、完全に勝負づけは済んでいないと考えています。

 直線の短い阪神の内回りコースは、4コーナーから直線にかけてごちゃつきやすく、内側を通って馬群をさばいていくのは至難の業です。ウリウリは前走、まさにその厳しい最内に進路をとって、残り200mを切った時点では前が詰まりかけていました。そこから3頭分ほど進路変更して、何とか馬群をさばいていきました。

 その際、脚色はスマートレイアーのほうが断然によく見えたと思いますが、同馬は大外に出して何の障害もなく、存分な加速ができていました。対してウリウリは、加速し始めたところがゴールでした。だからと言って、ウリウリの内容のほうが上だったとは言い切れないのですが、進路変更しても瞬時に加速できる器用な脚があることは確か。混戦レースになればなるほど、大きな武器になると思います。

 鞍上は、福永祐一騎手。東京コースは得意としているジョッキーです。2週間後には、レッドリヴェール(牝3歳)でダービーに挑みます。そこに向けて弾みをつけるためにも、ここら辺で一発、大仕事を果たしておきたいところでしょう。