「ハダカカメガイ」別名クリオネ。エサはミジンウキマイマイという巻貝の一種。
写真提供:鳥羽水族館

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今年の2月、絶食状態が6年目に入り話題となっていた鳥羽水族館の「ダイオウグソクムシ」がついに死亡し、多くのファンを悲しませた。ダイオウグソクムシは水深200〜1000メートルほどの深海に生息する世界最大のダンゴムシの仲間。まったく食べずにどうして5年間も生きられたのか……。残念ながらその理由はまだ解明されていない。

お刺身や干物でおなじみの魚からナゾの深海生物まで、さまざまな生物を飼育する水族館。他にもエサを食べずに生き続ける「絶食に強い生物」はいるのだろうか? ダイオウグソクムシを飼育している鳥羽水族館に話を伺った。

「現在鳥羽水族館で飼育している生物の中で、ダイオウグソクムシに次いで最も食べない期間が長かったのは、おそらくハダカカメガイだと思います。約1年以上エサを食べていません。ハダカカメガイは半年から1年以上エサを食べないとも言われています」

透き通った体で羽ばたくように泳ぎ、流氷の妖精とも呼ばれるハダカカメガイ、別名クリオネ。ダイオウグソクムシのグロテスクな姿(失礼!)とはずいぶん違うが、長い間食べずに生きられるという点では同じ仲間といえるかもしれない。

私たち人間と違って“毎日食べるのが当たり前ではない生物”は他にもたくさんいるようだ。
「生きものによっては毎日給餌するわけではありません。野生では毎日エサにありつけるとは限らないため、週に1回や2回などを基本に与えている種類もあります。爬虫類などの冬眠する生きものや、水温や気温が低下すると活性が低くなる生きものは、長期間エサを食べないことがあります」

生物の種類だけではなく、子供か大人か、よく動くかあまり動かないかによっても食べっぷりは違ってくるらしい。
ワニガメは約2カ月摂餌していない個体も。エサはアジなどの魚です。鳥羽水族館で飼育しているワニガメは全長1メートルほどの大型の個体で、普段動くことも少なく活性が低いためのようです。もちろん、日々の観察を通じて、適量になるよう調整しています。ちなみに小さなころはたくさん食べます」

野生の生きものを採集して展示することもある水族館、食べさせるのに苦労することもあるという。
「野生から入った個体はしばらくエサを食べないことがあります。その場合は生き餌を与えたり、入手困難な場合はピンセットで生きているように動かして与えたりと工夫しています」

姿かたちばかりではなく、その生態でも私たちを驚かせてくれる生きものたち。水族館に行ったら、何をどんな風に食べるかも調べてみると面白いかもしれない。
(宮沢弥栄子)