ドラマチック春競馬(13)

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 4月20日、牡馬クラシック第1弾の皐月賞(中山・芝2000m)が開催されます。桜花賞では「世代最強」と言われるハープスター(牝3歳)に、実績上位のレッドリヴェール(牝3歳)という抜けた存在がいましたが、一転、皐月賞は有力馬が五指に余る戦国ムード。どんな決着になるのか、楽しみなレースです。

 まず注目は、皐月賞と同じ舞台で行なわれたトライアルの弥生賞(3月9日/中山・芝2000m)組です。

 2着ワンアンドオンリー(牡3歳)は、勝ち馬トゥザワールド(牡3歳)を際どく追い詰めて(ハナ差)、ゴールを過ぎたところでは完全にかわしていました。見た目にも非常に強い競馬で、こういったレースをしたあとは、期待度も高まって意外と人気になるものです。勝ったトゥザワールドよりも「上」と考える人も少なくないでしょうね。確かに潜在能力的には、五分か、もしかするとそれ以上かもしれません。

 ただし、同馬は少し乗り難しい面がありそう。立ち回りが課題で、本質的には小回りの中山コースは不向き。皐月賞よりも、"大箱"の東京競馬場で行なわれる日本ダービー(6月1日/芝2400m)のほうが、能力を存分に発揮できるのではないでしょうか。

 一方、トゥザワールドは、仕掛けると即反応し、止めるとすぐに減速できます。折り合いもスムーズで、とても器用に立ち回れる馬です。弥生賞ではワンアンドオンリーに猛追されたとはいえ、大外を自ら動いていって、しかも早めに抜け出す"横綱競馬"を見せてのもの。どちらかというと、追い込みのワンアンドオンリーに向いた展開でありながら、勝ち切りました。着差以上に強い競馬だったと思います。

 鞍上は、川田将雅騎手。桜花賞ではハープスターの手綱をとって、最後方待機から直線で全馬を差し切るという、驚きの騎乗を見せました。単勝1.2倍という圧倒的な支持を得た馬に乗って、あれだけじっくりと構えられるジョッキーは、そうはいません。

 騎手というのは、強い馬に跨(またが)ることで成長する場合が多いです。しかし、そうした機会は、騎手の誰もが得られるわけではありません。関係者からの期待に応えて、信頼を得られた者だけにめぐってくるものです。つまり、すべては本人が努力した成果です。まさに川田騎手は、そうした努力の結果、成長。大一番でのプレッシャーを、力に変えられるトップアスリートになりました。今回の皐月賞ではどんな騎乗を見せてくれるのか、その手綱さばきからも目が離せませんね。

 この他、前哨戦のスプリングS(3月23日/中山・芝1800m)を制したロサギガンティア(牡3歳)も気になる存在です。特に前走、初の右回りで結果を出せたことは大きいですね。皐月賞に向けて、不安材料がなくなり、期待が膨らみます。

 さらに、若葉S(3月22日/阪神・芝2000m)の勝ち馬アドマイヤデウス(牡3歳)も可能性のある一頭。若葉Sはもちろん、前々走のあすなろ賞(1着。2月22日/小倉・芝2000m)でも、そのレースぶりには目を見張るものがありました。仕掛けてからの反応が速いわけではありませんが、スピードに乗り出してからの走りは迫力満点。どこまでも伸びていきそうな雰囲気があります。

 若葉Sで2着に退けたウインフルブルーム(牡3歳)は、GI朝日杯フューチュリティS(以下、朝日杯FS。2013年12月15日/中山・芝1600m)3着馬で、シンザン記念(1月12日/京都・芝1600m)では5戦4勝の快速馬ミッキーアイル(牡3歳)に半馬身差まで迫っています。同馬を物差しにすれば、上位馬との差もないでしょう。また、初の関東圏での競馬も、長距離輸送は小倉で経験済み。問題はありません。

 そういえば、アドマイヤデウスの父アドマイヤドンは今をときめくベガ(ハープスターの祖母)の仔。GIシーズンにおいては、ひとつのテーマに関連した馬たちが続けて結果を出すことがよくあります。こうしたつながりがあることは、見逃せないデータになるかもしれませんね。

 さて、今回の「ヒモ穴馬」には、朝日杯FSを制した唯一のGIウイナー、アジアエクスプレス(牡3歳)を取り上げたいと思います。

 デビューから2戦はダートで連勝。そのため、「ダート馬」という印象を持つ方もいるかと思いますが、能力の高い馬だからこそ、ダートもこなしているという見方もできます。要するに、本質的には芝向きの可能性もあるわけですが、前走のスプリングSでは個人的にも半信半疑で見ていました。すると、朝日杯FSに続いて、素晴らしい末脚を見せてくれました。2着という好結果を出したことからも、ひとつの結論は出た、と言えるのではないでしょうか。そう、芝でも十分に戦えるということです。

 鞍上を務めたのは、初騎乗の戸崎圭太騎手でした。調教では何度も乗って感触をつかんでいても、実際のレースではまた違います。ゆえに、レースの前半は恐る恐るというか、様子を見ながら騎乗しているように見えました。しかし当のアジアエクスプレスは、好位できっちり折り合って、道中の走りもいたってスムーズでした。3、4コーナーでは、3カ月ぶりのレースということもあってか、一瞬反応が悪いように見えましたが、直線に入ってからの伸びは圧巻でした。朝日杯FSのときと同じ豪脚でしたね。

 今回は、戸崎騎手も2度目の騎乗になります。今度は思い切って、勝ちにいく競馬ができると思います。前走の2着敗戦で、予想以上に人気を落としそうですから、馬券的にもかなり面白い存在になるのではないでしょうか。