「親が家計について話さなければ、子供はおカネについて深く考えないまま、大人になってしまいます。また、親の懐ろ具合が“ブラックボックス”になってしまうと、子供は『よくわからないけど、うちにはおカネがある』と考えるようになります。結果、『もらったおカネは、使ってしまえばいい』という発想につながってしまうのです」

そう注意を促すのは「家計再生コンサルタント」として活躍する、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さん。6人の子のパパでもある。横山家では家族全員でおカネの話をする「家族マネー会議」の場を設けている。会議を開くのは毎月1回、給料日の次の週末だ。

「このときに気をつけてほしいのは、深刻な雰囲気をつくらないこと。思春期で、敏感な年ごろのお子さんだと、おカネの話をすると、急に遠慮するようになってしまうこともありますから。『おカネのやりくりに困っているのかな』と、子供が感じてしまうような空気はNGです」(横山さん・以下同)

全員が集まったら、まずは1カ月の収入を発表する。給料の金額のほか、投資している株が値上がりしたときには、ここで併せて報告する。そして次は、先月1カ月分の家計簿の内容を発表。食費、住宅ローン、光熱費など、項目別にすべて公開される。子供の教育費についても、1人ずつ分けて発表する。

「また、1カ月に買い物したときのレシートをとっておき、その内容をチェックしています。『これは本当に必要な買い物だったかな?』とか、『これは買いすぎじゃないか』と、家族みんなで討議します」

このあとがマネー会議のメインイベントともいうべき、プレゼンテーションだ。家族それぞれが、お小遣いで買えないもの、やりたい習い事などをみんなの前で発表。ただし、おカネを出してもらうためには、家族を説得しなければならない。

「たとえば、自転車がほしい場合。まだ今の自転車に乗れるのに、新しいものが買いたいのなら、貯金に回すおカネから出すことになります。貯金を崩してまで買う価値のあるものなのか? その是非を、マネー会議で決めるわけです」

プレゼンでは、年齢は関係なく、みんなが平等。たとえパパ・ママであろうとも、子どもたちの同意が得られなければ、ほしいものを買うことはできない。当然、横山さんのプレゼンが却下されることもある。

「うちは娘ばかりなので、ブラシ付きのドライヤーしかないんです。そこで『普通のドライヤーがほしい!』と訴えたんですが、『ブラシの部分を取ればいいじゃん!』と、あえなく却下されてしまいました」

横山家には実践している「マネーの掟」がある。子供の携帯電話料金は、親が払うのは3千円まで。また、月のお小遣いを「米ドル」で渡しているそうだ。両替の手間も、手数料もかかる。はっきり言って不経済だ。それでも横山さんがそうするのは「不自由さを感じてほしい」から。

「おカネは、便利だからこそ使いすぎてしまう側面があります。電子マネーなんて、その代表でしょう。米ドル方式が功を奏してか、娘たちは結構なおカネを貯めているようですよ」

家族でおカネの話をすることには、家族のコミュニケーションの場ともなる。おカネの話題は、みんなに共通するもの。これからは、子供とも話をしてみよう。