ヤンキースに闘志を燃やすレッドソックス

 ヤンキースに田中将大投手(25)が加入したことで、並々ならぬ闘志を燃やすチームがある。同じア・リーグ東地区の宿敵レッドソックスだ。昨季は世界一に輝いたものの、今オフにヤンキースが大型補強を続けたことで、警戒を強めている。特に、昨季まで所属していたジャコビー・エルズベリーを獲得し、さらに大金を費やして田中をチームに加えたことが気にくわなかったようだ。独特の雰囲気に包まれるライバル対決が、今季はさらに盛り上がることは間違いない。

 今月13日に地元紙ボストン・ヘラルドが掲載したコラムは強烈だった。「田中は憎むべき新たなヤンキー」というタイトルで、早速、右腕に批判を浴びせたのだ。「すべてのレッドソックスファンは田中に感謝している。彼は我々にヤンキースを憎む新たな理由を与えてくれた」との書き出しで、恨み節をつづっている。

 主に憎しみの対象となったのは、田中がチャーター機で渡米したことだ。まい夫人ら5人と愛犬のトイプードルを乗せ、200人乗りのボーイング787で渡米したことが詳しく書かれている。もちろん、米国で報じられている19万5000ドル(約2000万円)という費用もきっちりと記されている。

 同紙は「もし半分も脳みそを持っていたなら、195席が空席で、5人しか乗っていなかったら変な感じがしないだろうか? プードルを入れても194席(が空席)だ」と痛烈批判。さらに、「ペットの選択で言えば、ダスティン・ペドロイアやデビッド・オルティスがプードルと旅をするだろうか? 1億5500万ドル(約160億円)の価値がある男が、すべての選択肢の中からプードルを選ぶだろうか? チワワではなかったのか?」と愛犬にまでケチを付ける始末。「記者会見は松井秀喜が入団して以来の規模だった。はっきりとは思い出せないが、彼は194席の空席があるチャーター機でプードルと一緒に空を旅してこなかったはずだ」と言いたい放題だ。

田中がヤンキースのDice-Kになるかもしれない

 また、「もちろん、田中がヤンキースのDice-Kになるかもしれない」と、レッドソックスファンが獲得は“失敗”だったと認識している松坂大輔と同じような結果になることにも期待。「(レッドソックスの本拠地の)フェンウェイ・パークに来て、3万7499人のファンが紙飛行機で爆撃しなければ、彼はラッキーだ」と皮肉たっぷりだ。とにかく、19万5000ドルのチャーター機が気にくわなかったようで、最後には「我々はすでに彼のことが嫌いだ」とまで書かれている。

 両者がそれだけ強いライバル関係にあるからこそ、田中に憎しみを燃やせるのだろう。名門対決は独特の雰囲気に包まれ、必ず熱戦になる。お互いの選手に対しても、容赦なくブーイングを浴びせる。

 象徴的だったのは、昨年8月のフェンウェイ・パークでの一戦。薬物騒動の渦中にあったアレックス・ロドリゲスがレッドソックスファンの標的となった。他球場でもブーイングの嵐に見舞われていたが、宿敵の本拠地でのトーンは比較にならないほど強烈で、打席に立てば「You use Steroid!(お前はステロイドを使っている)」の大合唱が巻き起こった。

 しかも、4戦目にはメジャーを騒然とさせる事件も起きた。先発のライアン・デンプスターがAロッドに対して3球続けて内角に際どいボールを投げ、最後の4球目を左腕にぶつけたのだ。これには、いつもは温厚なヤンキースのジョー・ジラルディ監督も大激怒。ベンチから飛び出してくると、明らかに故意の死球にもかかわらず退場を宣告しない球審に激しく抗議し、両軍がベンチから飛び出して乱闘寸前となった。

 結局、ジラルディ監督は退場に。当時、Aロッドが米国中で批判されていたとは言え、ここまでの露骨なやり方はどこの球団もできなかった。しかも、レッドソックスファンはぶつけたデンプスターに拍手を送っていた。ライバル関係がはっきりと表れた場面だったと言える。

田中の加入を楽しみにするレッドソックス

 田中は12日の記者会見でレッドソックス戦について次のように語った。

「日本でレッドソックスとヤンキースの試合を見ていても、盛り上がりというのはテレビを通じても分かります。それを実際に自分がグラウンドに立って、どういう感じなのかというのはすごく楽しみです」

 1つはっきりしているのは、田中がすでにレッドソックスの“標的”とされていることだ。フェンウェイ・パークに行けば、強烈なブーイングを浴びることは間違いない。本当に田中が楽しめるほどの雰囲気ではないかもしれない。ただ、これは日本には確実にないもの。新たな刺激を求めて海を渡った闘志溢れる右腕にとって、燃える材料になることも確かだろう。

 今年最初の敵地でのレッドソックス戦は、4月22日からの3連戦。仮に田中が開幕ローテーションの3番手としてスタートを切れば、マウンドに上がらない計算になる。ただ、同地区の両者の対戦は多いだけに、これから7年間で何度も刺激的な体験をできるはずだ。

「マー君VSレッドソックス」が新たな名物対決になるのか。新人ルーキーが本当に憎むべき存在になることを望んでいるのは、毎年、ヤンキースとの対戦を楽しみにしているレッドソックスファンなのかもしれない。