写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●松たか子との共演で受けた刺激「俳優としての姿勢を見習いたい」松たか子が主演を務め、山田洋次監督がメガホンをとった映画『小さいおうち』が25日に公開を迎える。原作は、第143回直木賞を受賞した作家・中島京子の同名小説。昭和初期の赤い屋根の"小さいおうち"を舞台に、恋愛事件に揺れ動く2人の女性の運命と、その時に封印された秘密を通じて、戦時下から現代に至るまでの"本当の歴史"を描いた。

本作で、"小さいおうち"に女中として奉公した布宮タキを演じたのが、昨年4本の映画に加え、堺雅人主演のドラマ『リーガルハイ』に出演し、注目を集めている女優・黒木華。タキはその家の妻・時子(松たか子)と夫の部下・板倉正治(吉岡秀隆)との"許されない恋"に気づいてしまう。

学生時代に舞台『罪と罰』を観劇して以来、松に憧れていたという黒木。松との共演で刺激を受けながら、彼女は"許されない恋"をどのように捉え、そして演じたのか。さまざまな役柄に変幻自在になりかわり、周囲の熱視線も「好きなことをやらせてもらっているだけなので分からない」と演じることに没頭する黒木。彼女のその礎は、両親の存在にあった。

――出演が決まった時はどのような心境でしたか。

まさか自分が山田監督の作品に、こんなに早く出られるとは思ってなかったので、すごくうれしかったです。松さんのこともすごく好きだったので、ご一緒できてすごくうれしくて。プレッシャーというよりは、一生懸命頑張らなくちゃという思いが強かったです。私が演じたタキの目線で描かれている作品ではありますが、メインは松さんが演じた時子さんなので、重責を負っているという感覚はありませんでした。

なによりも山田監督という、これまでたくさんのすばらしい作品を作ってこられた方とご一緒できることの方が大きく、うれしいことでした。撮影中は現代のシーンを見ることができなかったのですが、試写ですべてがつながった作品を見て、すごくすてきな作品なんだとあらためて実感しました。

――試写などでの周囲の反応は?

たくさんの方が今までの山田監督の作品とは違うとおっしゃっていました。私よりも、もっと詳しいファンの方はその変化がさらに分かると思います。今回の作品は監督が「挑戦」とおっしゃっていました。すごくスキャンダラスな物語の中に、山田監督作の温かみだったり、日本映画としての良さが消えずに残されていて、さらに新しい領域に行っているというのは、すごいなと思いました。

――山田監督の演出はいかがでしたか。

演技に対する指示よりも、その時代のことや、ご自身で体験されたことを優しく教えていただくことの方が多かったです。

――完成披露の舞台あいさつでもおっしゃっていましたが、昔から松さんに憧れていたそうですね。初共演はいかがでしたか。

うれしかったです。皆さん作品のことについて考えていらっしゃっていて。すばらしい俳優さんなので当たり前のことなのかもしれませんが、松さんは集中力が高くて、山田監督の要望にも俊敏に反応したり、意見を出したり。そういう姿を間近で見ることができて、勉強になりました。俳優としての姿勢を見習いたいと思います。

――オーディションで出演が決まったそうですね。

オーディションは、着物を着て、畳をふいている時に奥さまに呼ばれて出て行くというシチュエーションを演じました。手応えは全然なくて(笑)。緊張していたんですけど、山田監督に会えるのが本当に楽しみだったので、楽しくできればいいという気持ちで臨みました。もちろん、できれば参加させていただきたいと思っていましたけど(笑)。

――実際の山田組の雰囲気はいかがでしたか。

山田監督独特の優しさがあふれながらも、高い集中力が保たれている空間でした。とっても温かい方なんです。松さんも青年のような方とおっしゃっていましたけど(笑)。映画のことになるとすごく細かいところまで見ていらっしゃいますし、よりよいものにしようというアイデアもどんどん出てくるので、そういうところが山田組の魅力だと思いました。

――タキという女性をどのように捉えて演じたのでしょうか。

タキちゃんはすごく純粋で素直なんですが、それゆえに奥さんのことをとても心配してしまいます。女中さんとして家族をずっと見守り続けているタキちゃんの思いは、意識していたことでした。それから、現代ではやらないこともたくさんあるので、所作などは自然に見えるように心がけました。実際に実家の畳を拭いたりしましたし、料理だったり、お掃除だったり、日常でも通じる部分があることに気付かされました。

――セットなどの世界観も演技の後押しとなりそうですね。

すごく細かいところまで作りこまれていて、その中にいるだけで、生活が見えてくるんです。だからこそ、助けられた部分がすごく多かったと思います。ずっとそこにいるわけではもちろんないんですが、ずっとそこで生活していたようなことが感じられる作りになっていました。

●「両親が喜んでくれるのが何よりもうれしい」――タキさんが生きた時代についてはどのような印象を?

やっぱり、ちょっと遠く感じます。映像などの情報で知っていることはありますが、実際に体感したことではないので、本当に知っているわけではありません。昭和という時代は戦争で苦しくて、生活もまともにできないようなイメージなのですが、今回の『小さいおうち』で戦争に追いやられる苦しさだけじゃない生活があるんだというのを、少しだけ体感できたような気がします。

――本作は、そういう時代背景の中での”許されない恋”が描かれています。時子さんのその恋を、率直にどう思われましたか?

時代背景もありますし、お見合いで結婚しているというのもありますし。でも、難しいですよね…。だからこそ、タキちゃんも悩んだんだと思います。奥さまの恋が大事なのか、世間からの冷たい視線から奥さまを守ってあげるのか。そういうことで、すごく悩んだんじゃないかなと思います。私自身は…どうでしょう。現代だと好きになってから結婚する方が多いと思いますので…うーん…分からないですね(笑)。周りにそんな人もいませんし…でも、止められないものは止められないのかなとも思います。すごく、難しいですよね。男性側だったら、おいおいってなりますね(笑)。

――山田監督からの「思っていることと行動が違うのが人間だから」という言葉が、演じる上でも支えになったそうですね。

長回しのシーンは決心だったり、決意の場面で、タキちゃんが唯一の秘密を抱えるシーンでもあったので、その言葉の意味が分かりました。口にする言葉も本心なんですが、心のどこかではその逆のことを考える。いつの時代でも、話しながら言葉を選別したり、これは言えないこととして言わなかったり。山田監督のその言葉は、特定のシーンで言われたことではなかったので、撮影全体をとおして「本心ではどう思っているんだろう」と考えながら演じるきっかけにもなりました。

――カメラ前に立った時、役柄になりきるタイプですか。

やっぱり、自分がどこかで見ています。自分本位ではいけないと思いますし、その役でいないといけないと思いますし。まだまだ勉強中の身ですし、経験も浅いので、映画を良くしていく上での必要な計算もまだできません。だからこそ、自分本位でいることではいけないと思っていて。我を忘れるくらいの時もあるかもしれませんが、割と冷静な自分を見ている方だと思います。よく憑依型とか言われる方がいらっしゃいますけど、羨ましかったりします。

――松さんの出演舞台『贋作 罪と罰』を高校生の時に見たことがきっかけで、松さんに憧れるようになったそうですね。

今から8年くらい前でしょうか。当時、演劇部に所属していたんですが、顧問の先生が部員を誘ってくださったんです。それもあって、観劇の機会が多くて、関西なのでキャラメルボックスとかよく見に行っていました。

――なぜ、演劇部に入ろうと?

小さい頃から、弟と一緒に両親に連れられて地元のお芝居とか参加したりしていて、その頃からお芝居は好きでした。やりたいことをやればいいという親で、近くの高校の演劇部が有名だったので、そこにいくことにしました。進学校だったので、残念ながら勉強しなければいけなかったんですが(笑)。

――女優になるという夢、覚悟はその頃に芽生えたのでしょうか。

いえ、ありませんでした。幼稚園の先生になろうと思っていて。お芝居を仕事にしたいと思うようになったのは、野田秀樹さんの舞台がきっかけなんですが、それまではなんとなくやりたい、続けたいと思うくらいで。こうして山田監督の作品に出るようになるとは思ってなかったです。両親が、「自分の人生だし、女の子なんだから結婚すればいいことなんだし」と言ってくれことがすごく大きくて、だからこそ今こうしていられるんだと思います。

――2013年は、たくさんの作品に出演して、多くの人が「黒木華」という存在を知った年だったと思います。ご両親は何かおっしゃっていますか。

作品は全部見てくれていますし、記事に載ったりしたのを見てくれています。私がそういうことをあまり伝えないので、自分で調べて見つけて「言わないんだもん」ってよく言われます(笑)。私は好きなことをやらせてもらっているだけなので、今の状態がどれだけすごいことか分かりませんけど、両親が喜んでくれるのが何よりもうれしいです。両親のこと好きですし、自分の好きなことをさせてくれて本当に感謝しています。

――2014年も楽しみですね。

変わらず、ボチボチ頑張りたいです(笑)。今年は朝ドラ『花子とアン』がはじまるので、まずはそれを頑張りたいです。その上で、たくさんのことをできる限りがんばりたい。舞台ももっとたくさん出たいですし、映画やドラマも。今年は去年以上にたくさんの人と出会える年になればいいなと思います。

(C)2014「小さいおうち」製作委員会

(水崎泰臣)